「みちしるべ No184」2006年3月号

目次(ページ内リンク)
 視覚障害者にとっての自立支援法 パート5  藤原 義朗 
 こんな風に変わります  正岡 光雄 
 全視協全国委員会報告  井上 芳史 
 「知事と語る障害者の集い」報告  片岡 慈仲 
 菊島和子さんの講演会に参加して(1)  田元 美紀 
 エスペラントとはどんな言語か(3)  田元 美紀 
 編集後記  田元 美紀 

視覚障害者にとっての自立支援法 パート5
藤原 義朗
 新制度のスタートまであとわずかとなりました。それぞれの団体で学習会が持たれています。組織によっていろいろな「味」が出ています。例えば、施設入所関係では世帯分離について、知的障害の組織では減免のための資産調整などが重点というようにです。
 さて、心配なのは視覚障害者のことです。この制度は、支援費制度と同じく申請しなければサービスは受けられません。しかし、知らなければ申請はできません。お知らせしたいことはたくさんありますが、「みちしるべ」の紙面では限りがあります。
 皆さんの市町村で、障害種別団体で説明会を行なわせ、利用しやすいものにしていこうではありませんか。また、厚生労働省では、自立支援法に対するパブリックコメントを募集していますので、利用者として視覚障害特性を「お上に直訴」していこうではありませんか。

1.1時間150円負担。
 3月1日に、申請殿介護給付単価(案)が発表されました。支援費制度の時と比べると若干点数が下がっています。
   30分未   1時間未 1時間半未
身体 2300   4000  5800
家事  800   1500  2250
です。(「未」は「未満」の略、「身体」は「身体介護」の略、「家事」は「家事援助」の略)
 
 以前にも書きましたように、視覚障害のヘルプで、身体介護になるのは、化粧、診察の時の説明、薬の説明の介助だけですので、ほとんどの場合「家事援助」です。単価の1割負担ですから、1時間の利用だと150円の負担ということになります。気になるのは、10月以降はヘルプ時間が1回当たり1時間半までを基本とするということです。つまり、国は長時間の介護を嫌がっているわけです。もし、長時間必要な場合には、例えば「盲導犬の毛が落ちて、掃除に時間がかかる」というように理由づけが必要になってきます。

2.低い国庫負担基準それで大丈夫?
 障害程度区分による国庫の負担基準が発表されました。これは、区分○○の人は○円までのサービスを使えますという基準です。介護保険の時もありましたね。介護保険と違うのは、サービス内容によってそれぞれ定められているということです。
 それによると、ホームヘルプの場合、区分1が2.2万円 区分2が2.9万円、区分3が4.3万円、区分4が8.1万円、区分5が12.9万円、区分6が18.6万円 です。
 視覚障害の場合は、区分1もしくは全盲の人で、うまくいって区分2程度だと思います。単純に、家事援助単価で割ると、区分1の人でひと月ヘルパーの利用時間は14時間まで、区分2の人でもひと月19時間までということになります。
 ある全盲の人は、「月50時間は要る」と言っておられました。また、子育て中の人からも、「ハイハイが始まった」「入学した」「ヘルパーの時間増やして」と、聞こえてきます。つまり、この基準額では足りない人が出てくるわけです。
 今まで、支援費でも「区分間流用」というのがありました。例えば、区分1のある人が、14時間の内、ヘルパー5時間でいい、基準額との差し引き9時間を、基準額超えて必要な人に流用してもかまいません、というしくみです。
 しかし、次のような問題があります。
@ 低い基準額では、他の人に廻せるほどの余りは出にくいこと。
A 小さい自治体では障害者人数が少なく、もしニーズの高い人がいる場合、回しきれないことです。
 もともと、この国庫負担基準額の低いことが問題です。環境によって、ニーズに応じてサービス支給決定がされる仕組みが必要です。

