「みちしるべ No185」2006年5月号

目次(ページ内リンク)
 女性部総会を開きました  畠山 俊恵 
 視覚障害者にとっての自立支援法 パート6  藤原 義朗 
 僕の白い杖  貞岡信太郎 
 菊島和子さんの講演会に参加して(2)  田元 美紀 
 エスペラントとはどんな言語か(4)  田元 美紀 
 新入会会員 益田さんの紹介  中平 晃 
 編集後記  大堀 正寿 

女性部総会を開きました
              畠山 俊恵
 4月23日、今年は湯の川温泉で総会と懇親会を行いました。
 送迎バスは予約でいっぱいだったので、田所宅に集合した。みんなはタクシー2台に分かれて湯の川温泉へ。
 部屋で落ち着く間もなく、早速総会を始めました。出席9名、委任5名。議長に井上奈美子さん、書記に伊藤啓子さんを選出し、議案書に沿って進めていきました。05年度の活動報告の中から、7月に行なった「憲法9条を学ぶ」学習会について、「憲法全般のお話だったので、9条についてもう少し詳しく聞きたかった」「講師の先生の声が聞き取りにくかったので、マイクを用意してほしかった」などの意見が出ました。
 担当者から「これからは講師の先生に直接会って、前もって打ち合わせをしておく」という反省がありました。 
*レク部と共催のバス旅行 ――  
梶ケ森では、片岡幸子さんのお兄さんに大変お世話になりました。案内はもちろん、その合間にいろいろと説明をして下さったり、樹齢何百年という大きな木にも触らせて下さいました。「片岡さんのおかげで、本当に楽しかった」との感想がたくさん出ました。
06年度の活動方針案では、「医療改正について学習しよう」「いや、それよりも防災の学習会をして、災害が起きた時、視覚障害はどんなことを不安に思っているか聞いてもらおう」「ホスピスの見学もしたい」「窪川にある障害者療護施設『オイコニヤ』の見学もしたい」「牧野植物園にも行きたい」など、ざっくばらんな雰囲気の中で、いろいろな要望が出ました。総会後の交流会の席でも、「今ブームになっている『岩盤浴』を体験してみたいねえ」という話も出ました。 
 女性部大会については、「参加したい気持ちはあっても費用がかかるし、それより何よりも後の報告会や「みちしるべ」の原稿のことを思うとねえ…、それがなかったらねえ…、の声多数「それはだれでも思うこと」。
 今年は役員選挙の年で、次のように決まりました。
 部長:畠山俊恵、副部長とレクリエーション兼任: 田所良子、会計:田所国江、学習と組織兼任:片岡幸子、会計監査とレクリエーションの補助:津野一美。 
 総会後、交流会に参加してくれていた田村由美さんが女性部に入部しました。  
 12時30分からは美味しい料理を食べながら、またまた話に花が咲きました。約2時間くらいでしたが、楽しいひとときでした。

視覚障害者にとっての自立支援法 パート6
藤原 義朗
 5月に入り、新制度によるサービス利用の請求書が届いた方もおられます。「ありゃ、こんなはずじゃなかった」と驚かれた方もおいでるでしょう。特に施設入所の人ほど、この影響は強く出ています。
 今回は、入所リハビリの問題と医師意見書作成に向けての情報提供書(案)を作成いたしましたのでご覧いただきたいと思います。

A 岐路に立つ視覚障害リハビリ
1.5年以内はリハビリOK
 今、青年学生部の吉岡君が、日本ライトハウスに生活訓練で入所しておられます。日本ライトハウスの生活訓練や、所沢や神戸のあはき訓練課程のように、入所して生活や就労移行支援を受ける場合は、自立支援法では日中は訓練等給付、夜間は介護等給付にあたります。
 その場合は、障害程度区分の認定が判定材料になります。この訓練は、「地域の社会資源の状況により通所が困難な場合」は、入所可能と規定されています。この法の経過措置期間は5年ですので、その間は、県外の施設へ入所することが可能です。
 尚、日本ライトハウスでの生活訓練の内容は、体験された方に書いていただく方がよいので、吉岡君、レポートよろしく願います。

