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視覚障害者にとっての自立支援法 パート2(9月20日付け現在) 藤原 義朗
代表者会議で東京へ 畠山 俊恵
平和憲法は人類の宝 上記学習会に参加して 伊藤 啓子
IIRIS(視覚障害者総合サービスセンター) 片岡 慈仲
時は200X年(14) 松田 哲昌
編集後記 大堀 正寿
視覚障害者にとっての自立支援法 パート2(9月20日付け現在) 藤原 義朗
「利用するんだから払うのは当たり前」という小泉流の考えを前面に出さず、郵政ばかり言って自民党が勝ちました。みなさん、ショックから立ち直れましたか?
さて、1年前グランドデザインが出されて以来「応益負担反対」のスローガンのもと闘い、一時は廃案まで追い込みました。また、今臨時国会で第2ラウンドのゴングが鳴ったところです。
今回は、視覚障害の場合、応益になったらどのくらいの負担になるかを考えていきます。
1. 視覚障害は単価が安い
「応益負担の問題を語る時、どんな人がいくらの負担になるのかを知ることが大切です。しかし、国会では審議中でもあり、まだホームヘルパーなどの介護サービス単価は発表されておりません。
現在の介護保険での応益負担率は1割、予定される自立支援法での負担率も1割です。介護保険と、特に、支援費の単価を元に単価設定されることには間違いありませんから、まず現状の単価をおさらいしてみましょう。
a ホームヘルパー
分かりやすくするために、1時間未満
(30分から59分まで)の単価を示します。
介護保険 身体介護 4020円
生活援助 2080円
支援費 身体介護 4020円
家事援助 1530円
また、2時間未満(60分から119分まで)の単価は
介護保険 身体介護 6670円
生活援助 3740円
支援費 身体介護 6670円
家事援助 3050円
介護保険の場合、6年前の制度発足当初は、支援費と同じ単価でした。高齢者の場合、家事援助といっても身体的接触が多く、それが身体介護で保険請求になると高い財源支出になるため、ある程度の家事援助は生活援助という名でちょっと単価が高くなりました。
次に、支援費制度における視覚障害の身体介護と家事援助との区分けは何でしょう。2年前の社会保障審議会障害者部会に提出された厚生労働省の資料を示します。
[居宅支援事業における便宜の内容と生活ニーズとの対応表より視覚障害について抜粋]
身体介護――化粧、通院で症状を医師に伝えるといった行為の補助、服薬の補助
家事援助――調理補助、洗濯、補修、日常的な週2、3回程度の部屋の掃除、季節の変わり目などの家の掃除、整理整頓、日常的な食材料や日常雑貨などの購入、普段着や下着などの購入、代筆代読、郵便の投函、見守り助言など、電話ファックスパソコン、電話来訪者との応対、育児
これを、他の身体障害や、知的、精神障害と比べると、視覚障害と聴覚障害のニーズは、ほとんどが家事援助項目になっています。つまり、単価が安いのです。
これをヘルパー事業所の経営から見ると、単価の65%が労働者の賃金、30%が事務経費、5%が利潤その他という計算をします。ヘルパーさんの利用者宅への交通時間など考えると安い単価であり、最低賃金制にも引っかかりかねないものです。よく、守る会の会員さんから
「あまりよくないヘルパーが廻される」と聴きますが、質の良いヘルパーは、単価の高い介護保険や支援費身体介護に廻すからです。
応益制度になると、この傾向はもっと顕著になるでしょう。よく、ヘルパー懇談会で「点字も知ってもらいたい」「視覚障害者への説明のし方や介助法を知ってもらいたい」「これ、今日食べるお寿司と揚げ物ですよと言って触らせてもらいたい」「掃除の後、ゴミ箱はベッドの横
15cmに置いておきましたよ、と言ってほしい」「同じ所にもどしてほしい」「読み書きのしっかりした人に来てもらいたい」というような意見が出ますが、障害特性のある利用者の所こそそれに応じられる有能なヘルパーさんを廻す仕組みにすべきです。介護保険も自立支援法も利用契約方式です。遠慮せず、何をしてほしいかはっきり述べていきましょう。そして、気付いてもらうようにしなければなりません。なお、この単価については、夜間、早朝に25%、深夜は50%増しの加算制度があります。また、賃金レベルの高い都市部にも加算する制度があります。
