みちしるべ
第245号

目次(ページ内リンク)
5月の全視協神奈川大会に参加しませんか  井上 芳史
「あはき学習会(2016)」の報告と現状  あはき対策部 浜口 誠一
まちづくり集会in千葉  井上 奈美子
情報と行動が命を救う  藤原 義朗
第13回あはき運動交流会(岡山大会)参加報告  あはき対策部 生田 行信
第13回あはき運動交流会(岡山大会)に参加しての感想  高知県立盲学校理療科 教諭 大久保充
森林活動の集いに参加して  堀見 篤子
「共生する社会を目指す講演会」に参加して  大阪 竹島 恭子
おいしい・たのしい・うつくしい室戸を満喫  一柳 恵子
私の戦中・戦後 [後編]  小澤 幸泉
高速バスのチケット購入について 〜こんな方法もありますよ〜  畠山 俊惠
ちょっと一言 「それからの蜘蛛の糸」  有光 勲
編集後記

5月の全視協神奈川大会に参加しませんか


井上 芳史
2月11日〜12日と全視協全国委員会、13日には手をつなごう要請行動が行われ
、高知からは井上・藤原が参加しました。
 全国委員会の参加組織は24組織中20組織(北海道・山梨・奈良・広島)でした

 1.全視協第33回神奈川大会:
5月27日(土)〜28日(日)に行われる神奈川大会ですが、静岡県の湯河原で行
われます。箱根と熱海の間にあり、両者の良いところを持っており、ホテルには露天
風呂もあってくつろげる交流会になると思います。27日は記念講演として宇都宮健
児弁護士(都知事に立候補された方)、分科会として街づくり・老人施設・図書館・
介助ロボットなど、夜は結成50周年記念交流会。
28日は分科会として地域での移動と動向援護・代読代筆問題など、歌声・フロアー
からの発言など50周年の感動的な交流集会になると思います。守る会からも補助が
出ますのでみんなで参加しましょう!参加してみたい方は3月末までに連絡をお願い
します。
 2.聞こえる車両接近音:
全視協は10年ほど前から電気自動車やハイブリッド車に音を出して存在を知らせる
装置を義務化する運動を行っていました。新型車は2018年3月から、販売されて
いる全ての静音車は2020年10月から車両接近通報装置が義務化されます。
 3.よい方の目で視覚障害の等級を目指して:現行では「両眼の視力の和」で等級
が定められています。1月23日に学識経験者を交えた「視覚障害の認定基準に関す
る検討会」が開催されました。点民2月号に掲載されていますが、2級の基準案では
0.02以上で0.03以下、3級は0.04以上で0.07以下となっており、現
行では0.04が重度障害と軽度障害の境目となっています。第2回検討会以後、こ
のことについて検証していく予定です。
 4.視覚障害者あマ指職域優先を定めたあはき法19条堅持:
あはき法19条で「視覚障害者であるあん摩マッサージ指圧師の生計の維持が著しく
困難とならないようにするために必要があると認めるときにはあマ指師養成学校を認
可しないことができる」と定められています。平成医療学園はあマ指師養成学校認定
申請を国が非認定としたことを不服として、その取り消しを求める訴訟を地裁に起こ
しました。その結果によっては視覚障害あマ指師が失職、同職域から締め出される恐
れがあります。今後、裁判の傍聴・裁判官に対する要請はがき・署名・カンパなどに
取り組んでいきます。
 5.手をつなごう要請行動:
NHKは障害者雇用率を微妙に達成していますが、2017年度にも視覚障害者を2名
採用する。テロップや外国人の日本語字幕スーパーなどを副音声で流してほしいと要
望しました。技術的にも含めて検討していきたいと返答がありました。視聴者からの
ご意見や感想は「ふれあいセンター」に電話するとデーター化され、全職員が閲覧で
きるようになるそうです。今回の要請行動の成果としては老人施設に入所していても
同行援護サービスが利用できることになったことです。
 次回の全国委員会は9月17日(日)〜18日(祝)、手をつなごう要請行動は1
9日(火)です。国に要求したいことがありましたら正岡自治体等対策部長に連絡を
お願いします。