3.眼科へ行きましょう
 高知市では、4月以降の介護給付利用上限額が点字墨字併記で通知がありました。人によっては、「えっ、37200円払わないといけないの」と、誤解されている方もおられますが、先にも述べましたように、視覚障害者のヘルパー利用の場合、利用の多い人で、月2千から3千円程度までです。
 4月からは、障害程度区分認定が始まります。役所から、訪問調査の日のアポイントと、かかりつけ医を聞かれます。

【訪問調査で気をつけること】
・前号でも書きましたように、なるべく具体的な失敗エピソードを話す。
・判定に使われる情報開示は法的に可能ですので、特記事項に何と書かれたか問うことはかまいません。特に、視覚障害について、未理解な調査員の時にはやってみてください。
・「子どもの入学で資料記入が大変、名付けに時間がかかる」など、生活背景の変化でヘルパー支給時間が多く要ることを話してください。これを言わないと、国庫負担基準額以上の支給決定はなされません。

【医師意見書で気をつけたいこと】
 昨年のモデル調査で、認定審査会の場で医師の意見書により区分変更のあった割合は身体障害15.6%でした。この内、聴覚障害、視覚障害についてはほとんどの場合、変更ありませんでした。 知的障害20.6% 精神障害
53.7%というものでした。なぜ私達は上がらなかったのでしょう。まず、この意見書書式には障害の原因となった診断を書く以外は、ほとんど視覚障害を書く欄がないからです。例えば、網膜色素変性症の場合、一次調査ではほとんど百点満点です。色変を知っている先生でないと「夜盲があり暗い所では不便」「視野が狭くゴミ箱を蹴飛ばす。人に当たる」など、書けないからです。よほど視覚障害を理解された先生の意見書でないと、二次判定で障害程度区分を上げる事が出来ないわけです。
 もう一つは、視覚障害者は普段、専門医にかかっていないからです。役所は普段、風邪などでかかっている医師に意見書書式を廻そうとしますが、やはり、眼科へ行って視覚障害の事を書いていただきましょう。

5.新受給者証が届いたら
 今まで、ホームヘルパー利用されていた方の所へは、新制度による受給者証が届きます。高知市にお住まいの方の所へはもう届いたところでしょう。そこには、今までの支援費と同じく身体介護か家事援助かの内容と支給時間が書いてありますので、まずご確認ください。
 もし、今までより少なくなって不自由をきたしそうな場合には、不服を申し立ててください。その時、「従前額保障」という言葉をお使いください。これは、国が「今までよりサービスを落とさない」という言い方をしてきました。ですから、既得権として守ることになります。

6.ガイドヘルパーはいくら?
 ガイドヘルパー制度は、10月から地域生活支援事業に移行します。4月から9月までは、ホームヘルパーと同じく応益負担になります。
 高知市では今まで、視覚障害者の場合、身体介護を伴う移動介護という形で支給してきました。そのため単価は、1時間未満4000円です。つまり、利用者負担額は、その1割の
400円になるわけです。高知市以外は、たいてい身体介護を伴わない移動支援の形で支給していましたので、1時間あたりの利用者負担額は150円になります。
 10月以降は各市町村で負担のあり方が検討されますので、皆さんのご意見をどしどし市町村にお伝えください。

7.白杖にも医師の意見書
 国の事業である自立支援給付は、4月からスタートと書いてきましたが、その内、補装具が自立支援法でスタートするのは10月からです。ですから、3月中に慌てて申請する必要はありません。
 なぜ、10月になったのかというと、品目の中で補装具から日常生活用具に移行するものがあるからです。視覚障害関係では点字器です。また、色メガネは制度から廃止になりました。その他、移ったものは、頭部保護帽やT字杖、松葉杖、収尿器やストーマ用装具などです。心配なのは、補装具制度のうち、医師の意見書の要らない品目のうち、白杖を除いては、みな日常生活用具に移ったということです。新法における補装具の定義として、指定医療機関の判定書もしくは意見書が要るというのがあります。義足や遮光メガネを申請する際には医師の診断が居ることは理解できますが、白杖に診断書が要るのでしょうか? 道路交通法で「持て」と言われているのですから給付されるのが当然です。
 次に、地域生活支援事業に移った日常生活用具ですが、今までも地域によってあまりにも差がありすぎることが指摘されていました。市町村事業になることで抜けが出ないよう今までにもまして目を光らせていくことが必要でしょう。特に、点字本の価格差保障制度がしっかり行なわれるかご確認ください。

