みちしるべ
第248号

目次(ページ内リンク)
§ 全国委員会参加報告  正岡 光雄
§ 50年レセプションで先人と集う 「手つな」は母子手帳点字  藤原 義朗
§「全視協神奈川大会に参加して」  山本 貴裕(あつひろ)
§ 盲導犬もスマホも適応がある  藤原 義朗
§「坂本龍馬記念館」の内覧に参加して  正岡 光雄
§ 高知点字図書館開館50周年と新たなスタートに向けて  高知点字図書館館長 坂本 康久
§ 3代目盲導犬がやってきました  吉岡 邦廣
§ 南元町に引っ越してきました  片岡 義雄
§ コーヒーメーカー活用法「お一人さま用味噌汁もこれでオッケー!」  畠山 俊惠
§ 投票所でビップ(VIP・特別待遇者)  田處 敬子
§ 瓶ヶ森に登った時の感想  島村 佳之
§ 片岡先生へ  松田 五月
§ ちょっと一言 〜イソップ物語〜  有光 勲
§ 編集後記

§ 全国委員会参加報告


           正岡 光雄
 9月17日出発予定だったが、台風襲来でかなり懸念した。幸いにも朝7時35分
東京行きの飛行機便は無事飛んだ。東京についてみると次の10時の機は運行ストッ
プになったことを聞いてほっと胸をなでおろした。
12時にはいつもの三田会館についた。13時開会、5組織欠席(北海道、山梨、静
岡、広島、愛媛)のほか数組織が数時間遅れて到着の予定という、停滞ぶりであった


□要求運動交流学習交流会
まず、冒頭は本年初の試みとして実施された各地の要求運動の交流学習が行われた。
各地の報告を聞いて、つくづく我が高知の要求運動の水準の高さに誇りをもった。
東京‥昨年やっと初めて公務員への点字試験が実施された。25年度中に東京メトロ
に新駅ができる。三田線にホームドアが設置される。
青森‥除雪運動に積極的に取り組んだ。
石川‥65歳状の障碍者医療費助成制度開始に向けて他の団体と共に奮闘した。
茨城‥点字ディスプレイ給付実施の要求を行い、長年の運動の成果で実現した。
他東北地区各県では要求が出ないことで苦悩しており、毎年は実施していない。
岡山では集まった要求を県の盲人協会会長にお願いして取り組みを依頼している。
神奈川県では視覚障碍者単独では迫力にかけるので、障碍者団体(障神奈連)と共に交
渉を行っている。などであった。
 一方、東京‥毎週夜2回何週かに分けて交渉を行っている。
福岡‥毎年1回3時間にわたっての交渉を持っているが、福岡市の交渉で普通字、点
字の回答分が配布されるようになった。
埼玉では1日かけての交渉を実施している。
高知‥8、9月の県(5回)、高知市(4回)共に実施、また1週刊前までに高知市はメ
ールでの回答文が送付されてくるようになった。盲導犬取得において職務専念扱い(
仕事として訓練を位置づけた)が認められた(県庁職員)等進んだ地域の取り組みも出
された。
 要求運動の掘り起しでは、大阪を中心とする近畿各県による「関西地区視覚障碍者
手を繋ぐ取り組み」が活発に行われて居り、数々の成果も上がっているということが
出された(デパート、ホテル、JR、タクシー会社等)。

□次期大会開催について
 この問題になると、俄然、論議は白熱した。
 まず、執行部より「次期34回大会は引き受けてくれる組織が未だに見つからない
ので延期し、その時期に社員総会を持つ」との提案があり、引き続いて大阪から「代
議員を今の30名に1名の割合を50名に改める。今の大会は大きすぎて各組織に負
担がかかり過ぎるから、全国を西、東に分けて1泊2日のブロック会を行う」という
修正提案が出された。
 次いで、積極意見が出る。「いろいろお願いしたが、というお話だったが、福岡に
は打診がなかった」、「延期などというのは本会の衰退を多くの団体に対して衰弱を
披歴するようなものだ」(沖縄)
 一方、慎重論も出された。
神奈川‥「前大会までは馬力にみちていたが、全国見回してみると各組織の状況は高
齢化もあり組織の停滞がみられる。1泊2日の会でもいいのではないかという意見も
出ている。」
岡山‥「200人規模の大会開催は重荷である。、気軽にできる大会にしてどこの組
織でも引き受けられるようにしてほしい」
 岩手と高知からは依頼されたが引き受けられなかった事情の説明があった後、執行
部よりとりあえず10月まで時期大会開催立候補組織を募集することになった。
 また大阪の修正提案は持ち帰って検討の上、再提案するようになった。

□その他
 藤原君提案で神奈川大会では継続審議になっていた《全視協福祉・介護の提言》は
一部修正のうえ採択された。
 また、あはき19条問題(晴眼養成施設制限問題)は全国各地で署名やカンパ、裁判
傍聴など日盲連や理教連などと共に活発に活動を行っている。
※「全視協50周年記念誌」は全視協(点字民
  報社)で販売している。
※ 次回全国委員会は2018年2月17(土)、
18(日)日である。

§ 50年レセプションで先人と集う 「手つな」は母子手帳点字


藤原 義朗
1.結成50年を海外にアピール
 全国委員会終了後、駐健保会館に席を移し、結成50年記念レセプションが百名近
い参加者で行なわれた。氏野副会長による開会宣言の後、黒岩瀧市初代会長の乾杯の
音頭で幕が上がった。来賓は、社民党福島参議院議員、共産党堀内衆議院議員をはじ
め、田中徹二日本点字図書館理事長、高橋実文月会会長など視覚障害者団体代表面々
、また、上野裁判や堀木訴訟を共に闘った労組や田中敏夫弁護士などから挨拶があっ
た。
 そして、歴代会長である橋本宗明さん、藤野高明さん、柿本一志さん、正岡前会長
からも力強いメッセージがあり花を添えた。
 藤野先生からは「高橋実さん田中徹二さん、ぜひ全視協に入ってください」と熱く
語られた。派手さはないレセプションであったが、多くの人の支えや協力で培ってき
た会であることを実感するものであった。