「あはき学習会(2016)」の報告と現状


      あはき対策部  浜口 誠一
 遅くなりましたが、11月27日(日)に急遽おこないました学習会の報告と以後
の状況について説明します。
 昨年夏、7月ごろ、「あん摩・マッサージ・指圧師の養成学校の設置申請が非認定
(認められない)になったことを不服として、裁判になった。鍼灸のように学校が沢
山出来たら大変。」また、「無免許マッサージ対策で少し動きがある。」などの情報
が伝わって来ました。何かしなければいけないとは思うものの、県外のことでもある
し、様子を見ながら考えよう。など、「指示待ち」を決め込もうとしたところへ、裁
判が始まってみれば「これはとんでもない!」との情報が飛び込んできました。
 そこで、「あはき法の危機と視覚障害者の仕事を守る」学習会を、講師に東郷進氏
(全視協あはき対策責任者)を東京から招いて、小高坂更生センターで行いました。
また、「公正裁判要請書」の大型はがきの普及と送付を行います。
 学習会は、雨模様のなか、15名参加でかなり難しい内容でしたが、楽しく有意義
に勉強できたと思います。
 さて、内容です。
 まず、あん摩・マッサージ・指圧師は業務、資格、免許、施術所などを決めた法律
(「あはき法」と略)があって、身分が守られていること。その中に、
 当分の間、文部科学大臣又は厚生労働大臣は、あん摩マッサージ指圧師の総数のう
ちに視覚障害者以外の者が占める割合、その他の事情を勘案して、視覚障害者である
あん摩マッサージ指圧師の生計の維持が著しく困難とならないようにするため必要が
あると認めるときは、学校又は養成施設で視覚障害者以外の者を教育し、又は養成す
るものについての認定の承認をしないことができる。認定をしない処分をしようとす
るときは、あらかじめ、審議会の意見を聴かなければならない。(かなり略)
 これが、「第19条」で、昭和39年から全て「非認定」とされてきたこと。
 今回、これを憲法違反として裁判が起こされていること。
 原告は、学校法人平成医療学園など4校(代表理事 岸野雅方)でインターネット
などではとかくの噂もあるとのこと。被告は、国(法務大臣)です。
 訴えの趣旨は、
@あはき法第19条は、憲法第22条(職業選択の自由)に反しており、違憲・無効であ
り、これを理由とした非認定処分は無効であり、取り消されなければならない。また
、憲法第31条(適正手続きの保障)にも違反している。
A訴訟費用は国の負担とする。
 学習会以後に、憲法第13条(幸福追求権)が個人だけではなく法人にもあるという
判例もある、というのが加えられている。
 視覚障害者の生活はより困難になってはいても、「生計の維持が著しく改善」され
てなどいない、厳しい現実があること。
 もし、裁判で国が負けるようなことになれば、学校が100以上も出来、柔整師や
鍼灸師の増加と同じように毎年5・6千人も増え続けて激烈な競争にさらされるであ
ろうことは必定であること。結果、免許の価値がほとんどなくなるに等しくなる。
 また、無免許業者が減るという、うまい話も怪しいこと。
など説明されました。
 特に、裁判では私たちは当事者ではないため、日程の連絡、書面の閲覧などで何の
情報も与えられず、さまざまな手段で入手しなければならないことでの別の大変さが
あることなども分かりました。
 しかし、裁判には裁判官の心証というものがあり、視覚障害者、「あはき師」の実
情を訴えていくという方法を提起されました。
 最後に、無免許対策として、
「医業類似行為業に関する指導について」(医政医発0209第2号、平成28年2月9日)
が出されており、広告違反を見つけた場合、写真などに撮り保険所や消費生活センタ
ーなどに持ち込んで積極的に活用していくことが大切だと説明されました。
 私自身は、国民の職業選択の自由はあっても、金儲けのため人から利益を吸い上げ
る自由などありえない、と思ったことでした。

 以上、法律に関係することや「あはき」の専門的なことでもありますので、かいつ
まんで書いたつもりです。下に要請文を乗せておきますが、大変大事なことだと私は
思いますので、電話などで直接お話をさせていただこうと考えています。
また、裁判長宛に「要請文」を送ることになりましたので、必ず送っていただける方
に届けますので、是非、協力してください。お願いします。

公正裁判要請書 
 あはき法19条の制定から52年。未だ、視覚障害者があん摩等職種に依存しなければ
ならない状況に何ら変わりはありません。基礎年金制度が出来ても、手当を合わせた
所得保障水準の抜本的引き上げには至りませんでした。
 事実は深刻であり、無免許マッサージ業者の野放し、柔整師による違法なマッサー
ジ行為の影響で、あはき業者の生活は年々困窮の度を増しています。
 あん摩マッサージ指圧師養成施設の新設を認めないで下さい。視覚障害者を見殺し
にしないでください。私たちは、この仕事を通じて社会に貢献したいのです。このバ
トンを次世代の視覚障害者に渡したいのです。

まちづくり集会in千葉


井上 奈美子
 12月10日・11日メイプルイン幕張にて開催。参加者はボランティアも含め90名。
○代表理事 田中章治さんの挨拶
 1967年の全視協結成以来、視覚障害者の安心、安全な歩行、移動について真正面か
ら取り組んできました。今年8月15日地下鉄銀座線青山1丁目駅の転落事故、10月16日
には近鉄大阪線河内国分駅の転落事故が起きています。私たちにとって安心、安全な
落ちないホームが、今年ほど大きくクローズアップされた年はありません。私たちの
働きかけにより、国交省も少しずつ変化が見られます。駅員+警備員で視覚障害者等
の安全を確保する、ホーム上の対策が講じられようとしています。ホームドアについ
ても東京メトロに対して、現地を見て危険だと確認したうえで申し入れをしました。
結果ホームドアの設置計画を前倒しにするという成果も出ました。
 静音車対策の前進、国交省は10月7日、国連の協定規則に則して2018年3月から全て
の新車に車両接近通報装置搭載を義務化する奨励の改正を行いました。このように私
たちの運動は着実に進んでいます。しかし、私たちの安心、安全なまちにするために
、運動はまだまだ不十分、もっともっと強めて行きましょう。