8.おわりに
 3月中旬、仕事で介護保険事業者説明会に行ってきました。4時間の詰め込み教育でした。「自立できるようマネジメントを立て、介護サービスから卒業しましょう」だの「ターミナルケア加算で、在宅で死ぬと給付があります」だの、介護や医療を切り捨てようとする内容でした。
 介護保険を追っていく、兄弟ランナーの「弟」自立支援法。支援費からタスキを受けて加速していますが、兄に追いついてもらったら大変困ることになりますね。

こんな風に変わります
              正岡 光雄
  *17年度音響信号機設置箇所
   及び本年度予定箇所
 昨年度、つまり3月までに設置された音響信号機設置箇所をお知らせします。
神田吉野分岐点
追手前高校北西角
八幡通り交差点
木屋橋西詰交差点
 18年度、つまり本年度設置分は計画段階なので、まだ意見も聞いて変更することもあるようですが、次の箇所です。
 @(香美市)土佐山田町 JR土佐山田駅前交差点
 A知寄町3丁目電停交差点
 B河ノ瀬交差点の1つ北の交差点
CJR高知駅の北側交差点
D播磨屋町2丁目、香川銀行高知支店前交差点
 なお、前回お知らせしましたように、ソーレ前にピック方式(南北のみ)が設置され、検証に行きましたが、白杖のみでは反応せず、警察署で指定のテープを購入しなければ「赤です」
「青です」などと言いません。更に、点字ブロックがわずかしか敷設されていませんので、役に立ちません。会員の皆さんも一度現場で試してみて、ご意見をお知らせ下さい。
masayan.8181@、088−822−7003です。よろしくお願いいたします。

  「全視協全国委員会」報告
              井上 芳史
 3月11日〜12日にかけて全視協大会後初の全国委員会が、沖縄の組織が欠席の中で行なわれました。13日の「手つな要請行動」は仕事の都合で参加することが出来ませんでした。
 まず、総務局長から「私たちの願いに反して障害者自立支援法が4月から施行されるようになってしまった。一方、障害者基礎年金と厚生年金との併給が可能になった」と障害者を取り巻く情勢について報告がありました。
 1.憲法を守る運動:7月には視覚障害著名人に呼びかけ人になってもらい「9条の会」を結成すると提案がありました。愛知・兵庫・岡山で「障害者・患者9条の会」を結成した取り組みが報告されました。岡山では結成にあたり他の視覚障害者団体の有力者にも呼びかけ人の一人になってもらい、その後、全視協にも入会してもらったと、うれしい報告がありました。
 2.街づくり運動:「鉄道死傷事故ゼロの日行動」の取り組みが中心でした。室蘭本線で雪のため線路沿いの道を歩いているつもりが線路上であったために列車にはねられてしまったという悲しい事故の報告がありました。高知からは歩車道段差2cmの取り組みの中で「歩車道段差0cmは車椅子のためではなく自転車のためであったことが明らかになり、段差2cmを勝ち取った」ことを報告しました。
 3.社会保障:東京・横浜・京都では障害者福祉制度利用料を地方自治体が負担することが報告されましたが、各地で障害者医療費助成制度が見直され、新たな負担増になっていることが報告されました。
 4.雇用・就労:視覚障害を理由に教職を解かれたのは違法として愛知学園の橋本先生の裁判は12月に名古屋地裁で「教職を解き、給与を削減したのは違法行為」と画期的な判決がありました。
 5.あはき:全鍼師会が行なう「無免許マッサージ師追放」署名に全視協も協力する。無資格の日(6月4日)はあるが、この署名は4月中に取り組まなければならないと提案がありました。高知の「あはき法による届け出施術所」プレートを自治体が作り配布する取り組みは大きな反響がありました。
 6.ブロック交流会:東は11月11〜12日(新潟)、西は10月21〜22日(大阪)、文化の集いは12月7〜8日(岩手)、弱視の集いは10月(静岡)でそれぞれ実施されることになりました。
 7.時期全国委員会と大会:全国委員会は9月9日〜10日、兵庫大会は07年6月1日〜3日に行なわれることが決まりました。
 この会に参加して思ったことは正岡氏を全視協会長に送り出している高知の活動は全視協をも支えているなということでした。