2.「手つな」では
  コンビニのセルフレジ、母子手帳など
◆2017年後期要請行動は、
1.厚労省・福祉・介護  
2.厚労省・雇用・就労 
3.国交省・雪害対策 
4.総務省・マイナンバーカードの利用 
5.経済産業省・セルフレジ 
の5つの班に分かれて行なった。

藤原は今回も「厚労省福祉・介護」の担当であった。16回連続になる。
○点字版まで合理化!
 当時の婦人部を中心とした運動で、母子健康マニュアルという形で点字版が出され
て24年目になる。しかし、今回東京の会員が妊娠し支給を求めたところ、役所から
9200円での購入を求められた。点字版だからこそ、優位性が増すことなどを説明
したが、「デイジーをダウンロードしたら」とにべもない回答で、今後やり方を練り
直さねばならない。
 なお、給付の始まった当時は約200部出たが、最近は年10部を切る状態である

○3年目の見直し総合支援法、65歳以上は償還払い!
 総合支援法の3年目の見直し法案では、65歳を超えても、それまで障害者制度を
長年受けてきた人は介護保険での負担額を据え置きというが、システムの関係で償還
払いの予定である。障害者医療の現物給付が交付金のペナルティがある。今のところ
そのようなペナルティは考えていないとのことである。地方の運動で、しっかりした
ものにしていきたい。
◆「手つな」講演は、改正民法
 「こう変わる!民法(債権法)」と題して、司法書士の鈴木龍介先生よりご講演い
ただいた。
 民法の厚生と、今年5月に改正された点について述べられた。
厚生は債券や相続などで出来ている。意思表示などがこれまでよりもっと大切になっ
てくる。成人年齢も18歳をという論議も出てきている。相続の問題など本来身近な
課題だけに、質問が相次いだ。

§「全視協神奈川大会に参加して」


         山本 貴裕(あつひろ)
 今回私にとって5回目となる全視協大会に参加しました。一昨年の安保法強行採決
および共謀罪法案が強行採決されようとしているなか、私達視覚障害者をめぐる状況
は厳しくなっています。なお共謀罪法案は強行採決され今月から施行されましたがま
だまだあきらめてはいけないという思いで大会に参加しました。
 記念講演では宇都宮健児先生の「ナチスドイツが憲法を変えずに法律を変えていく
」という例を取り上げました。これは、ヒトラーが1933年に政権を掌握してから、当
時最も民主的と言われたワイマール憲法には手をつけずに新法を作って憲法を骨抜き
にして独裁体制を敷いたことです。「全権委任法」では国会の立法権を取り上げ、国
会が作るべき法律を内閣が作れるようにしたのです。また「政党成立法」では政党は
ナチスだけで司法権は政府に移譲させられてしまいました。
 今、安倍政権によって類似したようなことがおこなわれようとしています。自民党
が2012年改憲草案では立憲主義の理念を放棄して国家権力を縛るルールから国民を国
家権力が支配するものへ変えようとしています。また、憲法9条を変えて平和主義を
放棄し国防軍を創設する内容にもなっています。また天皇を元首にさせ国民主権の後
退を図ったり緊急事態条項の新設で基本的人権の制限にも着手しようとしています。
 こうした中、日本の貧困率は16.1%に上っています。年収122万円以下がおよそ6人
に一人とは私も驚かされました。ワーキングプアと呼ばれる年収200万円以下の非正
規労働者が一千万人を超えたことにも驚かされました。こうした状況の中私達は憲法
25条の国民の生存権の確立27条の勤労の権利28条の勤労者の団結権、団体交渉権の確
立と強化を広く周りの人々に訴えていかなければならないと思いました。
 「腹話術で語る平和な暮らし」の分科会では腹話術師の「しろたにまもる」さんと
相棒のゴローちゃんによるユーモアたっぷりのトークショーでした。しろたにまもる
さんの笑いを交えながら、平和の尊さを訴える姿勢にはあらためて頭が下がりました

2日目の「弱視者の要求と課題」では「車がないと移動できない地域が多い」「弱視
という障害を理解してもらいたい」という要求に共感しました。私の住んでいる地域
「徳島市国府町」はバスが一時間に一回か二回しかない時間帯が多いので著しい不便
を感じています。また私は肢体障害のため杖を持っていますが全盲ではないので白杖
をもつことはできませんが黄色の夜行テープを貼って周囲の人々にわかってもらえれ
ば良いと思っています。
 私達障害者は日常的に意見交換の場を作って周囲の人々に訴えていかなければなら
ないということも痛感しました。
 私は2日目の途中までしか参加できませんでしたがスタッフならびにボランティア
の皆様方には大変お世話になりました。また今後の生活の糧にして頑張っていきたい
と思います。

§ 盲導犬もスマホも適応がある


             藤原 義朗
 10月14日(日)「盲導犬訓練」と「スマホ体験報告会」を「てとてあさひ」を
お借りして行ないました。今回の企画は青年学生部と学習部共催で、参加者は、新聞
を見て参加された方もおられ15名でした。