○視覚障害者の安全な歩行と自転車と題して、(株)三井住友トラスト基礎研究所 古
倉宗治さんの講演がありました。
 自転車は昭和35年制定の交通法により、車両として車道を通交する義務が課せられ
てきました。しかし、悲惨な交通事故の激増で、1970年に交通法の改正が行われ、例
外的かつ緊急避難的に自転車の歩道通行が認められました。それ以来、「歩行者が危
なそうだ」との主観的観点から、幅の広い歩道の新設等が行われ、あたかも歩道通行
が原則であるかのごとき環境整備と国民心理が出来上がったのです。
 1990年代の米国では、国民の健康増進、ガソリン使用の抑制の観点から、自転車の
利用促進を強力に推進するため、綿密な調査を行い、自転車は歩道のほうが危険であ
り車道を推奨する方向を打ちだしました。このような世界の流れを受け、わが国でも
2007年に自転車安全利用5則が基本方針として出されました。「自転車は車道が原則
、歩道は例外」となりました。これを受けて2016年7月「安全で快適な自転車利用環
境の創出ガイドライン」により本格的に国レベルで、自転車の走行空間を車道にネッ
トワークで作ることが打ち出されました。国民の意識や、環境の整備の課題など多く
の課題があります。
 国レベルで自転車の車道通行が本格推進されていますが、少数の都市、一部の路線
のみでの整備に限られています。川崎市や立川市では、自転車の車道走行が半数に増
えていますがまだまだ少ないです。
 法律で、自転車はクルマと同じ車両に位置づけられ、原則車道の左側の端を通行す
ることが義務づけられています。車道通行は危険と思われていますが、自転車事故は
車道走行より、歩道走行に由来する方が多いとみられ、交差点も含め歩道通交は自転
車にとってきわめて危険です。自転車利用者にルールを守ってもらい、自転車利用者
、歩行者ともに安全な移動ができるように勧めていかなければなりません。自転車利
用者の怖いという恐怖心を取り除き、法を守るという意識を高めていくこと、車道通
行を支援する広報啓発がカギとなります。また、道路整備においても、自転車専用レ
ーンの整備を広めていくことも重要です。
 自転車は歩道を通行することが例外的に認められています。歩道通行ができる条件
は、歩道通行可の標識がある場合。70歳以上。幼児児童。工事等で止む負えない場合

 歩道通行できる場合の条件。たえず徐行(大人の速足程度)すること、および、歩
行者の妨げになる場合は、一旦停止する。
 歩行者と自転車の事故は、警察に通報せず、泣き寝入りしていることが多く、歩道
通行が危険と認知してもらうためにも、白杖が折れたような時など、警察に通報する
ことも大切です。
 安全な歩道にするためには、放置自転車の撤去や駐輪場の整備なども重要です。
 全国に自転車安全条例がありますが、そのほとんどがルール厳守、講習会、保険加
入の努力義務など、抽象的なものが多い、しっかりした義務化が課題です。
 安全な自転車利用についての提言。
 @自転車が対立するものでなく、共同し車道通行してもらうよう推進する。車道へ
の自転車空間の確保と、恐怖感をなくすため、道路現場での自転車のサポートしても
らう。
 A「歩行者・障害者>自転車>クルマ」と安全の序列を明確にする。
 B車道走行が、自転車、歩行者双方にメリットがあることの、広報啓発が必要。
 C自転車事故の発生場所や形態の特性を知ること。
 D視覚障害者が危険になっている実態を明確に国民に示し、自転車や行政の意識改
善を目指すことが重要。
 まだまだ認知されていないのが現状で、今後多くの人に知らせていくことが、私た
ちの安全な歩行につながると感じました。
続いて、山城寛治さんより、視覚障害者が安全に歩行移動できるまちづくりは「落ち
る、ぶつかる、躓く、迷う」をなくしていく運動と、基調報告がありました。
 神奈川、大阪。福岡、千葉のレポート発表等が行われました。
 懇親会では、各県の出し物があり、福岡に次いで高知が二番目でした。高知のまち
づくりについて、長時間にわたる夏の意見交換会のことなど話しました。千葉の松川
さんのアコーディオン演奏、東京の西原さんの「ヨイトマケの唄」の熱唱等楽しい時
間を過ごしました。
 分科会「JR千葉駅点検」、二日目は、2016年11月20日に新装開業した千葉駅の点検
に出かけました。北風の冷たい中、幕張本郷駅に向かい、早速駅ホームの点字ブロッ
クに、内方線が無い等不備を見つけました。さてさて、新しい千葉駅はと期待をしな
がら千葉駅に向かいました。
 最初に1・2番、3・4番ホームの端から端まで歩き、点検項目に沿って確認していき
ました。ホーム部分はまだ工事中で歩きづらい個所がありました。可動柵もなく、何
よりもみんなが驚いたのは、点字ブロックの上に柱があることでした。ホームが狭く
なると、柱の位置が点字ブロックに近づき、ブロックの上になるのです。端から端ま
で、ホームを歩くことなんて今まで経験がなく、あらためて確認することの重要性を
感じました。
 改札が1Fから3Fに移動し、駅中に48店舗のお店があります。見た目はすごくきれい
ですが、私たちには広すぎて、目的のホームを探すのが大変です。トイレの音声案内
はありましたが、他は音声案内がありませんでした。
 新しい駅に変わるときこそ、私たちの利用しやすい、安全な駅を作っていくために
、意見や、要望を発信していかなければとつくづく感じました。
 全体会は、各分科会報告、「鉄道の楽しみ」と題して、てっちゃん代表3人が、電
車発着の音楽など交えた楽しい話を聞かせてもらいました。
 大会終了後、山城さん、福岡の高橋さんら5名でJR田町駅まで行きました。田町駅
のエスカレーターの音声案内スピーカーが改善されたことを受けて、米倉春奈都議と
ともに、現地調査に参加しました。
 田町駅は東京都障害者会館の最寄り駅でもあり、視覚障害者が多く利用する駅でも
あります。エスカレーターに音声案内があるのはご存じのことと思いますが、そのほ
とんどが、エスカレーター内側にスピーカーが設置されているため、音声がエスカレ
ーターに乗ってから「上りエスカレーターです」などと聞こえてきます。
 東視協と米倉議員、熊田ちづ子港区議が、JR東日本東京支社、管理責任者の港区に
、エスカレーターのスピーカーの改善を求めていました。今回、この要望が叶い、エ
スカレーター手前の支柱にスピーカーが取り付けられました。実際に乗り降りしてみ
て、手前からエスカレーターの位置が分かるし、誘導はしていませんが手前に点字ブ
ロックが奇麗に敷設しなおされていました。このように一度設置しているものをやり
直してもらうというのは、実現も難しいことだと思います。こうして一例、一例、事
例を増やしていくことが大切だと感じました。