2.5年間、もつのでしょうか
 私が心配しているのは、「障害程度区分によって施設への支援費額が決まる」「低い区分だと収入が下がる」という仕組みです。今回の障害程度区分では、視覚障害者は否該当になるケースもあり得る、また、区分が取れてもきわめて低い区分にしかならないことは前回も述べましたが、それが直接施設収入にこたえてくるのです。
 経過措置中の91名以上の更生施設への3段階の支援額は、重度570単位、中度が395単位、軽度が296単位です。それに、視覚障害加算の13単位をはじめ、いくつかの加算が付くしくみになっています。尚、高知県ではその単位に10円をかけたのが支援費額に相当するしくみになっています。
 それが新体系に移行すると、日中の81名定員以上の機能訓練サービス費が、障害程度区分にかかわらず547単位。夜間サービスの単価は、施設の規模や当直職員人数、重度障害程度区分割合によって、88単位から400単位まで差が出てきます。400単位というのは40名以下の施設で、障害程度区分6が60パーセント以上という施設です。視覚障害専門施設ではあり得ないことです。
 また、この計算方式は今まで「月額計算方式」であったのが、「日割り計算方式」に変わっています。ですから、日・祝日や外泊時の休みを考えると収入単価はグンと低いものになるわけです。
 このように、数字を見ても視覚障害専門施設では運営が厳しいことがうかがえます。
「シリーズ3」で、京都ライトハウスのデイサービスの単価を紹介しましたが、ここでも視覚障害専門はやめて、肢体障害の方を多く迎え入れているのです。
 視覚障害リハビリで輝かしい実績を築いてきた日本ライトハウスも、このような岐路に立たされているのです。

B 医師意見書に情報を
1.特記事項に書いてもらいましょう
 私は、4月の新制度による障害程度区分判定を受けました。
まず、聞き取り調査の調査員はPTの後輩だったので、ちょっとやりにくかったのですが、聞き取りが行われました。「買い物はできますか?掃除はできますか?」など、聴かれました。「シリーズ4」で述べましたように、視覚障害者側が「行けるけど何が安いか分からない」「汚れ落ちが分からない」などと、言わないと特記事項に書かれません。
 その後、「かかりつけ医はどこですか?」と聴かれました。前回も述べましたように、一般の医師では視覚障害の障害を把握した医師意見書は期待できません。眼科医をお勧めします。
 次に、井上奈美子さんと一緒に、医師への情報提供書案を作成いたしましたので、ご紹介します。

2.エピソードでつづる情報提供書

《情報提供書》
 
日頃は、障害者の自立と社会参加のため、ご尽力いただきまして、誠に有難うございます。
 今回、自立支援給付申請の     様について、以下のように、日頃の障害状況について情報提供させていただきますので、医師意見書作成および自立生活や社会参加へのアドバイスとしてご利用いただければ幸いです。 また、相談員におきましても、相談援助の際、必要に応じて先生に、ご教示を仰ぐことがあるかもしれませんが、その節はよろしくお願いいたします。
患者氏名       男・女  生年月日           

@見え方の状態
 例えば夜盲、しゅう明、眼振など。天候や身体状態によっての差、眼圧や義眼の合い具合など。 
A読み書きの状況
例)墨字視力は無いが、点字の触読が遅い。音声パソコン苦手、ワープロ書けても漢字変換が間違いだらけ。など
拡大読書器で10倍の拡大でやっと見えるが遅い。また、外出には持って行けない。など
 (藤原義朗という漢字は、52画もありサインしにくい。)
B外出歩行状況
例)あとの環境状況にもよりますが、視覚障害の場合外出は、環境因子抜きでは語れませんので、環境も含め書き込みます。 バス移動が多いが、路線数が多く、車外放送を流さない。近くは、どぶ川が多く危険。音響信号機はあるが、ピックス方式なので聞き取れず使用できないなど、因子を含めてなるべく具体的なエピソードを添えて書いて下さい。
C生活状況
例)買い物、掃除、特に料理など、失敗例の具体的な話を書き込みます。
  利用している補装具や日常生活用具、生活便利用具
Dその他、利用しているサービス
E自立や社会参加についての環境要素
 ・PTAや町内会の役が廻ってきても援助が得られにくい。ゴミ出しの分別や係りが廻ってきた時やりにくい。 ・子どもが入学して書き物や名前付けが急に多くなった。 ・ベビーカーが押しにくくオンブした方が歩きやすいが、妊娠しているのでオンブしにくい。など
平成  年  月  日
         高知市身体障害者相談員
   藤原義朗  印