「知事と語る障害者の集い」報告
              片岡 慈仲
 2月11日、高知城ホールで、「知事と語る障害者の集い」が催された。第1部では療育福祉センターのPT(理学療法士)で、青年海外協力隊員を務めておられた西山竜司さんが講演された。
*第1部@講演「マレーシアの障害者事情」
 西山さんの任期は2003年7月から05年7月まで、任地はマレーシアのボルネオ島北部のサバ州、タオという町だった。
 マレーシアの面積は33万平方q(日本の約0.9倍)。人口は2,327万人。言語はマレー語、中国語、タミール語、英語が主である。宗教はイスラム教、仏教、儒教、ヒンズー教、キリスト教、先住民の宗教とさまざまである。1963年にマレーシアが成立し、65年にシンガポールが分離独立した。
 マレーシアの障害者政策。学校教育の対象になっているのは、軽度の障害のある子どものみである。中等度、重度の子どもは学校へ行けない。
 障害の種類によって色分けされた証明カードがある(視覚:青、聴覚:紫、知的:赤、肢体:緑)。だが、登録は任意である。このカードを使って、義肢・装具の給付、起業・就労支援などを受けられる。
PDK(マレー語の略称)で障害のある子ども、大人のためにリハビリが行われている。利用者自身がPDKワーカーとして当事者団体を作っている。以前PDKを利用していたが、今は小さな小売店で職を得て自立生活をしている人もいる。PDKの目的は、障害者が多くいる地域と連絡を取ることと、地域の障害者を支援することである。
障害には物理的な障害と社会的な障害がある。個人・医学モデルよりも社会モデルの考え方が必要である。

*第1部A 親子トーク
 まず、増田こうじ君と彼の母親がお話をされた。増田君は中ノ橋の山本治療院で働き始められてから8年になるが、その治療院が3月末で閉鎖されることになった。4月から盲人ホームで働くことを希望されているが、そのホームの管理体制が4月に変わるので、就職できるかどうか分からない(2月の時点ではそうだったが、後にホームへの就職が決まった)。
 次に、小松成江(まさえ)さんのお話があった。小松さんのご家族はテレビでも取り上げられたことがある。6人のお子さんのうち、3人が障害を持っている。三男が車いす使用者であり、いちばん下の双子が聴覚障害を持っている。
 小松さんは訪問看護の仕事をされている。
 聴覚障害の双子は現在8歳。「耳が聴こえない」という札を首からぶら下げている。近所の集まりで「このような子がいる」ことをアピールする。自転車で転んで怪我をした時、手当てをしてもらい、小松さんの家に連れてきてもらった。
 聴覚障害は外見では分からない(補聴器を付けていても目立たない)。自閉症、知的障害のある人も同じである。そのため、周りの人に分からせ、危険を回避するためにワッペンを付けるのはどうか?(知られたくない人もいるので、強要するのには反対だが)
 17歳の息子さん(車いす使用者)の母親である小学校の教員が、学校での人権教育で、差別や偏見をなくすために、「みんな違ってみんないい」ということを教えておられる。