情報と行動が命を救う


藤原 義朗
暮れも押し詰まった12月25日、表記のテーマで防災学習会を行ない、後半は「オ
ーテピア高知・声と点字の図書館」についての懇談会を、小高坂厚生センターで行な
いました。
 防災学習会は守る会から13名、高知地方気象台から荒谷博台長をはじめ3名の方
の参加がありました。
 まず、高知県は南海トラフで強い地震と高い津波が予測されますが、地震の頻度で
いうと93年間に震度5弱以上が高知市で2回だけと、全国で一番少なくなかなか準
備が進んでいないという内容の話から始まりました。
 以下に、荒谷台長からのレジュメ及び、感想を貼り付けます。

「地震・津波災害から命を守る 
―情報と行動が命を救う―」
はじめに 
−日本は豊かな自然に恵まれた美しい島国−
1.自然災害による死者・行方不明者
2.地震・津波を知る
  世界の地震の約10%が日本付近で発生
  高知県は他県より地震が少ない?
  地震の基礎知識 震度とマグニチュード
3.過去の地震災害を知る
  熊本地震
  兵庫県南部地震(阪神・淡路大震災)
  東北地方太平洋沖地震(東日本大震災)
4.想定される南海トラフ地震
5.情報が命を救う
  気象庁が発表する地震・津波に関する情報の発表タイミング
  緊急地震速報について
6.行動が命を救う
  高知県版 緊急地震速報を見聞きした際の対応行動
おわりに 
−緊急地震速報は強い揺れから身を守る、
津波から逃げる合図−
 講演の後半に、緊急地震速報を実際に聞いてみて3つの種類について冷静に聞くこ
とによって意味を知ることができました。
 なお、高知気象台作成の墨字パンフレットをいただきました。その中に、緊急速報
音のQRコー
ドがあります。必要な方は藤原までご連絡ください。
 最後に、当日参加された時久圭吾さんより感想が届きました。長いので一部分紹介
させていただきます。

 私たちが日ごろより耳にする地震のメカニズムを、丁寧に解説していただき3種類
の警報音を視聴して、その音の意味することまで事細かく説明していただいた。以下
に、学んだことを列記させていただきます。
・警報音を聞いたらすぐに大きな声を出して、周りに知らせることと自分の身を守る
こと、避難路の確保といった3種類を、素早く行うこと。
・日ごろから家の片づけや重い家具を置かないことを徹底しておくこと。どうしても
重い家具を、置くときには、耐震補強をすること。突っ張り棒や転倒防止用具を、勧
めていただいた。
・震源地に近ければ近いほど緊急地震速報及び警報が間に合わないこと。
・日ごろから防災マップ作りをしておくことや家族間との連絡を密にしておくこと。
・どうしても家の中に閉じ込められた時には、大きな音の出るものを、用意しておく
こと。例えば防犯ブザーや手回し発電機付きラジオなどを用意しておきいざというと
きに、大きな音を出して、周りに、存在を知らせること。
・地震の恐ろしさは、余震が長いことであること。
いったん揺れが収まったからといって、家の中に飛び込むことは、自殺行為であるこ
と。
・自分の家の周りは、大丈夫かなと日ごろから点検すること。