3.おわりに
 ある地域の医師会には厚生労働省の役人から、「先生方お忙しいでしょうから、診察時でない時に、意見書を書き上げていただいてかまいませんよ」と、言われたそうです。皆さん、普段診察された先生がここまで、視覚障害者の生活を把握されているでしょうか。どうぞ、井上奈美子さんと藤原までご連絡ください。

僕の白い杖
貞岡 信太郎
 高知市役所の元気いきがい課の窓口で、係官に対して僕の家内は、「私の主人は、だんだんと目が見えなくなって、今では障害者手帳も、すっかり1級となりましたが、もしも私に不都合ができた場合には、主人にはどのような制度が受けられるのでしょうか?。」
 このことが発端となって、平成16年の8月の、とても暑い陽射しのなか、僕は、家内とともに、我が母校でもある、盲学校の中に設けられている、ルミエールを、訪れました。盲学校へは実に40年ぶりの訪問となりましたが建て替えられた校舎の広い玄関をはいると学生当時の思い出が微(かす)かに脳裏をかすめていきました。
広い室内には、視覚障害者の便利グッズが、テーブルの上に沢山陳列されていました。そして、それらのひとつひとつについて、障害者福祉センターから2名と、それに、元気いきがい課から1名の女性の合わせて3名が僕に、丁寧に説明をして下さいました。そのような説明の中で、現在の僕の視力を考えれば白杖は必要だろうとのことで、白杖を買うことになりました。しかし、この杖は市役所の助成金で買うよりも、現金で買うほうが、ずっと安いという矛盾を僕としては、実に腑に落ちない話だなーと不思議な想いを感じました。
僕の外出時には、家内が必ず同伴をしているために、この白杖は、購入後、1度も使うことがなくて、ショーケースの上で、飾り物同然の状態でした。ところが、昨年の10月に、福岡での全視協大会に参加をした折のことですが、宿泊したホテル内では、家内と別々の部屋に引き離されて泊まる破目になったので、僕は、「このホテルでは視覚障害者で満室状態だけに、この場所で白杖を使って歩いたとしてもどなたにも、なんの違和感も与えることもないだろう。」と考えて、白杖を頼りに、ホテル内を散策することにしました。廊下には、分厚いジュウタンが敷き詰められていて、自分の靴音も吸い込まれてしまって、全く何も聞こえません。僕は白杖の先端をこのジュウタンのミミと壁との境に当てながら、静かに歩きはじめました。長い廊下を、「フンフン、なるほど、これは実に安全に行けるぞ。」と内心では、ほくそ笑んでいました。そうした時に廊下の反対側では、2、3人の男女が、談笑をしていました。「あの連中は廊下の反対側だから、突き当たる心配はまずないなー。」と、思いながら前方にズンズンと進んでいました。ところが僕は、突然、どなたかの身体の側面にドンとばかりに、思いっきり、衝突しました。
「あっ、すみません」と思わず声が出ていました。「うわー、ビックリしたなー。こちらこそ、すみません。」と、相手の男性も、平あやまり状態です。「おけがはありませんでしたかねー。」「ご心配はありませんが。不用意に立っていた私がいけなかったのです。すみませんでした。」と言う、相手の声を聞きながら、僕は急遽ホテル内の散策を取りやめて、あわただしく自分の部屋に帰ってきました。
「アアー、驚いた。」あの人が、あそこにいるだなんて、僕には全然知る筈もないし、それに相手の方も、僕が歩いて来る気配を感じる様子もなかったのは、果たしてどうしてだろうかなと思いました。でも、同室の仲間には、先ほどの事件については、どうしても話をすることができませんでした。その翌日は、それぞれの分科会に分かれて参加をしましたが、当然のことですが、普段信頼している家内の誘導も今日ばかりはありません。僕は仕方なく、白杖を頼みとして、会場内を移動していきました。
その時に、どなたかが、杖をタンタンと音をさせながら歩いているではありませんか。僕は、「なるほど、あのように、音をたてながら歩けば、自分の存在を、相手に分かっていただけるのだな。」と理解をしました。
 今回、参加をさせていただいた全視協の福岡大会では、僕にとって、それぞれの分科会での勉強以外でもいろいろなことで、大きな収穫となりました。皆さん方には、この場をお借りして厚く御礼を申し上げます。
現在の僕は、もう一本の短い白杖を常時、携帯していて、人ごみの中を歩く時などには、しっかりと手に持ちます。これは、家内の腕を持って歩いていると、たまに、前から来る方と衝突することがあります。相手側としては「お前さん、手をつないで、イチャイチャしながら、歩くんじゃーないぜー。」などの思いもあってのことなのか、それとも相手側としては、当然のように、僕がどちらかに避けるだろうと判断してのことなのかは、何れにしても相手の気持ちを図り知ることはかないませんが、足早にしかもまっすぐに突進してくる時があります。僕はこのような場合には、素早く家内の後ろに隠れるように、その場をしのいでいるのですが、僕自身が、何かに集中をしている時には、気がつかずに相手と身体が当たることが、しばしばあります。これはお互いに気分が良いとは決していえませんね。このようなことを避ける為にも、
白い杖はとても有効的です。また、障害者用以外の、公衆トイレを使う場合にも、手探りで行くよりも、杖を使えば、清潔でもあるし、相手側に対しても、不信感を与えることもないし、白杖は、とても頼りになります。
いずれにしても、自分の視力に自信が持てなくなった現実を見据えて、歩いて行かなければならなくなった僕がここにいます。
「白杖さん、僕はあなただけを、頼りにしています。どうか終生、僕を大事にして下さいねー。」