*第2部 新年会
 講演、親子トークに引き続き、新年会が催された。初め、高知大学の学生が「ぱせりの会」のテーマソング「あしたに向かって」(上田真弓作詞)を演奏した。橋本知事が前田宥(ひろし)会長(高知県聴覚障害者協会)と手話体験をされ、中沢君からマッサージを受けられた。アンドレイ・コロベイニコフピアノ演奏会(3月2日)の案内チラシが参加者に配られた。21時ごろまで楽しく盛り上がっていた。

菊島和子さんの講演会に参加して(1)
              田元 美紀
 3月2日に高知県立美術館ホールで、ロシアのエスペランティスト、アンドレイ・コロベイニコフさんのピアノ演奏会が催された。翌3日、彼の通訳として同行された菊島和子さんの講演会が盲ろう福祉会館で催された。
 菊島さんはフリージャーナリスト、社会福祉研究家、そして国際共通語エスペラントの講師である。ヨーロッパの盲人エスペランティストの家庭を泊まり歩かれ、彼らの手配と通訳で視覚障害関係のいろいろな人をインタビューされ、多くの視覚障害関係、社会福祉関係、教育関係の施設を訪問されている。
 最近では、昨年10月に催された横浜での日本エスペラント大会の分科会「盲人と知り合いになろう」に参加され、報告をまとめられた。(私もこの大会に不在参加した。「不在参加」とは、実際に会場へは行けないが気持ちの上でのみ参加すること)
  