b.デイサービス
支援費居宅3事業のうち、視覚障害者がうまく利用できていないのが、デイサービスです。視覚障害専門で行なっている所は全国でもごく一部です。一般の障害者デイサービスや介護保険デイサービスで視覚障害者の参加をみても、積極的な参加でなく、「お客さん」です。もっと情報コミュニケーション訓練があったり、楽しいものをつくっていかなければなりません。まず、単価からおさらいしてみましょう。
障害者デイサービスの単価は
@ デイサービス専門施設か別の施設機能と併設施設なのか
A 身体・知的・障害児
B 内容によってスポーツや外出、訓練的なものか、創作活動か
C 障害の重症度に3段階
D 時間によって3段階に分けられますので、単価の数字は数十種類並ぶことになります。
それに、食事420円(食材料費を含まない)、送迎550円(片道)、入浴410円と加算がつきます。
支援費制度によるデイサービス事業の内容は、機能訓練、社会適応訓練、介護方法指導、スポーツレクリエーション、創作的活動、入浴、給食です。
その内、視覚障害者のニーズとして認められているのは、生活訓練、利用者のニーズや特性に合わせたスポーツレクの実施、利用者のニーズに合わせた趣味や余暇活動紹介と実施利用時間中の食事の提供です。
それでは、全国でも数少ない視覚障害者の参加が主なデイサービスを見てみましょう。
○ 京都ライトハウス「らくらく」
日常生活訓練を中心とした身体障害者デイサービスです。法的な区分と対象者を想定してみると併設型、全盲で他に障害のない場合は、重度区分第2段階、6時間以上の参加として、基本単価5720円+食事加算420円+送迎加算550×2=7240円
○ ITサポートセンター「あかね」
船橋市にある施設で、デイサービスとして視覚障害者に対するパソコン指導やパソコンによる創作活動をしています。
4時間以内の中途視覚障害者の人を対象とした場合、1350円という1人当たりの単価になります。
このように視覚障害者デイサービスは、収入単価が安いのです。視覚障害者へのサービス内容の理解と単価の安さもあり、専門デイサービスはごく一部です。
誰かが立ち上げていかなくてはなりません。視覚障害者のことをいちばんよく知っている私たちこそ、その担い手になろうではありませんか。また、点字図書館など視覚障害関連施設に行なわせるようにしていく施策が必要です。
2. 無料の人も最高24600円
応能負担制度である現在の支援費制度は、収入の低い人は負担は少なくまたは無料、収入の多い人は負担が高いという制度でした。介護サービスを受けている人の9割の人が無料で介護サービスを受けることができました。介護の要らない人に肩の高さを近づけるステップですから無料が当たり前です。
それでは、もう少し現行の制度を復習してみましょう。
A 生活保護
B 住民税非課税
C 所得税非課税で住民税非課税世帯
C1 住民税おおむね年4500円以下
C2 住民税おおむね年4500円以上
D 所得税課税(14段階)
階層 上限額 ヘル デイ
A 0 0 0
B 0 0 0
C1 1100 50 100
C2 1600 100 200
D1(所得税額0円〜3万円)
2200 150 300
D7(所得税額80万1円〜116万円)
17100 600 1700
D13(所得税額503万1円〜627万円)
47800 1900 4600
[凡例 「ヘル」は「ヘルパー」、「デイ」は
「デイサービス」の略。「上限額」の単位は円、
「ヘル」と「デイ」の単位は円/30分である。]
このように支援費制度ではAとBは、利用料は0円、CとDは収入が高くなるにつれて利用料金も、月当たり上限額も増えていくシステムでした。それが自立支援法になると、応益負担または定率負担といわれる制度になるのです。これは、収入の低い人も高い人も、サービスを受ければ同じだけ負担していただきますよ、というものです。このような応益負担は世界どこの国の福祉制度を見てもありません。小泉さんが厚生大臣の時、介護保険で初めて導入した制度です。現在、介護保険の定率負担は1割負担、自民党の方針は将来2割負担。現在、審議中の自立支援法案でも1割が予定されています。先程のホームヘルパー、デイサービスの単価でその1割を計算してみて下さい。なお、この制度には収入により負担上限額が設定されています。