第13回あはき運動交流会(岡山大会)参加報告


あはき対策部 生田 行信
 1月21日(土)、22日(日)の2日間、標記の会が岡山で開催されました。例年どおり
全視協、病マ連、翌檜会による実行委員会の主催です。あはき法19条違憲訴訟問題と
いう喫緊の課題への関心もあり、当初の定員を上回る申込みがあったため会場を変更
したほどで、関東から南は沖縄まで14都府県から、また開業、勤務者、教員など幅広
い職域から48名が参加しました。高知からは近いこともあり、浜口あはき対策部長、
盲学校理療科の大久保充先生、生田の3人で参加しました。「あはき」とはあん摩マ
ッサージ指圧・鍼・灸のことで、厚労省も正式に用いています。
 プログラムは前回大会に引き続き、学校の形を模して1時限50分の「授業」と10分
の休み時間、計8時限の授業形式、「あはき運動大学校」と題して行われました。校
長先生は翌檜会会長で岡山の志水克典さんでした。
●1日目
1時限「あはき情勢」本田東さん
2時限「あはき法で学ぶ法令用語」東郷進さん
3時限「障害者総合支援法の就労支援」寺西昭さん
4時限「開業と自営業(療養費を含む)」志水克典さん
●2日目
5時限「あはき保険(診療報酬・介護報酬)」楠田房雄さん
6時限「最高裁判決と無免許法制」東郷進さん
7時限「19条裁判」司会:藤本勲さん
8時限「自由討論」司会:島田尚志さん、陽子さん
 各授業のレジメはQ&A方式と具体資料で編集されています。墨字は63ページと逐
条解説25ページ、点字は166ページと同81ページ、ボリュームはありますが、今も昔
も変わらない基本を初め、制度の微妙な変更や報酬単価など最新の情報でできている
ので、とてもわかりやすく後々参考資料としても役立つと思います。後日データ版が
手に入る予定ですので、ご入り用の方は生田まで連絡ください。予備として墨字版を
1部いただいています。点字版の予備はいただけていませんが、参加した浜口さん、
大久保さんにお声かけください。
 井上会長が立ち上げに向けて準備を進めておられる障害者就労支援がテーマのペー
ジのQ(質問)を紹介します。あはき業での就労継続支援A型とB型を比較し立ち上
げを具体的にイメージしながら考える内容です。講師の寺西さんは名古屋盲学校の理
療科教員で進路担当を長く務められています。
Q1ー対象者はどんな人?
Q2ー利用できる期間は?
Q3ー工賃(賃金)は?
Q4ー認可を受ける前提条件は?
Q5ー人員基準は?
Q6ーサービス管理責任者(サビ管)になれるのは?
Q7ー設備基準は?
Q8ー運営基準は?
Q9ー必要な書類は?
Q10ー相談窓口は?
Q11ー報酬費等の額は?
Q12ー条件整備で苦労する点は?
Q13ーB型事業所を探すには?
 A(アンサー)は細かくなるので省きます。他の講座もそうですが、ひとつ言えるの
は、これだけの内容を自分で調べようとすると結構な時間と努力が必要だと思います
。これが7講座分ですから貴重なテキストになります。
 あはき法19条違憲訴訟問題に触れておきます。原告が平成医療学園グループ(岸野
雅方理事長)、被告は国(厚生労働省、文部科学省)で、私たち視覚障害者は実質的
当事者ではありますが、裁判に直接関わる当事者ではないので、裁判情報や資料が直
接は手に入りません。正確な情報を得るには、裁判所に出向き厚さ数ページにものぼ
る裁判資料を閲覧するしかないのです。スマホでカシャはダメです。要点を書き取る
しかありません。この地道な作業を東郷さん、氏野さん、本田さんがしてくれていま
す。この内容を、全視協、日盲連、理教連が幹事団体を務めるあん摩師等法19条連絡
会や全視協・守る会を通じて知ることができ、この問題に関わる貴重な情報になって
います。高知からの裁判傍聴は難しくても、全視協から提起されている要請葉書や署
名、募金活動など、裁判所から遠い高知でもできることに取り組んでいきましょう。
 授業形式であはきに関わる諸問題を網羅的に学ぶことができて内容的に充実してい
ることはもちろんですが、横に広げていくこともこの集会の大切な使命です。その意
味で今回高知から3人という複数人、会員外の方も誘って参加できたことは前進だっ
たと思います。
 例年は秋に開催されているこの集会、今回は冬に行われたこともあり、懇親会では
広島、宮城につぐ生産量第3位の岡山の牡蠣に舌鼓を打ちながら交流しました。岡山
友の会の海山浩俊さんと西井正美さんも懇親会には来られていて、お元気な姿を見せ
てくれました。高知出身の川田さんは、集会の会計として今回も運営を支える活躍で
した。交通費や宿泊費を守る会から補助していただき、有意義な学習と交流をするこ
とができました。ありがとうございました。

第13回あはき運動交流会(岡山大会)に参加しての感想


 高知県立盲学校理療科 教諭 大久保 充

このたび初めて「あはき運動交流会」に参加させていただきました。昨年夏に行われ
た高知大会には一部参加させてもらいましたが、今回は二日間の全日程を参加しまし
た。
二日で8時間目までの講義を受講し、大変勉強させてもらえましたし、また大変刺激
を受けました。特に19条裁判の争点、無免許問題と関係法制の講義については強い
関心を持って受講しました。また、あはき保険における診療報酬・介護報酬の講義に
ついては、私が進路担当であることから大変勉強になりました。
今回学んだことをさらに深めて日々の教育活動に還元していきたいです。

森林活動の集いに参加して


堀見 篤子
11月6日朝天候にも恵まれ、バスは一路馬路村を目指し出発しました。安芸を通り
すぎ安田町に入り、いろは坂のような道をくねくねと登って行き、もう駄目だと思っ
た頃やっと千本山の登り口に着きました。皆で楽しくお弁当をいただいた後、頂上を
目指しましたが、戻って来られる時間とか考えて残念ながら途中から引き返すことに
なりました。今度はぜひ頂上を目指したいです。見たこともない大きなヤナセ杉を見
たり森林の事について色々教えていただき充実した1日になりました。自分一人では
なかなか行けないので、又こういう企画をお願いします。又ご一緒した麻衣ちゃんが
とても礼儀正しく感じが良かったので楽しかったです。最後になりましたが、お世話
していただいた皆様、どうもありがとうございました。