1.職専免
 県庁知事部局に勤務されている吉岡邦廣さんが、リタイヤする盲導犬交代の為の訓
練で上京されました。その間、職務専念義務免除扱い(職専免)を受けることができ
ました。
これまでその例として、公務員が国体や研修参加の場合に使用していました。それが
今回、盲導犬訓練にも適応になったのです。
 私たちは「職務を遂行するために盲導犬が必要」であり、職専免で訓練に行かせて
ほしいと要望してきましたが、これまでは教育委員会部局で、年休と一部研修で行っ
ていました。職専免扱いで行くことが出来たのは、東京都に次いで2県目ではないか
と思います。
 これが、今後、教育委員会部局にも広がることを期待します。

2.盲導犬訓練
 吉岡さんの新しいパートナーは、もうすぐ2歳になる雄の「ガウス君」。吉岡さん
にとって3頭目の犬です。アイメイト協会での19日間の訓練の様子や注意してほし
いことが語られました。試験もあり、途中で落第になるケースもあるそうで
す。訓練に行く場合は、よほど気を引き締めることが必要だと聴衆はかんじました。
 全国で10か所訓練所はありますが、東京のアイメイト協会は厳しい方だそうです


3.スマホ
 2年後には今までの携帯電話の製造が終わるとも言われ、迷っている方もおられる
と思います。
iPoneなどのスマートフォンと同じ電波の種類でガラホというのがあります。ガラホ
は、今の携帯電話とほぼ同じボタンですが、アプリの種類には限りがあります。
 今回、iPoneやiPadを使っておられる方の体験発表をしました。パネラーは、優等
生代表として永田先生と吉岡邦廣さん、そして、劣等生の代表として藤原が担当しま
した。
 優等生さんからはナビを使って知らない土地に行けること、途中の店なども紹介し
てくれることが話されました。また、パネラー以外の方からも、画面がフラットでも
文字入力が簡単にできるようになってきたこと。OCRで文字を読んでいるなどの経験
が聞かれました。
 誰もが上達するのでなく、私のようにイラレは上達速度が遅いことも指導経験のあ
る人から指摘がありました。
 犬もスマホも、向き不向きがあることがよくわかった学習会でした。

§「坂本龍馬記念館」の内覧に参加して


             正岡 光雄
 「記念館」は国民宿舎桂浜荘に間近い位置に建っている。来年4月開館予定の新館
も建設中である。11月9日、県の自動車に分乗して「館」に向った。守る会の参加
者は浜口、島村、正岡光雄、邦子の4名であった。
 到着後早速ガイドの説明に従って、各場所を回った。東西南北の内で、入口のある
東側を除く各面は総ガラス張りである。私はなるべくガイドのすぐ近くに行くように
して説明を聞いた。
 その中で「入口のチャイムがない」、「新館と既存館をの間にある渡り廊下の点字
ブロックは不完全敷設である」等、今では公共の建築物はもとより民間施設の多くに
も入口の誘導チャイムや点字ブロックはごく当たり前のことである。その他多くの点
でバリアフリー化に沿っていないことが解った。
 見て回って説明を受けている間にも「この記念館は全国各地からの観光客が来られ
るし、また県下の建物における基準になるはずだからもっと真剣に取り組んでほしい
」と話した。他の障碍者も不備を指摘している。来年4月会館前のこの時期に内覧が
行われたこと自体も改修までの期間についても不備があると思う。しかも、県の「ま
ちづくり条例」にも国の「ハートビル法」にも違反している点もある。事の重大性に
かんがみてかつてのかるぽーとの時のように不備な点は直してもらわねばならないと
思う。

【資料:記念館の回答書】
坂本龍馬記念館リニューアルに伴うバリアフリー状況説明会におけるご意見について

○動線について
1.館の入り口がチャイムなどでわかるようにしてほしい。(入口と出口が異なるた
め重要)
 →回答:技術的、意匠的に困難であり、設置しておりません。坂本龍馬記念館の
入口前はロータリーになっておりますので、交通安全の面を考慮して、職員がご案内
させていただきます。介添えが必要な方は、お問い合わせください。
2.新館と既存館を繋ぐ渡り廊下にも点字ブロックが必要である。
  →回答:渡り廊下の入口と出口に点字ブロックを設置しております。また、廊下
の両側に点字表記付きの手すりを設置しております。
3.気分が悪くなった際の抜け道はあるか。
  →回答:気分が悪くなった場合は職員が対応することとしております。

○トイレについて
1.新館にトイレが1か所しかないのは不便。
  →回答:新館については、構造上1か所しか確保できませんでしたが、本館(既
存館)も合わせて3か所確保しております。皆様にトイレの位置がわかるよう入館時
にご案内するよう対応いたします。
2.トイレの位置が音でわかるようにしてほしい。
  →回答:トイレの位置をご確認いただけるよう総合受付にて舘全体の配置がわか
る蝕地図
を用意していますのでご利用をお願いします。
3.新館の車いすトイレは1か所しかないが、男女トイレのブースを広くすることで
、車いす利用者も使用できるようにできないか。
  →回答:来館者数に合わせたトイレの数を確保するため、それぞれのブースを広
げることは困難です。新館と本館(既存館)に1か所ずつある多機能トイレのご利用
をお願いします。
4.トイレの水を流すボタンと非常用ボタンを間違えないよう点字表示をしてほしい

  →回答:点字表示します。

○サインについて
1.サインに点字表示をしてほしい。
  →回答:点字表示します。
2.案内やイベント告知等、色覚異常の方に配慮した配色としてほしい。
→回答:配慮した配色とします。
3.視覚障害者用のトイレのサインを国際基準である女性:○、男性:△、車いす:
□の表示としてほしい。(点字付き)
  →回答:本日(11月9日)の検討事項です。
4.トイレのサインについて、男女の区別をわかりやすくしてほしい。
 →回答:色を分けわかり易いサインとします。
5.順路がわかるようサインに矢印をつけて欲しい。
  →回答:順路がわかるように設置する予定です。
6.多目的トイレにオストメイトの表示をしてほしい。
 →回答:表示します。
7.総合案内サインに触地図を設置してほしい。
  →回答:総合受付にて舘全体の配置がわかる触地図を用意します。
8.トイレ内の配置がわかるようにトイレ入口に内部の触地図を設置してほしい。
  →回答:設置します。

