みちしるべ
No 208  2010年3月号

目次(ページ内リンク)
障害者制度改革推進会議、ハイブリガイドライン、しっかり前を 向かせる闘いを!  藤原 義朗
第6回 あはき運動交流会報告  永田 征太郎
中・四国交流集会報告文  大野 俊一
全視協中・四国地区交流会での講演会報告  高知県立盲学校  上光 陽子
エコカー体験会報告  片岡 慈仲
ヤッケさんとの交流会を行いました  青年学生部  中平 晃
編集後記  田元 美紀

障害者制度改革推進会議、ハイブリガイドライン、しっかり前を向かせる闘いを!


 ――全視協石川大会期第2回全国委員会より――
             藤原 義朗
 井上事務局長が全国委員として参加の予定でしたが、当日「38度で休む」と、携帯が鳴りました。藤原が執行委員として出席していましたので、「手つな」と併せて報告させていただきます。

1.新事務所
@全視協の会員さんから寄贈の意思が示されている事務所予定地を見学した。駒込の
駅から10分足らずの所で、5階建ての狭いのっぽビルである。家庭用のゆっくりとしたエレベータで上った。点字プリンターなど使用するのには土台をしっかりするなど改築費に225万円の見積もりが出されている。
 今まで新宿のビルで同居していた日本障害者センターや障全協の人たちも一緒に引っ越してくれるのかという質問があった。
田中会長が担当として話をしている。
A贈与税の関係で、法人格取得の準備を全視協は進めている。発足総会予定は来年の名古屋大会になるが、それまでに全国委員会はあと2回である。今回、定款案を示す予定であったが、文章提示が間に合わなかった。
骨子は、次の通りである。
(1)一般社団法人を目指すこと。 
(2)今までの構造を大きく変えないこと。 
(3)執行委員会は理事会に。また幹事会を置くこと。
(4)1年に2回開いている全国委員会の位置付けが大切であるが、全国委員会の決議を理事会で了承し、理事会決議とすること。
(5)代議員総会で決めていたのを社員総会とし、社員である会員さんに参加権を与えていくこと。
定款案の条文化が急がれる。


2.会員拡大
 各県とも頑張って増やしているが、ほとんど同数の退会者が出ている。退会原因としては、大阪の50歳代の会員がこの間3人亡くなられた、など、死亡や病弱になられる方が多くなっている。
 拡大の成果として印象に残ったのは、10年前に青学キャンプに参加された方を誘ったら入った、旅行やクリスマス会を大胆に開き入会に結びつけたなどである。いかに、足を踏み出すかに尽きる。

3.一丸となっての課題
@点字ディスプレイの日常生活用具
 各地の運動で日常生活用具に認定している自治体は増えている。しかし、横浜市のようにまだの所もある。市民に必要性を知らせ、行政に訴えるために、ミニパンフを作っている。藤原の方でデザインしているので、完成したら活用していただきたい。

Aハイブリッドの音
 各地で音の体験会が行われている。特に雪国は深刻だ。青森の藤原さんに聞いたら「そんなの愚問だよ」と言われるくらい雪の音吸収はすごいようだ。
国土交通省のハイブリに関するパブリックコメントに全視協会員からも多数送った。
今後、新車に擬似エンジン音が付けられることになった。しかし、運転手が意図的に音を消したり、既存の車には義務付けがされないなど、逃げ道を作る危険性がある。ガイドラインを見直す必要がある。

B地デジ
 あと1年半になった。三菱に続き、パナソニックでも音声リモコンが販売される。しかし、まだ音の出るところは一部。また低所得世帯へのコンバータ給付も一番安いものであり、視覚障害者には使用しにくい機種らしい。総務省とメーカーに向けた闘いになる。

C弱視
 ロービジョンケアの診療報酬化と身障手帳の要件の改善について、「弱視者の集い」を6月13日に行う。今年の診療報酬改定には点数化は無理みたい。今後、署名も含め、攻めの闘いをしていきたい。

4.福祉
 動き出した障害者制度改革推進会議をきちっと正しく廻していくようにしなければならない。そのために、引き続き障全協の署名は3月いっぱいまで集める。
 住民税非課税世帯には介護サービスと補装具の費用負担が無料になった。そこで、新しい提起として、地域生活支援事業で費用負担を撤廃していくために、各地で要請行動をしていくことを決定した。
 なお、これらの運動の成果は、自立支援裁判の法廷闘争がてこの原理として働いたのは確かである。
 また、全視協として福祉のビジョンを立てていくことを決定した。