生活保護世帯 0円
低所得者1 世帯全員の収入が80万円
未満世帯 15000円
低所得者2 住民税非課税で、収入が
80万円以上 246000円
住民税課税世帯 40200円
これを、支援費制度の上限区分と比べてみると、この低所得1と2は支援費のBランクになり、CとDはすべて上限額40200円になるということです。つまり、現在負担額のある人は上限が40200円になるということです。いかに自立支援法は利用制限を目的としている法案であるかを示しています。
3.ガイドセンターがダウン
支援費制度における移動介護の単価は、身体介護を伴う移動介護は4020円、身体介護を伴わない移動介護は1530円です。ホームヘルパー単価と同様にしています。
厚生労働省の指導は視覚障害者の場合、利用者側から手を差し出しているので、「それは身体介護にあてはまらない」ということで、これまた安い方の単価です。しかし、高知市の場合、視覚障害も身体介護を伴う移動介護で支給決定しています。つまり、事業所の経営を守ることになります。私は、県外6つのガイドヘルパー事業所と契約していますが、高知では「高い方の単価」といったら一変に機嫌がよくなります。これは応能制度の中、事業所も利用者の権利も守ろうとする高知市の姿勢が表れています。
しかし、応益になったら1時間歩く毎(ごと)に400円以上払わなければなりません。
今の自立支援法案では、ガイドヘルパーは地域生活支援事業の中に入り、どのような負担制度にするかは自治体でお決め下さいとなっています。私たちは、せめて応益にはならないように団結していかねばなりません。
4.おわりに
6月に発表された政府税制調査会の「個人所得課税に関する論点整理」を見ると、金持ち減税には手をつけず、サラリーマン大増税庶民大増税計画という内容でした。仮に行われたとしたら、支援費制度を維持したとしても、BからCへ、CからD、Dのなかでもランクが上がる人もあり、負担額の高さゆえ利用できない人も出てきます。自立支援法案でも低所得2から一般へ上限額が上がる人も出てきます。私たちは税制問題ともかみ合わせながら運動していかねばなりません。
さあ、第2ラウンドは参議院から始まります。私たちの叫びをファクスでメールで点字で国会へ届けようではありませんか。
代表者会議で東京へ 畠山 俊恵
去る8月7日、8日の両日、全視協女性部の代表者会議と厚労省交渉に参加してきました。
8月に入ってから東京も暑さが厳しくなったとのことでしたが、高知の焼けるような暑さに比べるとまだしのぎやすい感じでした。
東京都障害者総合スポーツセンターには北海道から福岡までの代表20数名が集まりました。
本部役員として正岡先生も参加していました。
最初に行われたのは学習会、今回は翌日8日の厚労省交渉と議員要請行動に備えて、障全協事務局長の白沢仁さんに「障害者自立支援法でどうなる 障害者福祉」というテーマで話していただきました。ちょうどその交渉の日の午後には参議院本会議で郵政民営化法案が採択されます。大方(おおかた)の予想通りその法案が否決されたら、衆議院を解散すると小泉さんは言っています。もしそうなったら自立支援法案などすべてが廃案になってしまうとのこと。そんな状況の中行われた学習会でした。
最初に国会の最新情報ということでこれまでの流れを詳しく話して下さいました。国会は郵政民営化法案のことで揺れに揺れている。6月19日に会期末だったが、審議がずれ込んで
55日間延長。今年の2月10日に国会に上がってきた自立支援法案も5月の連休明けからやっと審議が始まった。7月15日に衆議院の本会議で採択されて参議院に移ったが、事実上
7月28日に6時間だけ審議。もし自立支援法が廃案になっても厚労省は手を変え品を変え、同じような法案を出してくるだろう。厚労省の狙いは、支援費制度から自立支援法へ、35年後には介護保険との統合、更には医療保険との統合を考えている。1割応益負担から医療保険と同じ3割負担にしようとしている。それが見え見えだと白沢さんはおっしゃっていました。