○展示について
1.展示の音声解説に字幕をつけてほしい。
 →回答:字幕はスマートフォンやタブレットの画面に表示します。
2.展示の音声解説に手話をつけてほしい。
  →回答:開発済みの音声解説ソフトを導入するため手話対応とすることは困難で
す。
3.スマホやタブレットを使用する音声解説は、1台を2人で聞くことができるイヤ
ホンを導入してほしい。
  →回答:導入します。
4.スマホやタブレットを使用する音声解説において、次の解説に進むボタンがわか
らないので、わかる方法を検討してほしい。
  →回答:タブレット(iPad)の画面読み上げ機能であるVoiceOverにより、ボタン
を音声で案内することが可能です。

○その他
1.エレベーターは音声ガイド付きにしてほしい。
  →回答:音声アナウンス付きのエレベーターを設置します。
2.弱視の方のために、点字ブロックが映える床材にしてほしい。床材とのコントラ
ストが必要である。
  →回答:黄色の点字ブロックを設置しております。
3.同様に階段の段鼻と踏面にコントラストをつけてほしい。
  →回答:階段の段鼻2cmを黄色くすることで踏面とのコントラストをつけていま
す。
4.緊急時、聴覚障害者が異常を察知できるよう、光での誘導や電光掲示板での表示
等をしてほしい。
  →回答:緊急時は、展示室やロビーでは職員がおしらせします。トイレでは異常
を知らせるランプを各個室に設置することで、察知できるようにしてます。
5.受付のテーブルは、車いす利用者が使いやすいよう、低い部分も設けてほしい。
  →回答:設置します。
6.エレベーターが動かなくなった際に聴覚障害者が状況を確認できるようにしてほ
しい。東京ではモニターで確認できるようになるものもある。
  →回答:非常時には以下の運行表示灯が点灯し状況を確認できます。
 火災時:「避難階に直行します。ドアが開いたら降りてください」
 停電時:「救出運転中です。しばらくお待ちください」
 地震時:「地震を感知しました。ドアが開いたらお降りください」
7.どこに手すりがつくのか具体的な位置を知りたい。
  →回答:別添資料に記載します。
8.障害者への対応についての研修会を館の職員
に対して実施するなど、ソフト面での対応も
検討してほしい。
  →回答:研修を実施します。
9.サインを設置する前に設置場所や大きさを確認したい。
  →回答:本日(11月9日)の検討事項です。
10.バリアフリー図面に記載のある扉や通路の寸法、引戸・開戸の別について具体
的な内容を知りたい。
  →回答:別添資料に記載します。

§ 高知点字図書館開館50周年と新たなスタートに向けて


高知点字図書館 館長 坂本 康久

 高知県視力障害者の権利と生活を守る会の皆様には、日頃から点字図書館のご利用
や館の運営にご支援、ご協力をいただいておりますことに厚くお礼申し上げます。
 先日の11月5日、高知会館において開催いたしました開館50周年記念式典・講演会
、そして終了後の三者交流会にも多くの会員の皆様にご参加いただき、無事、盛会の
うちに終了することができました。重ねてお礼申し上げます。また、現在記念誌を作
成中ですが、ご寄稿いただいた皆様、誠にありがとうございました。
今回、式典や記念誌の発行のため、あらためて高知点字図書館のこの50年の写真や資
料を見返して見ますと、昭和42年の設立からその後の運営や数々の事業などの写真に
は、今年、多くの皆様に惜しまれながらお亡くなりになられた片岡忠元会長様をはじ
め、多くの会員の皆様が写った写真が残っており、皆様に支えられ、皆様とともに点
字図書館が50年という歴史を刻んできたことがよくわかります。
 51年目となる来年の平成30年は、高知点字図書館は高知県と高知市が協力して整備
・運営する「オーテピア高知声と点字の図書館」として新たにスタートいたします。
これを機に、県下全域を対象として今まで以上に積極的にサービスを展開するととも
に、視覚障害、高齢、病気その他の障害等で読書が困難な県民・市民の皆様への読書
・情報環境の充実や、視覚障害のある方への生活支援、ボランティア活動の推進など
、併設の「オーテピア高知図書館」とも連携を図りながら、更に利用者のニーズに応
えるサービスの向上に努めてまいりたいと考えております。
 特に、中途視覚障害の方や、高齢や目の病気で通常の活字サイズでの読書が難しい
方、寝たきりや、手や腕に障害があるため本を持つことやページをめくることが困難
な方、学習障害など読み書きが困難な方など、県内にも様々な障害等で活字図書の利
用が困難な方が多くいらっしゃいますが、こうした方々の多くが、点字図書館や録音
図書などがあること自体を知らないという状況があります。
 新施設では、様々な障害等で読書をあきらめていた方に、録音図書などのバリアフ
リー図書の存在を知っていただき、是非読書を楽しんでいただきたいと考えています

半世紀の間には、時代の変遷とともに点字図書館の運営・業務も変化を遂げてきまし
たが、開館時の合言葉「視覚障害者の方にも豊かな読書生活を」の思いに根差した取
り組みを今後も引き継ぎながら、「誰もが読書を楽しめる社会」の実現を目指し、皆
様とともに歩んでまいりたいと考えております。これからもご支援、ご協力をどうか
よろしくお願いいたします。