5.地域集会
 中四国集会は広島から地方独自の課題を取り上げていけてよかったと感想があった。
今後テーマ別集会として「文化のつどい」を新潟で11月14日に、あはき集会は文化の次の週に行うことになった。

6.手をつなごう
@厚労省福祉交渉
 自立支援法によるヘルパー支給に関して、介護保険のような1単位、1.5単位という縛りのないこと。また区分ごとの標準時間はあくまでも標準であって、柔軟性を持って支給決定してもよいことなどが会議資料として出されている。
 また、地域生活支援事業においても、独自の柔軟性、たとえば、点字本の範囲、デージーやカセット、大活字本など自治体との話で、状況に合うようにしてと話があった。
コミュニケーション支援事業での音訳者派遣の自治体も増え、世の中が動き出してい
ることを実感した。

A学習講演
<新たな障害者政策の動向と題して>
 DPI日本会議の三澤了さんから学んだ。1月12日に第1回の障害者制度改革推進会議が開催され、委員24名中13名が障害者、またその家族で占めていること。8月まで月1〜2回のペースで行うこと。5〜6月頃から12の部会がスタートする予定であることなど語られた。
 印象に残っているのは、かつて社会保障審議会の障害者部会の時など事務局である厚労省側が1時間資料説明をして、あとは、委員が2分くらいずつ発言して終わる、というものであったが、この推進会議は、「次は何のテーマでします」と決まったらそれぞれ文案を作って参加する、というものである。今や、政策力が問われる時代になってきた。インターネットでも見られるので参照されたい。

第6回 あはき運動交流会報告


            永田 征太郎
  1.波乱万丈の旅立ち
 2009年11月22日(日)、その日私はお腹の上で震える携帯電話の振動で目覚めました。それは電話の着信を知らせるもので、電話に出てみると井上先生の声で、「今、どこにおるが?」と聞こえてくるではありませんか。私は深い眠りで意識が朦朧とする中、真夜中に井上先生から電話がかかってくるはずがないなと考えて時間のチェック。6時25分…!「しまった!この時間は既に高知駅に着いている頃では…」そうです、その日私は大阪で行われるあはき運動交流会に参加するため、5時に起きて高知駅7時発の高速バスに乗る予定になっていたのです。前日に夜更かしをして準備していたのが響き、携帯のアラームに即反応したまではよかったけれども、うるさいので布団の中に引きずり込んでいたのでした。そして、何だかんだと言いながら6時50分には高知駅に到着することができました。それまでの約30分間に、私は何と3つのアンビリバボー(奇跡体験)に遭遇したのです!
 まず第一に、井上先生が電話をかけて下さったこと。後から聞いた話によると、高知駅で待ち伏せて見送りをするサプライズのために駅に向かっていたそうですが、その連絡がなければ、そしてあと10分でも電話が遅ければ、私はバスに間に合っていなかったでしょう。そして第2に、私が電話の着信に気付けたこと。前述したように、携帯を布団の中に引きずり込んだにも関わらず気が付けたのは、うまい具合にお腹の上に乗っかっていたからでしょう(さすが私…)。
 さて、目覚めの先制パンチで一気に意識が回復して蒼ざめた私は、この人生26年間でおそらく一番と思えるハイスピードでスーツに着替え、用意していた荷物を引っつかむと、10分足らずで家を飛び出しました。さあ、飛び出したはいいものの、土電では到底間に合わない。タクシーを呼んだところで無理だろう「…。そうだ、城西館に行けば待機のタクシーがいるではないか!と一瞬の内に考えて、早速現地へ。ところが朝の6時半という時間の早さから、まだ待機のタクシーはいませんでした。(こうなったらフロントで呼んで貰わないといけないかなあ…。でも、そんなことしてたら結局終わりだなあ。)と 諦めムードが漂い始めた時、第3の奇跡が…!どこからか客を乗せて城西館まで運んできたタクシーが玄関前に滑り込み、空車になったところをすかさずゲット!「すみませんが、巻きで高知駅にやって下さい。」ということで、タイムリミットの10分前には何食わぬ顔で井上先生の前に参上することができたのでした。そんな大波乱の幕開けで私の一人旅は始まりました。
 何はともあれ、バスに乗ってしまえばこっちのもの。無事に正午前には新大阪に到着したのでした。そこから手引きの担当者に誘導されて集合場所へ。交流会に参加すべく、各地からの参加者が集まっていました。そこから全員で移動し、会場となる東淀川人権文化センターに落ち着きました。
 今回のテーマは「次世代の視覚障害者にあはきのバトンを渡すために」。主催は全日本視覚障害者協議会(全視協)、全国病院・介護マッサージ問題連絡会(病マ連)、全国理療教育研究会(あすなろ会)ということで、全国各地から80名を超す参加者が集まり、2日間に渡って活発な議論が交わされました。