次に自立支援法とはどんな法案だったのか、その概要ポイントを学びました。
1. サービスの流れが大きく変わる
3つのグループに分けられる。
(1)介護給付 ホームヘルパー・ショートステイ・デイサービス・入所施設など、介護に関するものが含まれる。義務的経費(国が責任を持ってお金を出す)、1割応益負担
(2)訓練法等給付・自立支援医療。補装具など個別給付・義務的経費、1割応益負担
(3)地域生活支援事業 移動介護、日常生活用具など。裁量的経費補助金:各自治体が実施する。
三障害(身体・知的・精神)一元化。障害別事業がなくなる専門外の障害者と契約を結んで、うまくサービス提供ができるか問題である。
2.利用手続きが大きく変わる
何のグループのどのサービスを受けたいか、本人が決めて申請する。相談・支援事業ケアマネージメントの制度化。介護保険とほぼ同じ項目の要介護認定でチェックを受けて、予防給付もしくは5ランクの障害程度区分に分けられる。
3.負担制度が大きく変わる
基本的には1割応益本人負担。緩和措置として4ランクの月額条件額を設定。住民基本台帳による世帯単位。申請が必要(障害者控除を受けていないこと、国民健康保険の被保険者であることが条件)。
応益負担の最大の問題は、障害が重い人ほどサービス利用を必要とし、サービスを利用すればするほど負担が重くなる。お金を払えない人がサービスを受けることを諦める、つまりサービス利用を抑制していくという目的があるとのことです。
一つ一つに高いハードルがあって、それを越えられなければ申請すらできないという、本当に弱い者を馬鹿にした制度であると白沢さんは腹立たしさを抑えきれない様子でした。そして最後に変に妥協したりせず、とにかくみんなが団結して議論を深め、これからも応益負担反対の運動を頑張っていこうと熱く熱く語られました。
夕食後は北海道の石谷さんの司会で代表者会議が開かれました。最初に、次期大会開催地埼玉から実行委員会の報告がありました。
日程――2006年8月19・20日。
分科会――
1. 子育て・少年法についてミニ学習
2. 生活防災のことを中心に生活のあれこれ
3. 在宅福祉と高齢
4. 女性の労働と権利 三療以外の仕事に就いている人たちを中心に、悩みを出し合って話し合う。
5. 環境 もったいない製品の上手な生かし方を取り上げる
6. 気軽に参加 和紙を用いて何かを作る
記念講演は、神奈川の故池ヶ谷勝美さんのお姉さまの加古小夜子さん(女性運動家)にお願いするそうです。埼玉としては1日目の夕食後
19時〜21時に記念講演を行なって、全員に聞いてもらいたいとの提案がありました。それについて朝早く家を出て大会に参加している人たちは疲れている、食後はお腹が張って眠くなりそう、9時に終わって家に帰るのは大変など、いろいろ意見が出ました。改めて検討していただくことになりました。
次に分野別活動のまとめということで、それぞれの担当者から報告がありました。それに対しての意見をいくつかご紹介します。防災について障害者や高齢者など要援護者といわれる人たちの台帳を作るという動きが全国的に広まっているが、もし名簿が横流しされたらその人たちがターゲットにされるおそれがある。個人情報の漏洩を防ぐために、情報の電子化に反対しなければならない。行政の責任で防災マニュアルを作らせる運動を進める。テレビなどのライフラインに関するテロップを音声化してほしい。有線電話機のついた緊急通報システムを障害者や高齢者にも適応してほしい。
労働について、現在の女性部の中では鍼やマッサージをしている人の悩みなどが出て来ないが、セクハラの事例がないわけではないので、各団体で女性の労働に関する委員会を作って、まず横のつながりを深めるというのはどうか、女性の労働の実態をリーフレットなどにして広く知らせることも大事。
代表者会議で出された意見は、今後の運動につなげていくため、女性部の役員会で検討していただくことになりました。
2日目の午前中は厚生労働省と議院会館の二手に分かれて交渉を行いました。私も正岡先生も厚労省交渉の方に参加しました。