*講演の内容(1)
 個人で友達を訪問するという形を取ったが、会う相手がいい意味でたくさんの情報を提供してくれた。一般に言われている状況と違うものを得てきた。
 視覚障害者や福祉のことを話す時、北欧のことが気になる。日本で言われているのはニュースのかなり端っこの部分だけである。日本人が勝手にイメージしている。
 スウェーデンでは福祉政策が行き届いている、見えない子どもに対して統合教育が行われている、などといわれるが、本当なのか?
 スウェーデン、フィンランド、ノルウェー、デンマークでは日本と考えが違う。福祉制度について完璧であるのは全く嘘である。
 統合教育をする先生を指導するシステムがあるが、統合教育を受けている視覚障害児が幸せになれるかどうかは、その子を担当している先生によって左右される。貧乏くじを引いた子どもは本当に可哀そうである。
 スウェーデンのいい所、悪い所を見て、フィンランドでも後発で統合教育を行うようになったが、肢体不自由が重なっているなどの重複の子どもは普通学校で指導しきれないので、盲学校やリソースセンターに入る。国土が広い上に盲学校が1つしかないので、遥か何千キロと離れた所からも全員が集まってくる。
 ろう(聴覚障害)についても、スウェーデンでは一度統合教育が行われていたが、ろう学校は全廃されていない。ろうの場合は統合教育が難しい。
 コンサルタントをしている先生と話をした。視覚障害の場合、文字を読めないので先生が持て余す。ただ座らせているだけ、という状態が北欧でもある。
 フィンランドでは視覚障害児の統合教育について持て余す先生がいる。先生は地位を守られていて、問題があっても解雇されない。
 ひとつはリソースセンターといわれるセンターがあり、先生を指導(指導のしかたを監督)する先生が巡回していって、子ども、親といろいろ話し合う。
 フィンランドのエバスクレに大きな盲学校があるが、そこから指導の先生が派遣される。「巡回教師は子どもに教えている」と解釈されているが、実際にはほとんどない。担任の先生を指導、それに対するコンサルタントをしているが、強制する力がなく、助言するのみだが、これも問題である。
 リソースセンターがしているもうひとつのことは、点字の教科書を作ることである。日本と違い、教科書の点訳はプロの点訳者がしている。
 点字の教科書はあっても、担任の先生が点字を知らないことが多い。何年間も点字の必要な子を預かるわけではない。
 フィンランドの盲学校に泊り込んで子どもと一緒の寮に入った。日本では考えられないことがある。夜10時は夜食の時間で、寮生たちが台所で寮の冷蔵庫を勝手に開けてパン、ハム、紅茶などを飲み食いする(日本のお三時と同じ)。
 そこはたまたま視覚障害児のアシスタントをする人のトレーニング機関だった。トレーニングを受ける人の年齢層はさまざまである。大人たちはかなりまじめで、視覚障害についても他の障害についても、どの障害の子についても支援できるようにしたい、という人が多い。だが、若い人には「大学の試験に失敗した」とか、浪人中のアルバイト代わりにトレーニングを受けている、という人もいる。その結果、どういうアシスタントがつくかで子どもには差が出てしまう。
 家に障害児がいる場合、親、兄弟姉妹、祖父母、いとこ、近所の人、その他接する可能性がある人をどこかの合宿所に入れ、3週間〜1ヶ月間必要な支援だとか障害についての知識を教えたりする。合宿をするための休暇を親が取ることができるし、そのための費用も国が出す。障害児(者)のいる地域では、いろいろな人が障害について知っている。見えないことの体験訓練をしたりする。
障害があると分かった時には、どんな支援が必要なのかを家族と医者、業者と話して決めていくが、一方的に押しつけることはしない。障害児が家にいることも隠していない。障害児が生まれたら、次々と弟(妹)を産んでやれ、という考えがある[兄弟(姉妹)同士の助け合いの関係ができるから]。障害児(者)を理解するためのシステムが国、地方の責任で行なわれている。社会がその子(人)の存在を認めることが重要なところである。
だからといって、小さい頃から障害児と一緒にいれば優しい子になるかと言えば、そうではない。では、どういう子(人)が優しくなれるのか。それは、障害者と接するのに前向きの考えを持つ家族の子(人)である。
むしろ高等教育の場から統合していくことが必要である。日本では幼稚園には入れてもらえるのに大学では入れてもらえないことがしばしばあるが、本当はまず大学で門戸を開き、大人同士で会う段階からもっと障害者を受け入れ、徐々に高校→中学と下げていくのがよい。高校とか大学となれば、知的障害が重なっていない視覚障害だけの人なら自分の意見を言える。だが、幼稚園や小学校(特に低学年)の子どもの場合は、嫌なことがあっても自分の意見を言えないので、その子がいい状態でいられるかどうかが教師や親の判断で決められる。
また、大学生の場合は、大人の付き合いであり、頭で論理的に理解し、社会のためにすべきこと、嫌がらせをしないことを知っている。だが、子どもにはそれが分からないので、人の嫌がることを面白がることもある。障害があるとも知らずにいじめたりするので、障害のある子とない子を一緒にするとかえってマイナスになることもある。
優しくなってもらうには、そのことに焦点を当てた社会の教育をしなければならない。
そうは言いながら、北欧で多少前向きなのは、国や都市が「我々は人権とこっちを向くんだ」という宣言をしているからである。日本でも宣伝らしきことがなされているが、お座なり状態である。
全員が平等の社会を作っていくためには、できる(恵まれた)人が自分を抑えないといけない部分もある。極端な例をあげると、CO2の問題、エネルギー問題がある。先進国の人々は多くエネルギーを使っているが、貧しい国の人々はエネルギーをあまり使えていない。先進国はエネルギー消費や今の生活レベルを少し落としてでも、他の国にその分を分けないといけない。それでも日本などはお金で解決しようとしている。できている(恵まれた)国、人がある程度抑えなければならない。
日本では場当たりでやっていくので、矛盾が起こる。北欧では理想が掲げられている。だから、みんなが同じように優しい。
                 続く