菊島和子さんの講演会に参加して(2)
              田元 美紀
  *講演の内容(2)
 イタリアでは、早い時期に盲学校を全廃していて、視覚障害児はすべて統合教育を受けている。見えない子に点字の分かる人が指導しないといけない。前には見えない子には見えない大人が自分の体験を教えることができた。90年代初めに、大学を卒業しないとそのような支援をするアシスタントにはなれないようにした。
 イタリアでは大学に入学するのは易しいが、3割しか卒業できていない。大学の障害児(者)教育課程を履修して卒業すると、すべての障害(盲・ろう・養護学校の対象となる9種類の障害)に総合的に対応できる。大学を卒業しないと、小学生の手助けをするアシスタントにもなれない。
 日本では4年制大学レベルといえば、質的に広く浅くなっている。教員免許状といっても養護学校で教えられるが、専門性を高めるという免許が必要である。
 イタリアでは盲学校があった時代には、電話交換手がメインの職業だった。視覚障害者が交換手の免許を取ったら、国が障害者の優先雇用をしないといけなかった。今はそこまでできなくなっている。今は電話のシステムが変わり、交換手がいなくなってきている。盲学校でトレーニングされても、就職できるとは限らない。
 住宅についても障害者に市・町が住宅を売るための協力をしてもらえる。
 障害者が旅行をしたい場合、ヨーロッパでは国際線の飛行機も無料で乗れたり、1人分の運賃で2人乗れたりする。障害者もかなり気楽に旅行している。日本では公共交通機関の障害割引は完璧ではない。新幹線でも割引は3割しかなく、特急列車は運賃(乗車料金のみ)が半額となるが、それに加算される特急料金は全額自己負担となる。障害者、特に視覚障害者は家にこもりがちだが、みんなが一緒に街に出て存在を見せるべきである。全盲の人で外出している人はイタリアでは多くいる。
 毎年、世界のどこかで国際盲人エスペラント大会が催されている。かなり前向きに活動している様子が現れている。企画の中身も豊富である。「貧しい」といわれる国からも多く参加している。
 ウクライナの人がイスラエルの大会に来たりしているが、自分のお金で来ているのではない。障害者を更に街に出そうとする活動をしている。お金については企業が出したりすることもある。
 エスペラント大会では外国の人々と交流する企画がなされる。ヨーロッパでは結構大会が多く開かれる。大会期間中、エスペランティストは家庭で泊まることも多い。
 国際盲人エスペラント大会に行くと、どこで開くかにもよるが、少ない時でも全体で同伴者、運営の手伝いをする人も含めて70人、その内40人が視覚障害者である。多い時には30ヶ国ぐらいから参加がある。いろいろな国の人が集まり、いろいろな情報を提供する。2003年にも高知の片岡慈仲先生を含めた日本の視覚障害者6、7人を連れて行った(スウェーデンで開催された)。
 昨年にはリトアニアで催され、日本からは
5人参加した。その中、日本人でエスペラントが上手という人ばかりではなかった。これから先、こういう大会に参加し、何十ヶ国の人から情報を得たい。今年の夏にはイタリアのフィレンツェで催されるが、片岡先生も参加されるのではないか?(記録者注:今年には世界エスペラント大会と同時開催となる。なぜなら、イタリアのエスペラント協会の会長が視覚障害者だからである。)
 以前、日本から視覚障害者の参加がなく、
菊島さんだけが研究目的で参加された時には、「手引きの人だけが来ている。日本の盲人を連れて来なさい」と言われたが、ついに2003年にそれを実現させることができた。「こんなに面白いことがある」と視覚障害者に大会のことを知らせた。視覚障害者だから知りたいことがある。個人的な生活のことを話し合える、と。
 今回の講演会には、中途視覚障害の方も来ておられた。日本では中途視覚障害者の率が高い。イタリアでも視覚障害者の比率が高い。盲学校がなくなったが、今でも教員をしている視覚障害者が2,300人がいる。日本では正規の公立の普通学校で教えている視覚障害者は3、4人しかいない。
イタリアでは大学への入学は簡単だが、視覚障害者は比較的遊びに行きにくいので、みんなものすごく真面目に勉強する。無事に卒業する人も多い。正式に卒業して高校の先生になっていることも多い。大学を出ることで価値を認められることが多い(クロアチアも同じである)。
イタリアでは障害児がいると、もう1人正規の教員が付く。正規の教員2人でそのクラスを担当する。障害児を受け入れるための先生の負担は少ない(スウェーデンに比べて)。自閉症や多重人格の子を受け入れるなど、具体的なことを聞いた。