自立支援法についての厚労省の回答――
平成15年に支援費制度が開始されて、サービスを受ける人が急激に増えたために財源不足となってしまった。このままでは制度が維持できなくなるので、自立支援法ではサービス利用者にも定率負担していただき、みんなで支え合ってほしいと小さな声でマニュアル通りの言葉を繰り返すばかりでした。その回答に対して理解できない、納得がいかない、の声が飛び交いました。この制度は低所得者にも利用しやすいようきめ細やかな対策を講じていると強調していましたが、サービスというのは何か余分なよいことをしてくれた時に使う言葉ではないか。障害があるためそれを補う福祉サービスなのに、それに対してお金を払わなければならないというのはどう考えてもおかしい。障害がなければ使わなくてもいいお金なのに…。何のための障害者年金なのかなどの意見が集中した時には、担当の方がしどろもどろになる場面もありました。
また、緊急時のヘルパー派遣については、緊急時の解釈を巡って、厚労省側とこちら側の考えに微妙なずれがあるのを感じました。
その他の回答――雇用について、理療の関係ではヘルスキーパーの他、介護老人施設への機能訓練指導員としての雇用推進、雇用支援機器の貸し出しによる職域開発支援、住宅就業支援などを導入している担当者欠席のため文書報告。日常生活用具について対象にしてほしいという要望が多いので、公平な立場でオープンな公開検討委員会を開く予定。介護保険との統合論について障害者独自のサービスは今後も障害者福祉サービスとして続けていくが、介護保険と共通のサービスについては、統合して行うか独自で行うかの議論であって、結論が出ているわけではない。
充分な意見交換ができないうちに時間が来てしまい、最後に、視覚障害者固有のニーズとか緊急性とかがあることを理解していただいた上で、真の意味での自立ができる法律の制定を要望して交渉を終わりました。
その後、私はアカンパニーの方と厚労省の食堂で400円の美味しい和食を食べて、羽田空港に向かいました。
平和憲法は人類の宝 上記学習会に参加して 伊藤 啓子
戦後60年、平和憲法の下、平和と豊かさを求めて多くの人々が誠実に生きてきました。今、その平和憲法改正を巡り、これまでにない熱い論争が繰り広げられています。
アメリカの世界戦略に追随する日本政府の姿勢は、人類の宝と思える平和憲法が徐々に踏みにじられてきているように思えてなりません。この状況を逆に時代に合わなくなったので、憲法を改正する必要があると主張している人たちもいます。けれども、国連のアナン事務総長はイラク戦争について「法における正義が今守られていない。日増しに国益主義がまかり通っている、こういう世界秩序では困る」と話しています。
今、私たちは女性として、また母として、
愛する人や家族を守るため、単なる傍観者ではいられません。そういう思いで、この学習会に参加しました。
講師の渡辺進先生は、市民図書館や初代点字図書館の館長を務められ、現在は「憲法9条の会」世話人として活躍されているそうです。
温厚なお人柄を感じる語り口の中に、平和への強い思いを持たれているという印象を深くしました。
1. 平和憲法はどのようにしてできたか
――天皇を中心とした明治憲法を一部手直しした国務大臣の松本案に対し、GHQがこれを拒否し、その後憲法研究会の「憲法草案要綱」が出された。それには土佐の植木枝盛の作った、当時としては驚くほど民主的で進歩的な「東洋大日本国国権案」の理念が盛り込まれていました。これを参考に、マッカーサーが現憲法を形作ったそうです。なお素晴らしいことに、お話の広がりの中で婦人参政権が地方レベルで日本で初めて認められたのが高知の上町、小高坂村だったそうです(1880年、明治13年)。ちなみに世界で国レベルで認められたのは、アメリカ(1920年)、イギリス(1928年)、
フランス(1946年)、日本(1947年)だったそうです。
2. 日本国憲法の基本原理
(1)国民主権
* 国民主権と象徴天皇制
(2)平和主義
* 戦争放棄・戦力不保持・交戦権否認
(3)基本的人権の尊重