  2.1日目
 1日目は全体会として、講演や基調提案がなされました。開会宣言や主催者代表挨拶があった後、1日目の目玉である上田孝之先生による講演「生き残りのための視覚障害者の経営戦略」がありました。上田先生は元厚生労働省療養指導専門官という立場から、国側としてあはきをどのように考えているのかという参加者の期待が高まっていることが感じられました。
 そもそも上田先生があはきと接点を持つきっかけとなったのは、厚労省に入って最初に担当した「鍼灸裁判」だったそうです。これは、あはき師が柔道整復師のように自由に保険を使いにくいのはおかしいという原告側の訴えでした。その際に被告側として発言することになり、あはきがどのように認識されているのかを知るために、過去の資料などから勉強されたそうです。そして、原告側の訴えに共感を持ち始めた上田先生は、少しでも保険を使いやすくするように改善しようと考えました。
 その一環として取り組んだのが、6ヶ月で計65回しか健康保険が使えないという期間回数制限を撤廃したことでした。しかしながら、その効果については期待通りの効果を上げているとは言えないということでした。保険請求額で見ると、マッサージの平均単価は応療料も含まれていることから1枚約
31,000円、鍼灸は約13,000円、柔整は約9,000円ということで請求額に開きがありますが、取扱い件数で見ると柔整が圧倒的に多いため、年間の推計(平成19年度)で見ると、鍼灸は230億、マッサージは333億、柔整は3377億となっています。先生の印象では、あはき師で保険を取り扱っているのは全体の3分の1以下であり、残りの大多数の人は保険の使い勝手の悪さなどから、充分に活用されていないという話でした。その背景には、国があはきについて保険の取扱いが増えないような政策を以前より行ってきたという事実があるとの指摘でした。
 政権交替という社会の動きがあはきを取り巻く環境にどのような影響を与えるかについては、これから見守っていく必要があるでしょう。1つ懸念されることとして、民主党のマニフェストに書かれている医療政策の詳細版には、あはきや柔整が統合医療の取組みの中で実例を挙げながら書かれているものの、音楽やハーブ・食事療法などと同レベルで扱われているようです。このことからも分かるように、あはきをれっきとした治療法として社会に認識させるためには、行政に対して我々の声を届けていく必要があります。後々の参加者の感想などからも覗えましたが、おそらく企画の段階から期待されていたであろう、現在のあはき業界に対してずばずば切り込んでくるというよりは、自身の功績を振り返りつつ、国の姿勢を批判するというような講演内容でした。
 講演に引き続き、全視協あはき委員長の東郷先生より、「あはき運動の到達点と問題提起」というタイトルで基調提案がなされました。テーマは「思案、私案、試案」。思案の末に辿り着いた私案として出された試案ということで、次の7項目が提案され、2日間に渡る議論の方向性が提示されました。
 (1)国民の願いに応えて知識・技術を磨く
 (2)柔整業者に法令を遵守させる
 (3)「無免許なくせ」の世論を盛り上げる
 (4)雇用も開業も、社会保険を使い尽す
 (5)「入りやすい治療院とは」を究める
 (6)制度の最大活用
 (7)合い言葉は、「次世代の視覚障害者にあはきのバトンをつなげ」

  3.2日目
 2日目の午前中は、テーマごとに3つの分科会に分かれ、それぞれの会で討議がなされました。第1分科会は「施術所の保険適用」について、第2分科会は「サラリーマンあはき師(病院、介護施設、ヘルスキーパー)」について、第3分科会は「あはき運動(無免許、柔整、養成施設)」についてというテーマで、私は第3分科会に参加しました。そこでは、主に次の2点が話題となりました。
 