「共生する社会を目指す講演会」に参加して


           大阪 竹島 恭子
11月23日、宿毛市総合福祉センターで開催されました講演会に参加させていただき、
深く感動いたしました。お誘い下さいましたのは北村さんで、部外者が加わってもよ
ろしいのか躊躇いたしましたものの、お言葉に甘えて同行した次第です。
 山崎理恵さんの「絶望から希望へ」と村田一平さんの「重度の障害を持っても自分
らしく生きる」の二つのご講演で、介護される親御さんの立場とご本人の思いを語っ
ていただき、却って励まされた気がいたしました。ここに至るまでのご苦労は計り知
れないものがおありだったと拝察いたしますが、力強く素晴らしい講演会でした。
 北村さんとは悲しいご縁の「学校災害から子どもを守る全国連絡会」で出会いまし
た。光寿さんの事故の14年前に、息子は高校山岳部の春山合宿中に雪の八ヶ岳で遭難
いたしました。光寿さんの事故が私たちの住む北摂知地域で起きたことと息子と同じ
高校生ということで、裁判は一審の途中から全て終わるまで傍聴支援をさせていただ
きました。
 長い裁判を真っ直ぐな強い意志をもって闘われた北村さんに、心から敬意を表して
おります。そして、光寿さんのために視覚障害の方々の会に入られたとお聞きして、
これからまたあの活力でご活動されることを期待して止みません。
 この会の皆様方と終日ご一緒させていただき、日頃気付かなかったことがたくさん
あることが分かって、有意義な一日になりました。車中での皆様の会話も生き生きと
して、論議もお聞きしていて快く誠に楽しいバス旅行でした。皆様の明るくお元気な
お姿を拝せましたのが、何より嬉しいことでした。高知に着いての会食も、よい想い

となっております。皆様のご健勝と益々のご活躍をお祈りし、心からお礼申し上げま
す。
感謝を以て、早々。

おいしい・たのしい・うつくしい室戸を満喫


           一柳 恵子
会員のみなさま、はじめまして。 
1月22日のリクレーションの同行援護をさせていただくために参加いたしました一
柳恵子と申します。
参加者15人、満席の元気号は室戸へと出発しました。バスの中では、皆さんの話声
・笑い声が途切れることなくとても楽しくすごしました。
今回のレクレーションのスケジュールは
★ 安芸市 いおき屋でおうどんを食べる
★ 田野の道の駅でお買い物
★ 室戸市 初音でキンメ丼を食べる
★ ドルフィンセンターでイルカとふれあい
★ 室戸岬探索   
 おうどんも、キンメ丼も食べれると知った食いしん坊の私は、朝食をいつもより少
なめにとり楽しみにしていました。   
 が・・・・・ここで、ハプニング!!
 9時に県民文化ホールを出発した元気号は、
順調良く走り、なんと!!
安芸市 いおき屋の開店時間より早く到着しました。
 おうどんは、あきらめて室戸にむかいました。
気を取り直し、バスの中から見た景色は、海がキラキラして、とても綺麗でした。室
戸市に到着し初音でキンメ丼とキンメのあら汁。とても美味しくいただきました。
 ドルフィンセンターでは、いきなりイルカの洗礼をうけびっしょびしょになりまし
た。はじめて触れたイルカは、とてもあたたかく、ナスビをさわっているようでした

室戸岬では、ガイドさんに案内していただき
岩にふれたり、海のにおい、波の音を聞いたりと
室戸岬を体感しました。
最後になりましたが、守る会のみなさまとの再会や、はじめてお会いする方、いつも
みなさまとの出逢いにわくわく楽しみにしている私です。
今後とも宜しくお願いいたします。

私の戦中・戦後 [後編]