――本来、近代国家の民主憲法は、国家が国民を規制するために作るものではない、と話されていたことが、勉強不足のせいか、印象に残りました。
3. 戦争をする国にしてはならない
(1)戦争の風化を許さず
(2)現代史から学ぶべき教訓
(3)歴史に責任を
(4)平和は人類共通の願い
――歴史の責任ということでは、日本と同じ敗戦国のドイツのヴァイツゼッカー元大統領が敗戦40周年記念演説で述べた次の部分は、世界的にも有名だそうです。
「問題は、過去を克服することではありません。かようなことはできるわけがありません。後になって過去を変えたり、起こらなかったことにするわけには参りません。しかし、過去に目を閉ざす者は結局現在にも目を閉ざすことになります。非人間的な行為を心に刻もうとしない者はまたそうした危険に陥りやすい…」このことは、私たちはもちろんですが、政治に携わる人は深く受け止めてもらいたいと思いました。
4. 戦時の変革と我々の在り方
(1)国民生活と憲法
(2)国際化の中の政治
(3)国民の声を政治に
――国際化の中の政治ということでは、日本は食糧自給率40%、これはまさに外国の食に依存した飽食、そして木材90%、石油約
100%など、平和でこそ維持できることです。一方、世界では13億の人が飢餓で苦しんでいるそうです。そのことを思うと、複雑な思いでした。
5.平和憲法を守ることを大きな国民運動に
――メディアの壁ともいわれるそうですが、真実を伝えてほしいこと、そして受け取る側も常に何が正しく、どう動くべきか、見極められる力をつけておくことが大切だと思いました。
――以上、今回の学習会について私の感じたことを述べましたが、憲法9条の今後について心配する質問や教育現場での正しい指導の在り方についての質問に対しては、体制に流されず真実を見つめてほしい、と話されました。
最後に私たち一人一人が平和憲法を守るために何ができるか、またすべきか、考えさせられた学習会でした。
IIRIS(視覚障害者総合サービスセンター) 片岡 慈仲
ハンガリーに出発した柳瀬さん親子を除く
10名は、8月6日(土)午前10時30分、IKBE71の行われたホテル・ポロネーズに別れを告げ、タクシーでビリニュス空港に向かった。お昼前にヘルシンキに向けて飛び立ち、飛行時間1時間45分で、午後1時半到着。ちょうど今日から世界陸上大会が始まったためか、ヘルシンキ空港は大変にぎわっていた。次の便で到着するアルヴォさんたちを待って、3時頃アルヴォさんとリトヴァさんに案内されてIIRISに向かった。
IIRISは昨年2004年5月、ヘルシンキ郊外の現在地に移転新築されたもので、6階建ての素晴らしく大きな建物である。3階にメインエントランスがあり、例えば、その階の廊下の長さが100m以上、その階の面積だけでも2千平米あるとのことだった。
玄関を入った所に建物全体の触地図があった。これをデザイン・作成したのがヘルシンキ芸術デザイン大学に留学中の日本人斉藤名穂さん。彼女はフィンランド視覚障害者協会から製作依頼を受け、その協会の歩行訓練士ヘリナ・ヒルンさんの協力を得ながら約1年かけてこれを完成した、とJDN(ジャパン・デザイン・ネット)のホームページに書かれていた。
点字による説明は最低限にとどめ、素材・手触りの違う2種類のコルクとセラミックとパターンを工夫して、触り心地がよく、しかも判別しやすいように配慮された画期的な触地図である。
アルヴォさんのおかげで、今夜からこのIIRISで3泊させてもらえるのである。
明くる7日(日)9時、リトヴァさんの案内で市内観光に。地下鉄で中央駅まで行き、エスプラナーディ通りを歩き、広い公園を散策。
11時にシベリウス公園をメインとした観光バスに乗車。車内では11カ国語による観光案内があり、日本語のチャンネルで簡潔な説明を聞けた。途中、岩の教会、岩をくり抜いて造られた大きな教会とシベリウス公園でバスを降り、見学したり、写真を撮ったり、買い物をしたりした。12時半頃出発地点の公園に帰り、このバスを降りた。
その後、近くのロシア正教の立派な教会を見たのち、露店で思い思いに買い物をし、2時頃、1865年創立のカッペリという由緒あるレストランで昼食。続いて北欧一といわれるシュトックマンデパートで買い物。