先生になるのは簡単なことではない。知り合いのいろんな視覚障害者の世界で、大学の先生になった例が多い。ノルウェー・スペイン学者、哲学、文学、そこら中の大学には視覚障害の先生も多い。盲学校があった頃には、「盲学校の先生になりなさい」と仕込まれていたのだが、今では盲学校をなくしているので、盲学校の先生はいなくなり、先生といえば普通学校の先生である。
フランスには統合教育がなく、盲学校がある。視覚障害者が先生をするといったら、「盲学校の先生」と押し込められている。
視覚障害者が多く就いている職業のひとつは理学療法士で、日本で言うマッサージ師に近い。病院・診療所に勤めたり、自分で開業したりする。
セルビアのマッサージ師にやってもらった時、日本のマッサージのことを言った。スポーツマッサージのようである。セルビアのマッサージ師はスポーツ関係者が多い。他のヨーロッパのマッサージ師にもスポーツ系の出身者が多く、かなり昔からトレーニングされている。(日本のはヨーロッパのに比べて優しいマッサージである。)ヨーロッパ諸国では、視覚障害者向けのマッサージ学校は日本のような盲学校ではなく、普通学校の中に視覚障害者のクラスがある。
また、コンピューター関係の職業に就く視覚障害者も多い。点字図書館に勤め、点字の校正をしている人もいる。最初の頃のコンピューターは音が出なかったので、全盲の人には使えなかった。その上点字がコンピューター化していたので、「あなたには仕事ができない」と解雇されたりした。最近では音声読み上げ装置、ピンディスプレイもできているので、見えないプログラマーも多い。コンピューター学校にも視覚障害者のクラスがある。
ある一定の仕事をしていたのに、条件が替わっても障害者が雇用されることはほとんどない。「別のセクションでやらせてもらえたら」と言っても時間がかかった。解雇されたらそのまま、という状態だった。コンピューターが速くなったので、オランダ、ドイツでは視覚障害者が失業していった。
弁護士、その他の法律関係の職業に就く視覚障害者もいる。日本でも法律がどんどん変わる。全盲の弁護士にはお知らせを読んでもらうのに秘書がどれだけ必要か。単に法律を知っているだけでなく、人間関係で成り立っている職業なので、人柄のよい秘書がついていく。頼りにされている人がかなりいる。ロシアでは全盲の弁護士に対して弱視の妻が秘書代わりに直接読み聞かせている例がある。大学で法律を教える人もいる。
ヨーロッパでは普通の社会の延長線上で訓練が行われる。北欧では、障害者に対してだけでなく、若い人が社会に出るため大学、高校を卒業した時、就職したり大学に入学したりする前に社会経験をすることもある。その中でいろいろな職業やいろいろな人に接していく。同年代、少し年代が違う人と体験をする。障害者も同じで、トレーニング学校に入る。
ヘルシンキに視覚障害者のための職業訓練校がある。年齢に関係なく、高卒者も中途視覚障害者も受け入れている所もある。コースによるが、2、3年通う学校があり、寮もある。その中では職業に就くための訓練、社会性を持たせるための教育が行われている。
スウェーデン、ノルウェーにもあり、職業だけでなく、障害(者)のことをよく分かっている人が先生として参加している。日本人でノルウェーの教員の資格も取り、向こうの人と結婚した人がいる。日本人がオスロに行って視覚障害者の施設を見学したいと思ったら、ぜひ声をかけて下さい、という人がいる。
スウェーデン盲人連盟にも日本人がいる。その人はかなり長い間向こうに住んでいる人で、アルバイト的な仕事を探していた時、たまたま見入って入った。日本の人名、地名を音訳しなければならない場合(日本から漢字で書いて送られてきた資料、本のタイトルだけでも読まないといけない)、貴重な存在である。そういうネットワークの鍵にしていた。オフィシャルに行って所長さんに会って、とは違う出会いである。日本人はいろんな所にいる。
職業のことでもうひとつ。菊島さんが比較的出会われることがあったのは、音楽、特にピアノや声楽の先生である。自分が歌ったり、演奏したりするだけでなく、盲学校の音楽教室や、街での個人教授をやっている人もいる。
フランスでも、視覚障害者の間で音楽が盛んである。ピアノやオルガンの勉強をする個室がある。生徒の要望に合わせて、学校で楽譜点訳をする(必要に応じて印刷できる)。視覚障害者がカトリック教会堂で音楽を弾くことを職業にしている。1日中大きなホールのような所で入れ代わり立ち代わりピアノやパイプオルガンの練習をしている。
それ以外の特別な職業に就いている視覚障害者は少数である。        続く