        小澤 幸泉
 人生とは邂逅である(亀井勝一郎の言葉)。私は昨年(2015年)7月16日で満75歳
を迎えた。後期高齢者の仲間入りである。昭和15年(1940年)生まれ。5歳で終戦を
迎えた。「邂逅とは思いがけなく出合うこと。めぐりあい。しかもそれはその後の人
生を決定的にするものである。」
 一つ目の出合いは昭和25年4月、小学4年生の時であった(その年の6月に朝鮮戦争
が始まった)。当時、私の住んでいた所は東京下町のスラム街、終戦後、間もない暗
い世相の中、親なき子で病弱な暗い顔で毎日を過ごしていた私を拾い上げてくれたの
は、一人の宣教師だった。昭和5年開園されたその学園(愛恵学園)で高校を卒業す
るまで、養育され訓練を受けた。「これらのいと小さき者の一人になしたるは、すな
わち、われになしたるなり」主イエスのみ言葉に触れ、神と人とに仕え、共に生きる
決心を与えられたのでした。
 二つ目の出合いは、1970年4月、30歳の時、名古屋市にある日本福祉大学に入学し
たことである。高校卒業後、いくつかの仕事に就いたが、その多くは準大手のK証券
だった。時まさに高度経済成長期の真ただ中にあった。しかしその華やかさと引き換
えにその重圧に押しつぶされ、結果、心身の病を得て、1年余りの入院生活を余儀な
くされた。何もかもが失われて残ったものは、こんな私が「いま、こうして生きてい
る」という事実である。ここからもう一度、私の人生をやり直して行こう。そう決心
させてくれたのは、あの最初の出合であり、それが支えてくれた方々のことを思い起
こさせてくれたからである。社会復帰の時と場としての5年間の大学生活は、私に社
会の中で生きていくこと、すなわち仕え変革してゆくという新しい両眼を開かせてく
れた。それは、生活と病気と学業とのたたかいではあったが、それを支えてくれたの
は多くの若い学友たち(その一人は後のパートナーとなり今も一緒に生活している)
や教職員の方々だった。1975年3月卒業、就職、そして翌年結婚。孤児なれど子ども3
人孫多数(幸泉)あれから40年が過ぎた。その多くを障害者(児)教育の実践と運動
に費やしてきている。
 「新しい年・夢・希望・想い」を述べよう。
*いのちとくらしと平和を守る運動を仲間と共に進めていきたい。*神の教会に仕え
あまねく広げていきたい。*新たな学びをはじめたい。*家族(家庭)を大切にし共
に生きていきたい。*川柳、旅、料理をもっとできたらいいな。これは、これまで、
さまざまな出会いの中で私を支え導き育てて下さったたくさんの方々への感謝を込め
た報告であり、約束(決意)である。戦後70年、戦争そして敗戦という尊い犠牲によ
って勝ち取られたものが、また失われようとしている「戦争する国(安保法)」そし
て「社会保障解体」これらが一体となって押し進められようとしている。空低く大砲
太りバターやせ(幸泉)何としてもこれを阻止しなくてはならない。元ドイツ大統領
、ワイツゼッカーはその演説「荒野の四十年」で次のように述べている。「過去への
反省がない者は、同じ過ちを(また)繰り返す」と。障害者であり高齢者である私が
今日も生かされていることの意味はここにあるのではないだろうか。貧しさと戦の残
る「昭和の日」(幸泉)最後に聖書からの言葉をいくつか紹介し、まとめとしたい。
「信仰とは、望んでいる事柄を確信し、見えない事実を確認することです。昔の人た
ちは、この信仰のゆえに神に認められました」(ヘブライ人への手紙11章1〜2節)「
この人たちは皆、信仰を抱いて死にました。約束されたものは手に入れませんでした
が、はるかにそれを見て喜びの声をあげ、自分たちは地上ではよそ者であり、仮住ま
いの者であることを公に言い表したのです。このように言う人たちは、自分が故郷を
探し求めていることを明らかに表しているのです」(同13〜14節)「神はわたしたち
のために、さらに良いものをあらかじめ備えて下さっている」(同40節)

高速バスのチケット購入について 〜こんな方法もありますよ〜


畠山 俊惠

 私は年に何回か高速バスを利用して県外に行きます。ある時、チケットの購入窓口
で「身体障害者手帳のコピーはだめです!」と言われたことがあるので、みんなから
わざわざ手帳を預かって買いに行っていました。
 もう3年ほど前になるでしょうか。コンビニでのチケット購入の方法を教えてもら
いました。まず電話でチケットの予約をします。後は近くのコンビニへ行って買うだ
け・・・。みんなから手帳を預かるという煩わしさもなく、非常に便利に利用してい
ます。ただし、コンビニの発券機には音声ガイドがないので、私はヘルパーさんに機
械を操作してもらっています。忙しい時間帯でなければ店員さんに操作をお願いして
もかまわないのでは?
 JRか、とさでん交通に予約の電話を入れたとき、身障者手帳を使いたいということ
を伝えます。そうすると、半額の合計金額と予約番号を教えてくれますので、それを
自分が控えます。「当日バスに乗る時には必ず運転手に手帳を見せてくださいね。」
と言われますが、ただそれだけです。
 電話で予約後2週間以内にチケットを購入しないとキャンセルになってしまいます
ので、早めの購入をお勧めします。
 私が初めて発券した頃は、ローソン(ロッピー)と、ファミリーマート(ファミポ
ート)のどちらかでしたが、今はセブン−イレブンでもできるかもしれません。
 発券機の画面に従って進んでいくと、最後にチケットと領収書が出てきます。「そ
れは仮の物じゃない?」と私に聞いた人がいましたが、違います!チケットそのもの
です。「これはすごい!電話で予約したチケットが、なんでコンビニの発券機から出
てくるが?」と私も本当に不思議でたまりませんでした。今や、チケットの購入だけ
でなく、いろんなことがコンビニの発券機でできるとのことです。出てきたチケット
をレジに持って行き料金を支払います。
 ここで参考のためにチケット購入の操作手順を書いておきます。
  ローソン(ロッピー)
1. 「各種サービスメニュー」から入る
2. 「各種代金」というところを選ぶ
3. 「各種代金お支払い」を選ぶ
4. 「予約済み高速バス代金のお支払い&発券」を選ぶ
5. BUSと大文字で入力
6. 予約番号を入力

  ファミリーマート(ファミポート)
1. 代金支払い
2. 各種代金お支払い
3.BUS
4. 予約番号

 また最近では、ネットでチケットを予約すると、「受付完了」のメールがくる。乗
車の時にスマホでその画面を見せればオッケーという驚くような方法があるとか・・
・。すごく便利だとは思いますが、なかなかついていけない話です。