私はかねてからの目的だった素敵なムーミングッズを買うことができ、大満足。
アルヴォさんが私たちを招待してくれ、5時頃バスでお宅に向かった。
4年前まではヘルシンキの中心付近に住んでおられたが、息子さんが独立されたのを機会に郊外のこの家に移転されたとのこと。更に、別荘も持っておられるそうである。図書室や仕事部屋、パソコンやテープのコピー機、たくさんの辞書などが置かれていた寝室、サウナなど一通り見せてくれた。アルヴォさん宅の庭で、ワインやビール片手に、美味しい料理をいただきながら楽しく歓談した。
8日(月)9時から、アルヴォさんとリトヴァさんがIIRISをお昼過ぎまで詳しく案内してくれた。
IIRISはフィンランド視覚障害者協会の所有で、建設費は自己資金と国からの補助に加えて、企業や個人からの寄付を集めたり、宝くじからの寄付、更に、自動販売機などで買い物をすると一定額が自動的に寄付されるシステムからの資金などを充(あ)てたそうである。
フィンランドの人口は520万人、その内視覚障害者は約8万人で、このセンターはフィンランドの視覚障害者(全盲・弱視・盲ろう者)に総合的なサービスを提供している。
1階には通所の授産所があり、60名ぐらいの視覚障害者が雇用され、籠やブラシ、マットなどいろいろな手工芸製品が作られており、それを販売する所もこのセンター内にある。
2階には盲人図書館がある。この図書館は国立で、そのスタートは1870年にさかのぼる。点字書1万タイトル、カセット3万タイトル、最近はデイジー図書も増えてきている。文字の読み書きにハンディのある者は視覚障害者でなくても利用できるので、利用者は12万人。
貸し出しは郵送が中心で、以前は無料だったが、最近郵便事業が半官半民になった関係で、有料となった。しかし、郵送料は個人には負担させず国が持っている。リトヴァさんの話では、以前は自宅のすぐ近くにポストがあり便利だったが、国営でなくなってからは歩いて15分くらい行かないとポストがないし、料金も高くなったとこぼしていた。
教科書の出版や立体絵本の製作も行なっている。また、デイジーを読む機械は昨年、3千台を利用の多い人から順に配布し、引き続きこれからも個人に無料で配布していくとのことだった。
盲人博物館にはいろんな資料が年代順に展示されていた。点字器ではルイ・ブライユの考案した点字器を始め、いろいろな点字板、タイプライター、ブリスタ、バーサブレイル、ピンディスプレイに至るまで順番に展示されていた。また、いろいろな白杖とともに、以前盲人のシンボルとして使われていた黄色い腕章も展示されており、それにはソケア(sokeat、フィンランド語で盲人の意)と書かれていた。
コンピューター訓練室にはたくさんのコンピューターセットが設置され、スクリーンリーダーはジョーズ62、ピンディスプレイはアルバ40が使用されていた。このコンピューターシステムは視覚障害者には無料で貸与されるとのことである。以前は視覚障害者の職業はマッサージや手工芸製作が中心だったが、最近はコンピューター関係の職種に多くの人が進出しているとのことだった。
また、2階には大きなプールとサウナの設備があり、いつでも利用して下さいと勧められた。
メインエントランスのある3階には国際会議もできる立派なホールがある。100人収容の階段状の席には、それぞれにテーブル、ヘッドホーン、マイクがセットされており、3つの通訳ブースがあり、3ヶ国語同時通訳ができるようになっている。また、オーバーヘッドプロジェクターやデータプロジェクター、ドキュメンタリーカメラなどの装置もあり、難聴者のための"inductive loop"、盲ろう者のために床にセットされたバスラウドスピーカーもある。壁を取り外して隣のスポーツホールとつなぐと、
300人収容の大ホールとなる。
120人収容のレストランはセルフサービス形式となっている。
4階、5階はリハビリテーションルームと
40の居室。居室は大体2人用で、バス・トイレ付きで、簡単な料理もできるようになっている。また、視覚障害者の家族全員が訓練を受けるための家族部屋もいくつかある。各地から泊り込みでここに訓練を受けに来るが、その費用は各地方が負担する。また、ここには10名ぐらいの訓練士がおり、各地に派遣されて講習を行なったり、簡単な訓練を行なったりもする。