エスペラントとはどんな言語か(3)
              田元 美紀
*品詞とその語尾
 エスペラントの単語には語尾を持つものと持たないものがある。名詞、形容詞、動詞、一部の副詞には語尾がある。
 名詞はlibro(本)、muziko(音楽)のように、すべて-oで終わる。形容詞はsana(健康な)、grava(重要な)のように、すべて-a(アー)で終わる。動詞の現在形はestas(〜である、〜がある)、dankas(感謝する)のように、すべて-as(ァス)で終わる。
副詞には語尾を持つものと持たないものがある。hodiau~(今日)、jam(すでに)のように、語尾を持たない副詞を「原形副詞」という。felic^e(幸せに)、silente(静かに)のように語尾を持つ副詞は「派生副詞」といい、すべて-e(エー)で終わる。
このように、語尾を持つ単語では、品詞の語尾が一定なので、語尾を見るだけで「これが名詞か、動詞か、」とすぐに分かる。基本単語
(合成語でない単語)から語尾を除いた部分を「語根」といい、主な意味、概念を持っている。
 また、語尾を付け替えることによって、品詞を替えることができる。例えば、ボランティアサークルの名前になっている「ルーモ」(Lumo)はエスペラントで「光」という意味だが、それは「光(る)」「明るい」という概念を意味するlum-という語根と、名詞を表す語尾-oで構成されている。lumoの語尾-oを-aに替えると
luma(明るい、光の)という形容詞になり、
-eに替えるとlume(明るく)という副詞になる。-asに替えるとlumas(光る)という動詞(現在形)になる。他の単語でも次のように品詞を替えられる。
 felic^o(幸福)−felic^a(幸せな)−
felic^e(幸せに)
 vido(見ること)−vidas(見る)
 pluvo(雨)−pluvas(雨が降る)−
 pluva(雨の、雨降りの)

*疑問詞kiu「だれ」「どの」
 Kiu vi estas? [キーウ ヴィ エスタス]
 あなたはだれですか。
 Kiu staras?[キーウ スターラス]
 だれが立っていますか。
 kiuは「だれ」という疑問詞である。疑問詞は文の先頭に来る。答える時にはJesやNeを使わない。上の例文に対してはMi estas 〜(自分の名前).で答える[viの部分がliやs^iになっている場合は、Li (S^i) estas 〜(その人の名前).で答える]。
下の例文では疑問詞が主語になっているが、〜(立っている人)staras.で答える。

Kiu muziko estas bela?
[キーウ ムズィーコ エスタス べーラ]
 どの音楽が美しいですか。
 kiuのすぐ後に名詞が来ると、「どの〜」の意味になる。後に来る名詞は人、物、動物、どれでもよい。また、kiuは「どれ」の意味にも使われる。
 先に出てきたtioは「それ」「あれ」という意味だが、tioの-oを-uに変えてtiuにすると、
「その(あの)人」「その(あの)」という意味になる。

*疑問詞kio
Kio estas tio?
[キーオ エスタス ティーオ]
 それは何ですか。
 kioは「何」を意味する(物や動物にかかる場合)。答える時はtioをg^iで受けてG^i estas 〜(物の名前).で答える。
[G^i estas krajono.(それは鉛筆です。)など]

*kioが人にかかる場合
 Kio li estas?
[キーオ リ エスタス]
 彼は何をなさっていますか。
 Li estas masag^isto.
[リ エスタス マサヂスト]
 彼はマッサージ師です。
kioは人に対して使うと、職業、身分、社会的役割について尋ねることになる。
masag^istoはmasag^o(マッサージ)の
masag^-という語根と-oという語尾(名詞を表す)の間に「それを職業にする人」を意味する接尾辞-ist-を入れて作った合成語である。ある単語の語根に-ist-を付け、それに-oを付けると「それを職業にする人」を意味する単語になる。
 akupunktur-(鍼療法)+-ist-+-o→
akupunkturisto(鍼師)
 labor-(労働、働く)+-ist-+-o→
laboristo(労働者、特に現業職)
 ofic-(事務)+-ist-+-o→
oficisto(事務員)
 instru-(教える)+-ist-+-o→
instruisto(教員、教師)
 なお、「学生」(短大、専門学校生以上)はstudento、「生徒」(高校生まで、習い事の生徒にも使う)はlernanto、「主夫(婦)」は
dommastr(in)o(-in-は「女性」を意味する接尾辞)、「無職者」「失業者」はsenlaborulo(sen-は「欠乏」、-ul-は「その性質を持つ人」の意味)。
  