ちょっと一言 「それからの蜘蛛の糸」


              有光 勲
 芥川龍之介の短編「蜘蛛の糸」はほとんどの方がご存じだと思う。しかし、まだ読
まれていない人には、この話の皮肉、おかしさがわからないと思うので、まずそのあ
らすじを書いておきたい。
 ある日、釈迦が天国(小説では極楽)の蓮池のほとりを散歩していて、ふと地獄の方
を見下ろした。そこの血の池地獄では、多くの罪人たちがもだえ苦しんでいた。その
中にカンダタという大泥棒がいた。カンダタは悪いことばかりしていたが、たった一
つだけいいことをした。カンダタが林の中を歩いていたとき、足下に1匹の蜘蛛が這
い出してきた。一気に踏みつぶしてやろうと思ったが、「いや待てこんな小さな虫に
も命があるはずだ。ここであえてそれを奪うことはないだろう」と思い、その蜘蛛を
助けてやった。釈迦はそのことを思い出したのである。そこで蜘蛛の糸を地獄に向か
って下ろしてやった。真っ先にそれを見つけたカンダタは、大喜びでそれにかきつい
て天国に向かって上り始めた。このようなことには慣れているカンダタも、さすがに
疲れて一休み、何気なく下を見て驚いた。大勢の罪人たちがぞろぞろと上がってくる
ではないか。「こら、これは俺のものだ。みんな降りろ」と大声で叫んだ。そのとた
ん蜘蛛の糸が切れて再びカンダタは地獄へ落ちていったのである。
 これは、自分本位の考えをしていたのでは、せっかくのチャンスも逃してしまう。
他人を思いやる心がなければ、結局は自分までもが不幸になってしまうという教訓を
説いた、イソップ物語のような寓話である。
 しかし、この話には続きがあるという。私がまだ盲学校の寄宿舎にいた頃だから、
もう半世紀以上も昔になる。NHKラジオの朗読の時間に放送されていた。それが、「
それからの蜘蛛の糸」である。大変おかしかったので、今でもその内容は、はっきり
覚えている。しかし、作者は思い出せない。あまり有名な人ではなかったように思う
。その話というのはこうである。
 カンダタが蜘蛛の糸をよじ登っていて疲れたので一休み、下を見ると大勢の罪人た
ちが上がってくるのを見て驚いた。そこまでは同じであるが、それから先が違う。カ
ンダタは考えた。「とにかく俺が先頭を行っている。真っ先に天国につくのはこの俺
だ。ここで大声を出したりして、この糸が切れてしまったのでは元も子もない」と思
いゆっくりとますます慎重に上り始めた。
 一方、天国の釈迦は、どうなっていることかと思い、地獄の方をのぞき込んだ。そ
のときである。ちょうどそこにたどり着いたカンダタは、片方の手を天国のへりにか
け、もう片方の手で釈迦の首にかきついたからたまらない。釈迦はもんどり打って地
獄へ落ちていった。
 天国は大変環境のいいところである。大泥棒のカンダタもいつしか慈悲深い人間に
なっていた。
 ある日カンダタが蓮池のほとりを散歩していて、ふと地獄の方を見下ろした。そこ
の血の池地獄でもだえ苦しんでいる罪人たちの中に釈迦がいた。「あ、これはいけな
い。一刻も早く引き上げてやらなければ」と思い、地獄に向かって蜘蛛の糸を下ろし
てやった。
 それを真っ先に見つけた釈迦は、大喜びでその蜘蛛の糸にかきついて上り始めた。
途中で疲れて一休み、何気なく下を見た釈迦は驚いた。大勢の罪人たちがぞろぞろと
上がってくるではないか。そこで釈迦は思わず「これこれ、者ども上がってきてはな
らん」といった。そのとたん、ぷつんと大きな音を立てて釈迦のすぐ上で蜘蛛の糸が
切れて、釈迦は再びまっしぐらに地獄へ落ちていったのである。
 私は、無神論者であるが、釈迦についてどうこう言うつもりはない。平穏無事なと
きには、人間だれしも口先だけでなんとでもきれい事は言える。しかし、いざ自分の
命が助かるか助からないかというような極限状態に立たされたとき、その人間の醜い
本性が現れるものだということであろう。しかし、中には、他人の命を救うために、
自らの命を差し出したコルベ神父のような立派な人がいるのも確かである。「そうい
うおまえは、どうなのだ」、残念ながら私は、人格者でないので、いざというとき、
おそらく大変にひどい醜態をさらすに違いない。果たして皆さんはいかが?……

編集後記


 正会員の松田百香さんが、2月1日に逝去されました。彼女は、いつもこの「み
ちしるべ」が届くのを楽しみにしてくれておりました。編集部にわざわざカンパを寄
せていただいたこともあります。大変残念でなりませんが、皆様とともにご冥福をお
祈りしたいと思います。
 現在16名の方に、メールで配信しておりますが、このメール版をご希望の方は
、編集部までお知らせください。また守る会のホームページにも掲載しております。
ここでは過去の履歴もごらんいただけます。次号は、総会終了後7月に発行の予定で
す。皆様からのご投稿をお待ちしております。



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