フィンランドの視覚障害者組織は、14の地方組織と11の専門組織(趣味のサークルやマッサージ師の組織、手工芸製作者の組織、エスペラント組織など)がある。6階にはこれらそれぞれの組織の事務所と9個の録音室、障害を判定する部屋(眼科医が担当する)などがある。
午後からは盲人用具売り場でいろいろ見せてもらいながら買い物もした。ここには約800種の品物が販売されていた。
3時からは菊島さんが中心となって、ここ
IIRISでも着物のデモンストレーションを行なった。
6時過ぎからヘルシンキの和食レストラン
「カブキ」に私たちでアルヴォさんご夫妻と
リトヴァさんを招待し、刺身やお寿司、日本酒を味わいながら楽しいひと時を過ごした。
明くる9日(火)の朝7時30分、大型タクシーで空港に向かい、フランクフルトへ。ドイツに立ち寄る片岡親子以外は帰途についた。
時は200X年(14) 松田 哲昌
アメリカで同時多発テロが起きて、ちょうど4年目の2005年9月11日、日本は小型核兵器に匹敵するような時限爆弾を抱え込むことになった。8月に衆議院が解散になった。小泉自公与党はこれまでの庶民いじめの悪政と、これから起きる大増税、憲法改悪を覆い隠すために郵政民営化の是非を問うという争点隠しの戦術をとった。
その郵政民営化にしても、郵便、郵便貯金、簡易保険の3事業で黒字となっている郵政公社をバラバラに分けて、郵便貯金をアメリカと
日本の大銀行に売り渡し、簡易保険を生命保険大資本に叩き売り、残った郵便事業はやがて採算の合わなくなった所から撤退するという、百害あって一利なしというものだった。
選挙の結果、自民・公明で480議席の3分の2掠(かす)め取ったのだ。これはどんな数字なのか。
衆議院の予算委員会をはじめ、各委員会の3分の2与党が占め、あらゆる悪法を可決する。本会議でも数にものを言わせて衆議院を通過させる。そして参議院でたとえ否決されたとしても、憲法の規定により衆議院に差し戻され、衆議院の3分の2以上の賛成で、可決成立するのである。まさにいつ悪法をまき散らすか分からない時限爆弾なのである。
選挙結果を詳しく見ると、自民・公明両党の得票率は50%そこそこであり、郵政民営化の世論はほぼ拮抗していたともいえる。しかし小選挙区制という制度では、1選挙区から1人を選び、あとは死に票となるのだから、こんな馬鹿げた結果も出るのだ。小泉首相は国民の圧倒的多数が民営化に賛成したと胸を張るが、それは小泉マジックといわれる手法と、小選挙区制という悪しき制度が生み出した虚像なのだ。
特に小泉与党は自分と意見の違う者を徹底的に排除してしまった。独裁的立場に立ってこの時限爆弾を弄(もてあそ)ぶとしたら危険極まりないのだ。
とかく人々は将来に希望が持てない不安な時代には、独特のいわゆるカリスマ性のある者が現れると、一挙にそちらに流れるものである。あのオウム真理教の麻原が、高学歴の者まで引きずり回したのもその現れではないだろうか。今度の選挙も多分にそんな要素が小泉にあったのだろう。 続く
編集後記 大堀 正寿
あちらこちらにキンモクセイのよい香りが漂(ただよ)い、季節は秋となりました。
秋と言えば、食欲の秋、スポーツの秋、そして読書の秋とありますが、会員の皆さんはどんな秋を楽しみますか?
私はやはり食欲の秋でしょうか。魚では秋刀魚(さんま)、果物では梨(なし)など、美味しい物がたくさんありますね。昔はその時期にしか食べられない物で季節を感じることができました。でも、最近では、そういった物を食べる人も少なくなり、寂しい限りです。もっともっとその時期にしか食べられない物を味わって季節を感じてもらいたいですね。
そうなると、ついつい食べ過ぎてしまって、お腹が気になるという人もいるでしょう。そんな人は、今度はスポーツの秋で体を動かしてみてはどうですか?
編集者より
8月11日から9月1日にかけて行われた
自治体交渉についての報告は180号(特集号)に掲載しております。ご了承願います。
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