エスペラントとはどんな言語か(4)
 Kia lingvo estas Esperanto?    
              田元 美紀
*複数形
 Ni estas laboristoj.
[ニ エスタス ラボリストィ]
 私たちは労働者です。
 Estas tri rug^aj rozoj.
[エスタス トゥリ ルーヂャィ ローゾィ]
 3本の赤いバラがあります。
La instruistoj estas bonaj.
[ラ インストゥルイストィ エスタス 
ボーナィ]その教員たちはよいです。
複数形を作る場合は、語尾に複数を意味する-j(ィ)を付ける。-jは子音なので、アクセントの位置は単数形と変わらない。名詞が複数形になると、それを修飾する形容詞も複数形になる(名詞と形容詞の数の一致、-aj -oj)。形容詞も複数形になることが英語と大いに違う。他の言語ではよくあることである。(形容詞の後に名詞が来ない場合にはつい-jを落としがちになるのでご注意を。)不規則変化をするものはなく、どんな名詞、形容詞でも語尾に-jをつければよい。
名詞には数えられる名詞(可算名詞)と数えられない名詞(不可算名詞)がある。数えられる名詞のみが複数形になる。物質名詞(液体、気体、また固体であっても特定の形のないもの)、抽象名詞{抽象概念を表すもの、amo(愛)、paco(平和)、amikeco(友情)など}、固有名詞は数えられないので複数形にならない。(数えられない名詞であっても、種類を表す場合には複数形になるものもある。)