§ 3代目盲導犬がやってきました


吉岡 邦廣
 職免(職務専念義務免除制度)を利用して先代エルマーの代替わりの盲導犬訓練に
行って来ました。職免については夏の県市交渉等で要望もしていたところですが、9
月2日から9月30日にかけて実質19日間の就業を免除してもらいました。手続き
に伴い資料提出等の作業で職場には負担がかかってしまいましたが、障害保健福祉課
という補助犬への理解を得やすい職場が現在の職場だったことは幸運だったと思いま
す。
 訓練先は60年前に盲導犬訓練施設として日本で初めて東京都に設立されたアイメ
イト協会です。訓練施設ごとに歩行方法は異なりますが、アイメイト協会の犬が訓練
されていることを大きく分けると以下の4点です。
○歩行者などの障害物に接触しないように誘導する。
○階段等の段差ではいったん停止する。
○交差点等の分岐点でいったん停止する。
○椅子、ドア等の命令された対象物まで誘導する。
使用者はこの4点を組み合わせて犬に指示を出しながら歩行します。
 さてそれでは実際の訓練はどうだったかというと、訓練は基礎訓練とハーネスを持
っての歩行指導の2つに大きく分けられます。
 基礎訓練とは「おすわり」、「伏せ」、「待て」等のハーネスを握る前に行う訓練
です。この基礎訓練を毎日繰り返すことで、犬が使用者の声に反応するように訓練し
ていきます。
 一方の歩行訓練は公道を使って、指導員と一緒に歩きながら訓練を受けます。最初
は歩道から始まり、露地、アーケード、犬に券売機や改札を探させての電車、バス歩
行とじょじょにコースを変えていきます。この歩行指導は毎日午前午後1回ずつ受け
ます。吉祥寺等のアーケード、駅での指導は1回3時間を超えることもあります。
 コースの最終日には一人で歩行する試験があり、結果によっては訓練期間が延長と
なったり、犬を給付してもらえない場合もあります。そのため試験日は訓練生、指導
員はたいへん緊張します。
 施設内の生活スケジュールについては午前6時の犬の排便に始まり、フード、ブラ
ッシング、日中の訓練、そして午後9時の犬の排便で終わります。犬とはトイレ付の
個室でともに生活をするのですが、食堂、風呂場、犬の排便場所、ブラッシングルー
ム等への移動は全て犬に誘導させての移動になります。犬を訓練しながらの移動にな
るので、生活の場も全て訓練です。
 犬とのやり取りは「ほめる」と「叱る」の繰り返しです。叱るときには引き綱を強
く引くチョークという動きで伝えます。今回は私にとって3回目の訓練になりました
が、歩行、チョークで筋肉痛になり、湿布を張り、痛み止めを飲み、一番たいへんな
訓練だったように思います。やっぱり年のせいでしょうか。
 そうした4週間の訓練を何とか終えて高知に帰ってきたわけですが、新しいパート
ナーはガウスという2歳のオスです。土佐犬、シェパードみたいという人もいます。
すこしいかつい顔つきかもしれません。
 晴れて盲導犬としてデビューしたものの、まだまだ訓練中です。一日でも早く立派
な盲導犬になれるようがんばっていますので、先代の犬と同様暖かく見守っていただ
きますようどうぞよろしくお願いします。

§ 南元町に引っ越してきました


片岡 義雄
 私がこの南元町の仮宅に越してきてから、はや1ヶ月半になります。前に住んでい
た下島町では周囲の家もだいぶ壊され昔の盲学校の運動場のようになっています。
 思い起こせば亡くなられた忠さんや守る会の方に新築を祝っていただいたのは平成
6年のお正月のこと。まだその頃は父母も元気で未婚の妹も居て、今に至るまでにた
くさんの荷物(大半はゴミ)をためていました。
 ネット上に引っ越し業者のポータルサイトがあり、住所氏名・引っ越し元・引っ越
し先などを入力し、早々と電話がかかってきたあのパンダマークの業者に頼みました

 荷物の少ない私のところは半日で終わりましたが、女二世代で滓のように溜めてい
た妹のところは一日がかりで文句たらたらでやっていました。
 後からまわってきたアンケートには「ガムテープをはる場所に帯状のしるしをつけ
てほしい」と書きました。弱視者としてぜひやってもらいたいことです。
 来年の今頃までこの場所に住む予定ですのでぜひささがってみてください。「てと
てあさひ」の通りを少し西に来たイオン旭店の近くです。