(1)各地区のあはき運動の実態と
効果について
 参加者の発言で、各地域において無免許業者を取り締まるよう保健所や警察署に働きかけているが、どこも腰が重いという意見が聞かれました。その言い分として、マッサージの定義がないから取り締まれないということが多いようですが、そもそも定義の規定は法律上でなされるものではなく、行政によって具体的解釈がなされなければならないものです。無免許業者の取り締まりを保健所等に訴える際、単に「無免許だから取り締まるように」と訴えるだけでは漠然としていて効果が上がらないので、「広告違反がないか」や「専用の施術スペースが適切に確保されているか」など、明らかに行政指導の対象となる事項をきっかけに持ち出すことによって、具体的な調査につなげていくよう働きかけていくことが必要との助言もありました。運動の成果としては、マッサージを行うには免許が必要であるという内容の宣伝について、自治体の広報誌などの各種メディアを通じて拡がりつつあるという報告もありました。

  (2)伊香保温泉でのあはき運動に
ついて
 分科会の助言者であり、全視協あはき委員会で無免許問題を担当している中井さんより、伊香保温泉(群馬)におけるあはき運動の取組みについて報告がありました。中井さんの調査によると、伊香保のホテルで無資格者がいないのはわずかに1ヶ所。伊香保では、旅館協同組合、観光協会、マッサージ組合の3団体が共同で1枚4千円(40分)のチケットが販売されており、その内の1割がホテルの取分となり、その一部が3団体に配分されるそうです。問題は、そこでの実態として、無資格者にもチケットが販売されているようです。この実態を打開すべく、まず何人かの無資格者を取り締まり、それを朝日新聞の記事にする手筈が整っているということでした。そして、その記事を携えて3団体と交渉し、無資格者を使わないように協定を結ばせたいということでした。これを実現させることにより、年金のみに頼って生活している視覚障害者にも職が確保できます。地方における取組みの1例として、更に拡がっていくことを期待したいと思いました。
 2日目の午後は再び全体会となり、各運営者による分科会報告、基調提案の討論がなされました。
 最後に、討論のまとめとして東郷先生より、「今回はそれぞれの立場から報告があり、議論編として深めることができた。今後はそれぞれの分野で新たな活動に取り組み、次回はその結果を報告し合える実践編としたい。」という言葉で締めくくられました。

  4. 終わりに
 今回の交流会参加を通して、多くの収穫がありました。
 1つは、県外に出てみて、全視協の中でも高知県の守る会の活動が高く評価されているということを実感できたことです。初日の夕食交流会などで自己紹介した際、「高知県に赴任してよかったねえ。あそこは守る会の活動も精力的だからねえ。」という反応が多く、私たちの活動が全国的に広く認知されていることを実感しました。
 そして、この2日間を通じて多くの新たな出会いや再会を果たすことができました。高知県の新たな顔の一つになれるよう、今後もこのような会を通じて更に人脈のネットワークを拡げていきたいと考えています。
 最後に、このような機会を与えて下さった守る会の皆様に感謝いたします。

中・四国交流集会報告文


             大野 俊一
 まず初めに今回の会を開催するにあたり事前に協力して下さいました関係者の皆さん、当日ボランティアで尽力して下さいました高知福祉専門学校・高知県立盲学校の皆さんに心よりお礼申し上げます。ありがとうございました。
また、はるばる遠い高知にお越し下さいました県外参加者の皆さん、ありがとうございました。
 今回の会に参加して下さった県内外の参加者の皆さん、2日間満足して頂いたでしょうか。1日目の学習会・交流会は、楽しかったですか。2日目のハイブリットカー体験どうでしたか。音の静かさに驚きませんでしたか。
私たち実行委員は、3ヶ月前から実行委員会を立ち上げそれぞれの役割を決め準備してきました。学習係は、素材選びから会場設営・講師の方の選定が大変だったと思います。ホテル選びから会場間の安全を考える係も頑張ってくれました。
私は実行委員の一人としてこの会は、高知でしかなしえなかった高知らしい会だったと思っています。役員の皆さん、レク部員の皆さんが実行委員会の皆さん、いや守る会そのものの団結力・行動力に改めて驚かされました。
私は、だれがなんと言おうとも、今回は大成功だったと思います。皆さん本当にありがとうございました。