Vi estas felic^aj. [ヴィ エスタス 
フェリーチャィ]あなた方は幸せです。
viは「あなた」という意味のほかに、「あなた方」という複数の意味にも使われる。viを修飾する補足語felic^ajが複数形なので、主語のviが複数形であることが分かる。三人称複数の代名詞は性に関係なくili{彼ら(は、が)、
彼女ら(は、が)、それら(は、が)}である。

*100までの数
 0:nul[ヌル]またはnulo[ヌーロ]
 1:unu[ウヌ] 2:du[ドゥ]
 3:tri [トゥリ] 4:kvar[クヴァール]
5:kvin[クヴィン]6:ses[セス]
 7:sep[セプ]  8:ok[オク]
 9:nau~[ナゥ] 10:dek[デック]
 11:dek unu[デック ウヌ]
 12:dek du[デック ドゥ]
 20:dudek[ドゥデック]
 21:dudek unu[ドゥデック ウヌ]
 30:tridek[トゥリデック]
 31:tridek unu[トゥリデック ウヌ]
 100:cent[ツェント]
 11以上の数についても、日本語と同じように「10+1」と並べるだけでよい。20は
du(2)とdek(10)をくっつけてdudekと表す。十の位の部分と一の位の部分は切り離す。

  *対格
 Mi skribas leteron. [ミ スクリーバス 
レテーロン]私は手紙を書きます。

 S^i havas dikan libron.
[シュイ ハーヴァス ディーカン 
リーブロン]彼女は分厚い本を持っています。
C^u vi s^atas bongustan mang^aj^on?
[チュ ヴィ シャータス ボングスタン 
マンヂャージョン]
あなたは美味しい食べ物が好きですか。
「〜を」(動詞によっては「〜に」)に当たる言葉を「目的語」といい、語尾に-nを付ける。-nの付いた形を「対格」という。-nの付かない元の形を「主格(名格)」という。名詞が対格になると、それを修飾する形容詞も対格になる(名詞と形容詞の格の一致、-an -on)。もちろん、不規則変化はない。

  *複数の語根の結合と、接尾辞-aj^-
 bongustaはbona(よい)の語根bon-にgust-(味)を付け、形容詞を表す-aを付けた合成語で、「よい」+「味」+「〜の」→「美味しい」の意味になる。このように語根に別の語根を付けて単語を合成することもできる。
c^iel-(空)+arko(弧)→c^ielarko(虹)
kurso(講座)+libro(本)→kursolibro
(講習用書)
 kursolibroの場合、前の語kursoの語尾を除いたkurs-に後ろの語libroを付けると、kurslibroとなり、接合部が子音3文字となって発音しにくくなるので、前の語の語尾をそのまま残して後ろの語を付けてkursolibroとする。
 発音する場合には、語の要素を明らかにするため、接頭辞と語根、語根と語根の間は要素ごとに区切って発音する。(語根と接尾辞、接尾辞と接尾辞の間は続けて発音することが多い。)例えば、c^ielarkoは[チエラルコ]と続けてではなく、[チエルアルコ]と区切って発音する。{但し、samideanoはsam-(同じ)+ide-(考え)+-an-(一員、構成員)+-oの合成語だが、[サミデアーノ]と続けて発音する。なぜなら、「エスペランティスト」の意味で慣用的に使われる語だからである。}
 mang^aj^oはmang^as(食べる)の語根
mang^-に「〜するもの」を意味する接尾辞-aj^-を付け、名詞を表す-o を付けた合成語である。
trink-(飲む)+-aj^-+-o→trinkaj^o(飲み物)
pos^t-(郵便)+-aj^-+-o→pos^taj^o(郵便物)
また、aj^oだけでも「もの」という意味になる。
  
  *代名詞、疑問詞の格変化 
 Mi amas lin.[ミ アーマス リン]
 私は彼を愛し(てい)ます。
 Kion ili faras?[キーオン イーリ ファーラス]彼らは何をし(てい)ますか。
mi、vi、li、s^iなどの代名詞も目的語として使う場合には対格になる(-nが付く。mi→min、vi→vinなど)。また、疑問詞も同じように格変化する(kio→kion、kiu→kiunなど)。