§ コーヒーメーカー活用法「お一人さま用味噌汁もこれでオッケー!」


畠山 俊惠
私が持っているコーヒーメーカーは、もうずいぶん前に田所敬子さんからもらったも
のですが、今でも私のそばで大活躍しています。
毎朝コーヒー豆をひいて、マグカップ一杯のおいしいコーヒーを飲むのが私の楽しみ
の一つです。
それだけではありません。コーヒーメーカーで一人分の味噌汁を作ります。「ええ?
コーヒーメーカーで味噌汁を作る?」とみんなびっくりしますが、これなら簡単!
鍋で一人分の味噌汁は作りにくいし、かといって作り置きして何度も温めるのはおい
しくないし、私は味噌汁に納豆を入れるのが好きですが、その納豆も味噌も煮詰める
と菌が死んでしまうと言います。
なんということはありません。なるべく大きなマグカップに作り置きしている納豆味
噌をカレー用スプーンに一杯と、それとは別に味噌をスプーンに軽く一杯入れます。
それにカットわかめを少しと、お好みでネギやミョウガなどを細かく刻んで入れます
。火を通さなくてはいけない食材は、あらかじめレンジで加熱しておきます。
コーヒーメーカーにセットし、コーヒーを飲むときと同じくらいの水を入れ、後はス
タートボタンを押すだけ!沸騰したお湯が上からゆっくりゆっくり落ちてきます。軽
くかき混ぜて味噌を溶かせば出来上がり!ちなみに、私はタニタ食堂の減塩味噌を使
っています。
またこの前は、賞味期限が近づいた非常食のご飯にコーヒーメーカーからお湯を注ぎ
、袋のチャックを閉めて、待つこと20分でご飯が食べられるようになりました。
熱いお湯を袋の決められた線まで入れることなど全盲にはとても難しいこと!これな
らわざわざお湯を沸かすこともなく、分量の水を計ってコーヒーメーカーに入れるだ
けなので全盲でも難なくできます。
熱いお湯を注ぐとき、どうしても慎重になってしまうカップヌードルもコーヒーメー
カーなららくらくできるのではないかと思い、早速試してみました。
商品にお湯の目安量を書いてくれていたのでこれ幸い!蓋をめくったカップヌードル
をコーヒーメーカーの上に置き、320mlの水を入れてスタート!思った通り大成功で
した。この原稿を書くために何年ぶりかに買って食べたカップヌードルでしたが、と
てもおいしかったです。
便利に使えることがわかったコーヒーメーカーも、南海地震が起きて停電になったら
全く役に立ちませんね。

* 納豆味噌の作り方(納豆がお好きな方はこれを作っておけばとても便利!)
同量の納豆と味噌を密閉容器に入れ、ふたを開けずに冷蔵庫で一週間保存する。納豆
ははじめによくかき混ぜておく。
納豆と味噌の相乗効果により、納豆のねばねばもなくなって食べやすくなる。佃煮感
覚でご飯に混ぜてもおいしい。
* タンパク質やビタミンを多く含む納豆や味噌など「細菌系の発酵食品」には、高
血圧の予防、コレステロールの抑制、抗がん作用、老化防止、美肌効果、消化促進効
果など様々な健康効果があると言われています。
また、毎日味噌汁を飲む人は、飲まない人に比べると、胃がんの死亡率がかなり低い
とか・・・。一日一杯の味噌汁を飲むよう心がけたいものです。

§ 投票所でビップ(VIP・特別待遇者)


            田處 敬子
 皆さんは、先日行われた衆議院選挙の投票には行かれましたか? 理由のはっきり
しない突然の解散で、あわただしく選挙が行われましたね。私は、投票日の2日前に
たかじょう庁舎に行って、期日前投票をしてきました。台風21号が接近しているとい
う事もあったのか、投票所は大勢の人でごった返していました。そんな状況の中でも
、たかじょう庁舎は点字投票をする人が多いのか、係の人の対応はとてもスムーズで
、あっと言う間に点字投票が終わりました。ただ、入場券を渡して宣誓書に名前を代
筆してもらう時に「田處」の「處」という文字を係の人が「こんな字、見たことが無
い老眼鏡をかけてもよく分からん」と困っていて、見かねたヘルパーさんが代わって
書いてくれました。私の「處」は「処分」の「処」の旧字なので、読めない人が多い
のです。
 投票が終わった後で、ふと「今回はすんなりと点字投票ができたけど、前回の参議
院選挙に行った時は大変だった」ということを思い出しました。そこで、その時のち
ょっとびっくりな体験を書いてみます。
 夏の暑い日に、私は「期日前投票に行きたいけど暑いし、ヘルパーさんを頼んで行
くのもめんどうだし、今回はパスしようかな」などと、悪い考えを巡らせながら、家
でごろごろしていました。丁度その時、友人から「ランチにいかん?」とお誘いの電
話がかかってきました。私は、これはチャンス!!と思って「ランチ、行く行く!!
 ランチの前に選挙に行きたいけど?」と聞いてみました。友人はすぐ「えいよ」と
言ってくれました。
 到着した友人に入場券を見てもらうと、一番近い投票所は初月ふれあいセンターと
のことでした。今までは市役所本庁舎入口と、たかじょう庁舎しか行ったことがなく
、初めて行くところだったのでちょっと不安でしたが「まあ、行ってみよう」と思い
、クルマで出発しました。
 ほどなく初月ふれあいセンターに到着。投票所は、かなりきつい階段を上った2階
にあり、投票に来ている人は少ないようでした。受付で「点字投票をお願いします」
と言うと、受付の女性は慌てふためいた様子で、少し離れたところにいた人にそのこ
とを伝えたようでした。椅子から立ち上がる音と同時に「えっ!! 点字投票!?」
という素っ頓狂な男性の声が静かな投票所に響きました。
 それから投票所はあわただしい雰囲気となり、バタバタ、ガチャガチャと準備をし
ている様子でした。友人としばらく立ったまま待っていると、やっと「ご案内します
」と言ってくれて、私の誘導が始まりました。まるで高級なガラス製品を扱うかのよ
うに、大事に大事に、抱えるように誘導して、椅子に座らせてくれました。机の上に
はきちんと点字板に投票用紙がはさまれ、準備が整えられていました。
 まずは選挙区の投票です。点字の候補者名簿を持ってきてくれました。「ここから
書いてください」と指示されたところから、決めていた候補者名をポチポチポチッと
書きました。書き終わって、さあ投票箱に入れに行こうとして立ち上がろうとすると
「ここにどうぞ」と言うのです。私は、何を言っているのかさっぱり分からず「えっ
、何? 何のこと? どうすればえいがやろう?」と、普段使わない頭をグルグルと
回転させましたがやっぱり分からず、投票用紙を持ったまま、一瞬固まってしまいま
した。すると、誰かがそっと私の手を取って「ここに入れてください」と言って、投
票箱の投入口を触らせてくれたのです。なんと!! そこには投票箱があったのです
!!
 全く気がつかなかったのですが、投票箱を運んできてくれていたのです。投票箱っ
て軽いのでしょうか? 「いやー、すみません、申し訳ないです」と言いながら、私
は、なんと!!椅子に座ったままの状態で投票したのです。
 次の比例代表も同じように、投票箱を運んできてくれ「ここにどうぞ」と言うので
す。今度は私もすぐに分かったので、再び椅子に座ったままの状態で投票したのです