全視協中国・四国地区交流会での講演会 報告


高知県立盲学校  上光 陽子
全視協中国・四国地区交流会での講演会は 川崎医療福祉大学・感覚矯正学科教授、田淵昭夫先生による「ロービジョンケアの診療報酬化と身体障害者手帳基準の改善」というテーマで、約2時間にわたって(1)ロービジョンケア診療報酬、(2)身体障害認定基準の2点を柱にお話を伺いました。
 田淵先生は日本ロービジョン学会の理事長でもあり、日本のロービジョンケア普及のために尽力されている方で、ここ近年、眼科学会やロービジョン学会でもロービジョンケアに対する関心が高まり、これには診療報酬の制度化が近道だということで、2009年9月には厚労省でのヒアリングが行われた、ということからお話が始まりました。
 ここでいうロービジョンケアとは「視覚障害者へのリハビリテーションで、保有能力を最大限に活用してQOL(生活の質)の向上を目指すケア」であり、眼科という医療の現場においてロービジョンケアを行うことは、より多くの視覚障害者・児にケアをすることができるという意義があります。特に以前は、治療が困難とされた患者さんはケアの手だてがなく混乱に陥り、長い時間を過ごすことになり、有職者の多くが職を失うという現状がありました。
 現在では志のある医師のもと、医療の領域でロービジョンケアが行われ、早い時期での日常生活訓練や職業訓練が可能になってきてはいますが、まだまだこのような眼科は少ないのが現状です。
 また、米国眼科学会が提唱しているロービジョンケアでの眼科医のレベル(Smart Sight スマートサイト)を日本に照らし合わせると (1)レベル1 すべての眼科医(視覚障害に関する情報提供できるもの)は、13,000、(2)レベル2 視覚的補助具などの選択や訓練を行うことのできる「ロービジョン認定医」は約150施設、
(3)包括的リハビリテーションができる「ロービジョン眼科医」は約20施設と、レベル2と3の眼科医が不足しています。
このようにロービジョンケアを行う眼科医が少ない理由は、診療に長い時間がかかるにも関わらず診療報酬として請求できないことがあげられますが、視覚障害者は164万人に達し今後増加が予想されることから、日本眼科学会は厚生労働省に4年前から「ロービジョン指導管理料とロービジョン訓練」の新規採用を申請しているということです。
この概要は、視覚障害者のQOLの向上、社会的・経済自立を目標とし、指導管理料
480点(年間2回)、訓練1回180点
(1日2回まで)、訓練には国家資格を有した者が当たり、認定された研修会を受講し、専門性の維持向上を図る必要があるとされています。この研修会に関しては国立リハビリテーションセンターでのドクターへの講習会の充実により、レベル3のドクターの増加が望まれているということでした。
 とりわけ、現状における「リハビリを受けることができなくて医療を受けている患者さんたちの医療費」は、ロービジョンケアの診療報酬化によって9億円削減できるという試算は、最近話題となっている「視覚障害の社会的コスト(日本眼科医学会「日本の眼科 第80巻−6号」平尾による)と関連し、「エビデンスにもとづく医療」としてのトピックでした。
 これは視覚障害者160万人で換算した場合、(1)医療費や介護料など医療費は1兆3400億円、(2)視覚障害による生産性の低下やケアのコストが1兆5800億円、(3)視覚障害によるQOLの低下に関わるもの5兆8600億円と、視覚障害に関わる全体のコストが約9兆円近くかかるという試算です。従来の日本ではあまり取り上げられることのなかった問題ですが、昨今の政治的な状況と絡め、視覚障害者個々が受け止めておかなければならない問題だということを感じました。
 2点目の身体障害者認定基準に関しては、まず「視野の問題」について、視野8方向の角度の和を正常と比較する、視能率による損失率(A.M.A.スコア)は、下方向の見えにくさと上方向の見えにくさが同等に評価されているなど、生活の不自由さを反映していないことに比べ、中心30度と下半分の視野に倍の比重が置かれる「エスターマン能力障害スコア」の有効性や、日本とアメリカの視損率の求め方の違いなどの説明があり、より患者さんの見えにくさを正確に表現できる評価が望ましいとのことでした。
 「その他の問題」としては補装具、とくに遮光眼鏡給付について、あらゆる視覚障害は「羞明(まぶしさ)」を伴うことが知られているにもかかわらず、給付対象疾患は「網膜色素変性症、白子症、先天無虹彩、錘体杆体ジストロフィー」の4疾患に限られていることから、処方に際しては、(1)身体障害者手帳を有する、(2)羞明がある、(3)指定医が認定する、ことに加え@文字の明確化、A流涙がなくなる、B暗順応が早くなる、Cまぶしさの軽減などのチェック項目の必要性があげられました。