 英語には対格語尾がないため、エスペラントでもその習慣でつい-nを落としがちになるのでご注意を。エスペラントでは目的語に-nが付いているので、主語と目的語を入れ替えてもすぐに区別できる(目的語を先頭に持ってきてもよい)。例えば、Leono mang^as zebron.
(ライオンがシマウマを食べます)の語順を、Zebron mang^as leono.と替えても意味は変わらない。

 あいさつのSaluton!(こんにちは)、Dankon.(ありがとう)、Bonan matenon.(おはようございます)などは、すべて対格である。Saluton!
[Dankon.]は、Mi donacas al vi saluton
[dankon].{あいさつ[感謝]をあなたに贈ります}の略である。Bonan matenon.は、Mi deziras al vi bonan matenon.(よい朝をあなたに望みます)の略である。
 Bonan vesperon. よい夕方(夜)を(あなたに望みます)。→こんばんは。
 Bonan vojag^on.よいご旅行を(あなたに望みます)。→行ってらっしゃい(ませ)。(旅行者を見送る時に使う表現)
*複数対格
S^i havas longajn harojn.
[シュイ ハーヴァス ロンガィン ハーロィン]彼女は長い髪をしています。
 C^u vi amas tiujn infanojn? [チュ ヴィ アーマス ティーウィン インファーノィン]あなたはその子どもたちを愛し(てい)ますか。
Kiajn florojn vi havas?[キーアィン フろーロィン ヴィ ハーヴァス]
 あなたはどんな花を持っていますか。
 目的語が複数のものとなる場合は、-jの付いた複数形に対格語尾-nを付ける。もちろん、名詞と形容詞の数と格は一致する(-ajn -ojn)。また、疑問詞や指示代名詞が複数対格になる場合もある。
 haroは「髪の毛1本」を意味する。髪全体を指す場合には、複数形harojのほか、hararoという合成語でも表現する。-ar-は「集団、集合体」という意味の接尾辞である。ただ集まっているだけでなく、特別の集合体を意味することが多い。
vort-(単語)+-ar-+-o→vortaro(辞書)
arb-(木)+-ar-+-o→arbaro(森)

*クイズ
 次の単語を複数形、対格、複数対格にせよ。
viro(男性)Afis^o(魚)Bseka(乾いた)
              (答えは次号に)

*前号のクイズの答え
形容詞:scienca(科学の、科学的な)、
副詞:science[スツィエンツェ](科学的に)
fino(終わり)
動詞(現在形):amas(愛する)、形容詞:
ama(愛の)           続く

新入会会員 益田さんの紹介
                中平 晃
 皆さん、こんにちは。青学部の中平です。この度は、本会にご入会なさいました益田晃司(ますだ こうじ)さんの紹介をさせていただきます。僕は益田さんとは以前、盲学校の高等部普通科にいたときに、寮で同室だったなど面識があります。
 さて、益田さんの紹介です。益田さんは
30代の男性です。盲学校を卒業され、あはきの免許を取得され、あんまの仕事をしています。趣味は、スポーツ観戦です。守る会で、いろんな人と交流をしたい。野球などのスポーツの最新情報を一緒に話したい。とのことです。
 以上、簡単ではありますが、益田さんの紹介でした。
中平としても、いろんな人と交流できるように、イベントを考えていきます。その際はご協力をお願いいたします。

編集後記
              大堀 正寿
 5月も終わり、6月になりました。6月と言えば梅雨の季節です。でも、今年はゴールデンウィーク終盤以降、天気の悪い日が続いている。本来なら「五月晴れ」「風薫る5月」とさわやかな言葉でつづられる5月が、「梅雨のはしり」と呼ばれる状態になっている。これは、通常なら梅雨前線はまだ本州の南海上にあるのですが、発達した太平洋高気圧の影響で北上しているからだそうです。日照時間を見てみても、九州・四国地方は60%台を割り込んでいます。既に、沖縄・奄美地方は梅雨入りしています。我が四国地方も、そろそろ梅雨入りでしょうか。 



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