 投票の一部始終を見ていた友人に「あんたはすごいねえ、ビップ(VIP)待遇や
ねえ」と笑われてしまいました。私も「そうながよ、まさか投票箱を持ってきてくれ
るとは思わんかったわ」と二人でわいわい言いながらランチに向かいました。
 投票所の人たちは慣れないなか、精一杯気を遣って対応してくれたのです。ありが
たいことです。皆さんも今まで行ったことのない投票所にも行ってみてはどうですか
。視覚障がい者のことを理解してもらうことにもつながると思います。
 期日前投票の制度が始まって、都合の良い時に投票に行けるようになり、とても便
利になりました。しかし私の場合、誰かに連れて行ってもらわないと、慣れていない
ところは一人では行けません。ついついおっくうになって「今回はパス」ということ
もあります。投票に行きたくても行けない人はたくさんいるはずです。自宅に居なが
らにして簡単に投票ができる方法はないものでしょうか。私は選挙が有るたびにそん
なことを考えてしまいます。

§ 瓶ヶ森に登った時の感想


             島村 佳之
 その日は、やや肌寒かったが絶好の登山日和に思えた。
 朝8時、集合場所である県民文化ホール前で、バスに乗った。だが時間を30分間
違っていたものが数人いて、結局30分待つことになった。 
 全員そろった後、バスは伊吹山に向かった。 途中車内で台風のために伊吹山から
瓶ヶ森に変更があったとのしらせがあった。楫ヶ森(かじがもり)は聞いたことがあ
るが瓶ヶ森はあまり聞き覚えがない。
 しばらく走ってからだろうか、道の駅に着き、一呼吸入れた。駐車場は、馬が群れ
を成すようにオートバイで埋めつくされ、走行音を聞くと寒いのに楽しいのかなと思
ってしまう。
いよいよ、登り坂に入った。悪路とは聞いていたが、寒さと車のスプリングに助けら
れたのか、それとも自分が鈍かったのかあまり感じなかった。途中で自転車にであい
、バスの中では一時「なぜ?」「どうして?」という言葉が聞かれた。ハイキングコ
ースでもあるのかなと思いながらもバスは進んだ。
 やっと到着し、2、3人降りたところで、外は寒いから別のところで昼食をという
ボランティアの助言もあり、バスの中で昼食をとることになった。休憩の後、頂上を
めざし階段を登ったが、皆リタイアした。その後、筋肉痛や膝が笑うという言葉がち
らほら聞かれた。そのためか帰宅時間が予定よりも早まった。

§ 片岡先生へ


松田 五月
最後にお会いしたのはいつだったか思い出せないくらいご無沙汰をしていました。

今年四月、江崎さんから亡くなられた報をもらった時は、驚くばかりでした。
そして、先日追悼文集を送ってもらい、江崎さんや堀内佳さんたちの文章を読ませて
いただくと、片岡先生との思い出が次々に蘇ってまいりました。
数回しかお会いしていないと思いますが、穏やかで充実した貴重な時間だったと今に
なって思います。

音楽の話もよくしたので、片岡先生は、チェコ(オーストリア?)の国際エスペラン
ト大会に行かれた時、路上でチターなどの演奏をしていたグループのCDを、私にも
お土産に買ってきてくださいましたね。
綾戸智絵(あやど ちえ)が出演したラジオ番組の録音テープをわざわざ送ってくだ
さったことも忘れられません。

どの話題に関しても、深い洞察力と、真の優しさが感じられました。
もう一度、ゆっくりいろいろなお話をしたかった、と残念でなりません。
誕生月が同じ5月なので「一年中で5月が一番好き。」と二人して話しましたね。
きっとこれからも5月になると、片岡先生のことを思い出すことでしょう。
(これまでも5月の終わり頃になると、片岡先生にメールしようかな、と思っていた
のですよ。)