最後に、田淵先生のお話を聞きながら特に感じたのは、視覚障害者を取り巻く世界の変化でした。日本の視覚障害者、特に中途視覚障害者は長く病気の治療・治癒もままならず、かつ生活全般の不便を抱えながら、日々を送らなければならない現実を突きつけられてきました。そして、このことに目が向けられてこなかったという問題がありました。特に医療の領域とは、病気が治らなければそこで縁が切れてしまうという状況でしたが、日常生活訓練だけでなく、教育・心理面でのケアも含めた包括的リハビリテーションを実践していこうという志のある眼科の医師が少しずつ増えているということは、喜ぶべきことでしょう。
ここ何年かの医療・福祉を取り巻く政治のあり方には、障害があるなしに関わらず皆大きな失望を感じていたと思いますが、患者や障害者に共感性をもってケアしていこう、そしてそのための手段を法制化させようとする医療の側からのアプローチは、長年にわたる当事者の声や運動の結果だと思います。
私たちはこの流れを冷静に見極め、当事者でなければ分からない思いや意見を出し続け、医療の側と連携を保ち、視覚障害者にとってよりよい状況を作り出していく必要があると感じました。

【参加者の質問】
1.ロービジョンケアに関して
(1)ロービジョンケアの対象者として、高次脳機能障害などの視覚認知面はどうなるのか:視野など視機能面での障害が証明できればケアの対象となる。ただ、視覚では身体障害者手帳が出ないので、神経科領域で出してもらうことが望ましい。
(2)眼科での治療からロービジョンケアへの移行期とはどの時点と考えるのか。:移行というより並行して行うことが望ましい。(例えば「見えやすい方法を見つける」というアプローチはロービジョンケアと考えられる)また、周辺にいる介護者などにどのようにしたらよいのかを指導するのもロービジョンケアである。
(3)視覚障害リハビリテーション科について日本での設置が望まれるが…:ドイツでは新任の医師はロービジョンケアを行う医師のもとで学んでおり、日本でも医師養成のカリキュラムの中に入るであろうし、すでにORTのカリキュラムには入っている。
(4)視覚障害になって長期間が経過してもロービジョンケアの対象になるのか。:その人の目的があれば対象となる。

2.身体障害者認定基準について
(1)夜盲・眼球振とうの評価基準について:両方とも基準はなく、視力で評価するのみであり、ADL やQOLでの評価は始まったばかりである。
(2)中心視野がなく、周辺視野のみで、ひどい羞明がある場合の評価基準について:現状の認定基準では視力中心の評価となる。