 これまでに出てきた疑問詞と指示代名詞をまとめると、
 kiu だれ、どの、どれ  kio 何          
 tiu その(あの)(人)  tio それ(あれ)
 ki-は「疑問」を、ti-は「指示」を表す。
-uは「人」「物」を、-oは「物」「こと」を表す。

*疑問詞kia
Kia estas la krajono?[キーア エスタス
 ラ クラヨーノ]その鉛筆はどんなですか。
 G^i estas mallonga.[ヂ エスタス
 マルロンガ](それは)短いです。
 kiaは人や物、動物の性質、形状、種類を尋ねる時に使う疑問詞である。これに対する答えは-a(形容詞、bela、bona、longaなど)である。kiaのすぐ後ろに名詞をつけて質問することもある。(次の例)
 Kia lingvo estas la japana?[キーア 
リングヴォ エスタス ラ ヤパーナ]
 日本語はどんな言語ですか。(la japanaの後ろのlingvoは省略されている。エスペラント以外の言語の場合は、言語の名前の前にlaを付ける。エスペラントは固有名詞なので、Esperantoと頭文字を大文字で書く。)
 「どんな」がkiaであれば、「そんな」「あんな」は何と言うのだろうか(疑問詞と指示代名詞をまとめた表がヒント)。

  *否定文
 Hodiau~ mi ne iras al la firmo.
[ホディーアゥ ミ ネ イーラス アル
 ラ フィルモ]今日、私は会社へ行きません。
 否定文を作る場合は、否定する単語、特に動詞の前に「〜ない」を意味する副詞neを付ける。「〜でない」「〜がない」という時にも
ne estasと表現する。


  *前置詞
 先ほどの例文に出てきたalは「〜へ」「〜に」(方向)を意味する前置詞である。”al vi”は「あなたに」。エスペラントでは、前置詞の後ろには目的格でなく、主格が来る。
 sur[スール]:(接触して)〜の上に(で)
sur la tablo テーブルの上に
 super[スーペル]:(離れて)〜の上に(で)
  La birdo flugas super la domo.
  鳥が家の上で飛んでいます。
 en[エン]:〜の中に(で)
  en malgranda c^ambro小さな部屋の中で
   
*クイズ
 次の単語の品詞を指示の通りに替えよ。
scienco[スツィエンツォ](科学)(形容詞、副詞に)
finas[フィーナス](終える)(名詞に)
amo[アーモ](愛)(動詞、形容詞に)
             (答えは次号に)
  *前号のクイズの答え
Bonan tagon.
Dankon. またはKoran dankon.
C^u vi estas sana?(Kiel vi fartas?とも)
                  続く

編集後記
              田元 美紀
 段々暖かくなり、桜の花も満開となりました。それから、電車通りの歩道の花壇にはチューリップやパンジー、ビオラ(パンジーの小さなもの)が彩り美しく咲いています。本当に「春だなあ」と感じます。
 さて、そんなのどかな春の風景の一方で、国民、とりわけ社会的、経済的「弱者」といわれる人々の意見が無視され、4月1日から「障害者自立支援法」が施行されることになってしまいました。障害の重い方にほどより多くの経済的、精神的な負担を強いられるのですから、大変なことです。
 でも、「仕方ない」や「あきらめ」からは何も生まれてきません。この悪法をなくし、だれでもが住みよい社会にしていくためにも、希望の種をまき、闘っていきましょう。
 「高速バスの発着時刻」を改訂しました。別冊として添付いたします。ご利用いただければ幸いです。



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