宇宙のどこかでまたお会いできるだろうと、その日を楽しみにすることにします。

§ ちょっと一言 イソップ物語


              有光 勲
 イソップ物語は、だれしも子供の頃に読んだのではないでしょうか。いろいろな動
物を登場させて、教訓を説いた寓話の童話ですね。しかし、これは大人が読んでもた
めになるものです。社会学者で評論家の加藤諦三(たいぞう)氏が大人向けに書いて
います。よく「成功者に学べ」と言われますが、成功しなくてもいい、他人の失敗を
「人の振り見て我が振り直せ」、「他山の石とする」ということで、同じ失敗をしな
いように心がけることがさらに大切だと思います。
 少し長くなりますが、加藤氏の著書から引用してみます。
*******
「失敗した人からの方が学ぶことは多い」
 ライオンとロバと狐が一緒に猟に出かけた。ライオンに捕れた獲物を分けるように
命じられたロバは、3等分にしたが、怒ったライオンに食べられた。次に獲物を分け
るように命じられた狐は、少しだけ残して大部分をライオンに与えた。それを見たラ
イオンがだれに教えられたのだと聴くと、狐は「殺されたロバにです」と答えた。
《解説》
 私たちはよく「成功者に学べ」という。しかし、本当は私たちは不幸になった人か
ら学ばなければいけないのである。何でその人がそこまで不幸になったかということ
である。不幸になった人には、自然災害や自動車事故のようなことを除いて、多くの
場合、不幸になる原因がある。
もし、狐がロバのまねをしていれば食べられていた。狐は不運なロバからきちんと学
んでいる。狐は不運なロバから「ものの分け方」を学んだのである。学校の教科書か
ら建前の理屈を学んだのではない。現実の世の中の動きから学んだのである。
 私の周りにも不幸になった人がいる。たとえば、自分より下のものが自分を追い越
していくことを受け入れることができなかった人たちである。自分より後から会社に
来た、その人が自分のポストを追い越して自分より上のポストにいく。それが耐えら
れない。
 そのときに自分の道を見つければいいのに、そのことを受け入れることができない
でひねくれてしまう。そしてその人をねたむ。そこから日常生活が崩れていく。そし
て不幸になっていく。
 よく「あの兄弟は、上の子は本当に要領悪いけれど下の子は要領がいい」とか、「
お兄ちゃんは気が利かないけど妹は気が利く」とかいう。これを兄がやった失敗を下
の子がしっかりと見ているからである。そして「あ、あれをやったらまたしかられち
ゃうな」ということを下の子が知っている。そして対処の仕方を身につけていく。つ
まり要領がいいとか要領が悪いというのは、性格ばかりではなく、現実を観察するこ
とからも生まれてくる。
 また、同じことは職場でもいえる。このロバは状況の判断ができない。対等とか平
等などの学校で教えられた建前の価値観が強い。表面的に正当な規範意識が強い。人
の心理や感情や物事への貢献度の違いなどを考えない。胃の病気でも肺の病気でも心
臓の病気でも何でも風邪薬を飲むようなものである。
 ロバは相手を見ていないから、このライオンのような欲張りな性格の上司に会った
ら、嫌われる。要するに要領が悪い。
 たとえば有給休暇を例にとってみる。ある人は1週間とって、自分は3日しかとれ
ないとする。そうすると「あいつは1週間もとって、俺は3日しかとれない。何でこ
んなに不公平なんだろう」と不満になる。
 その人は3日以上とってしまったならば、自分の立場がないことを本能的に知って
いる。だから、3日しかとれない。
 1週間とった人というのは1週間とれる状況を自分で作っている。つまり狐である
。状況の判断というのは、上役とか、職場の雰囲気をしっかりとつかんでいれば、1
週間有給休暇を取ることを周りが許す。狐は体験を生かして知恵を得ている。
 つまり、ロバは相手を見ない馬鹿まじめ。だからよく「あの人、本当は悪気はない
んだけどね」と言われる人がいる。そう注釈がつかなければ、その人の評価ができな
い。「うん、まあー、根はいいんだろうけど」と周囲から言われるタイプである。だ
から、知識はあるかもしれないが生きる知恵がない。その場の状況の判断ができない
人である。
 ロバも、もし職場にライオンがいなくて、ロバと狐だけなら平等に分けてもいい。
しかしライオンがいたら、それをできない。
 戦後日本の「平等、平等」という教育と同じである。仮に一番貢献しているのはお
そらくライオンであろう。そのような状況を見ないで、ロバは何でも平等がよいと思
ったのである。同じものを同じように扱うのはよいが、違ったものを同じように扱う
のは不公平である。
 最後にライオン。ライオンは自己中心的、自分が殿様、自分の思うようにいかない
と周囲を許せない。相手を信じることはできない。だからいつも相手が、自分をどの
ように扱うのか見ている。あくまでも自分が主である。
 実はこのライオンは力があるけれど気が弱いというか、気が小さい。ここが大切な
ところである。気が強ければ、ライオンは自分で自分の分け前を決める。ライオンは
ロバに「分けろ」という必要はない。気が大きければ、「俺をこれだけとる」と自分
が好きなだけとればいい。
 しかし、ライオンは気が弱いからそれができない。周囲が自分をそのように扱うこ
とを願う。つまり、自分を殿様として周囲が扱うことを要求する。「俺を殿様だから
そうしろ」といえない。周囲が殿様として扱わなければ殿様になれない。社長でいう
と鞄持ちがほしいタイプである。自分一人では会社を牛耳って動かしていけない。
 だいたいライオンは力があるのだから、何もロバと狐と一緒に仮に行く必要はない
。自分一人で行けばいい。つまり、ライオンは寂しいから仲間がほしい。
 職場では常にロバ、狐、ライオンがうようよしている。その中で自分がどのタイプ
で、相手がどのタイプかをしっかりと見極めておけば、このような悲惨な目に遭わな
い。
 ※ 引用文献……加藤諦三著「どう生きるかイソップ物語が教える人間の生き方」

§ 編集後記


 今年もあとわずかとなりました。 
皆さんこの1年はどうでしたか。元守る会の会長で、育ての親の片岡忠さんを失った
ことは、大変につらいことでした。改めてご冥福をお祈りしたいと思います。
 よくいわれることですが、月日のたつのはほんとに早いものですね。2008年の
12月に「みちしるべ200号記念誌」を発行しましたが、あれからはや9年、まも
なく250号になろうとしています。その間一度も欠けることなく予定通り発行する
ことができました。これも皆様のご支援、ご協力のおかげです。厚くお礼申し上げま
す。
 長年編集長をやらせてもらっておりますが、私も寄る年波には勝てません。このと
ころちょっとばて気味といった感じです。次期役員改選では、是非だれかにこのバト
ンを引き継いでもらいたいと思っております。
 次回は2月か3月ごろ、発行の予定です。来年もどうかよろしくお願い致します。



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