エコカー体験会報告


片岡 慈仲
 全視協中四国交流会の最後のプログラムとして、11日朝10時から11時過ぎまで、エコカーの静音性体験会が行われた。
 ハイブリッド車や電気自動車は、低速走行時にほとんどエンジン音がせず、視覚障害者がその接近を知ることが難しいという大変危険な問題がある。
 この体験会は、コンフォートホテル周辺の路上で、トヨタのハイブリッド車「プリウス」、三菱の電気自動車「アイミーブ」、常用車としてトヨタ「カローラ」、エンジン音の大きいディーゼル車の日産「シビリアン」(太陽号)の計4台を使って行い、更に、「ユビキタス・コミュニケーター」を使っての実験など、これまでの各地での体験会とは異なる特徴を持ったものであった。
 参加者は、愛媛、岡山、広島、福岡、高知など30名以上に達した。また、この体験会に対して、トヨタ・三菱の販売店(エコカーとその運転手を派遣)、ユビキタス・ネットワーキング研究所(東京から2名の職員を派遣)、県警(一般道路上での実験を内諾)、高知福祉専門学校(学生3名をボランティアとして派遣)、県障害保健福祉課(騒音器を使っての測定など)、コンフォートホテル(体験会の反省会と閉会式にロビーを提供)など多くの方々がご協力して下さった。
 この4台の車をコンフォートホテル前の騒音の激しい国道と、同じホテル裏の静かな道路とで、低速(時速10キロ)で順次走らせ、その通過音を確認できるかを検証した。その結果、国道はおろか、ホテル裏の静かな道路でさえプリウスとアイミーブの通過音を確認することはできなかった。
 「ユビキタス・システム」とは、東大の坂村健先生や全視協の長谷川貞夫先生らが研究しているシステムで、例えば、微弱な電波を発信するICタグを点字ブロックに埋め込んでおき、視覚障害者がユビキタス・コミュニケーター(受信機)を持ってそこに近づくと、その道路に関する情報が得られるという使い方ができるものである。今回はこのICタグをエコカーに付け、私たちが受信機を持ってそのエコカーの接近を感知できるかという実験であった。
 プリウスやアイミーブが近づくと、メロディーや音声で接近を知らせてくれたが、どの方向からの接近か、また、自分のすぐそばのレーンなのか、向こう側のレーンなのかの区別はつかなかった。
 次に、擬似音の体験を行った。
 私たちはプリウスやアイミーブから擬似音を出しながら道路を走らせて、その擬似音で接近が分かるかを実験したかったが、国土交通省の許可が出なかったため、やむを得ず、パソコンに繋いだスピーカーから擬似音を出してホテルのロビーでそれを聞くこととせざるを得なかった。
 擬似音の種類はメロディー音、ピーッという発信音、エンジン音であったが、参加者の感想はエンジン音がよいという意見が多かった。
 最後に、反省会で出された主な意見を列記する。
 「プリウスやアイミーブの実際の走行音を聞きたかった」(この意見は逆に、これらエコカーの走行音は道路上ではほとんど聞こえず、その接近に気付くことができないということを示している)ユビキタス・コミュニケーターについては、「受信機を持っていなければ分からないのでは、例えば、外出の際持って行くのを忘れることもある」「接近は分かっても方向性や距離感が分からない」「タクシーを見分けたり、バスロケーションシステムの替わりとして使ったりできないか?」などの意見が出された。

ヤッケさんとの交流会を行いました


       青年学生部  中平 晃
 1月17日(日)11時〜17時、旭の高知市障害者福祉センターの調理室で、スウェーデンからの留学生のヤッケさんとの交流会を行いました。参加者は16名。
 当日は調理の前に、障害者福祉センターの近所のマルナカへヤッケさんを含む6名ぐらいで食材を買出しに行きました。その間に調理室では調理器具や食器の準備です。
 自己紹介を行い、寄せ鍋、中華鍋、キムチ鍋それぞれを担当する4班に分かれて調理開始です。私のいた班は寄せ鍋担当です。私は野菜を洗い、あと豆腐を包丁で切りました。
寄せ鍋ができたのでさっそくいただきます。いろいろな食材の味が出ていて、おいしくいただきました。担当した鍋以外も食べていいので、他の鍋もいただきました。
中華鍋はマルナカで購入したモチ餃子がもちもちした食感で味もよく、おいしくいただきました。最後にラーメンを入れていました。
キムチ鍋はやはり豚肉があいますね。後からくる辛さが効いていました。最後にうどんも入れておいしくいただきました。
 鍋の後は紅白に分かれてクイズ大会です。ヤッケさんにも分かるクイズも織り交ぜ、まずは口頭でクイズ出題。その後はイントロクイズ。接戦でなかなか盛り上がりました。
 最後はヤッケさんとのお話タイム。ヤッケさんからスウェーデンの話をいろいろと聞いたり、こちらから質問したり、活発なやりとりになりました。スウェーデンの文化についてや、留学先を高知にした理由、ヤッケさん個人のこと、その他さまざまな話ができていい経験になりました。

編集後記


             田元 美紀
 次第に寒さが緩み、春がそこまで近づいてきました。しかし、天気が変わりやすい時期でもあります。
 昨年8月15日、高知県盲ろう者友の会設立準備会が発足しました。その「準備会」の説明会が4月24日(土)、旭の障害者福祉センターで開かれることが決まりました。同会の会長、高橋万里さんが講演をされます。盲ろう者について多くの方々が理解して下さることを願い、この説明会への参加を呼びかけています。「守る会」の関係者が1人でも多く参加して下されば幸いです。
 これから入学、就職、転勤などで引っ越しの多い季節になります。もし住所などに変更がありましたら、できるだけ早く編集部までお知らせ願います。



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