「みちしるべ」2008年3月号より

65歳でどっちを選ぶ?後期か国保か!
藤原 義朗
 1月20日の山岡高知県社会保障協議会事務局長の後期高齢者医療制度の講演では、制度の全体像が良く分かったと思います。本日3月3日、65歳以上の障害のある人に「後期医療、国民健康保険どっちを選びますか」という通知が、しかも墨字で送られてきました。患者さんからは「どういう意味か、さっぱり分からん。どうしたらいいか教えて」と、質問が殺到して来ました。急遽、後期高齢を選ぶか、一般医療を選ぶかを解説してみようと思いますのでご辛抱願います。
●後期高齢者医療の対象者
・75歳以上の人
・おさらい@で示す障害のある人
おさらい@…老人医療先取りの人が後期高齢でも対象になる。65歳以上で74歳までの方で、身体障害者手帳1級から3級、4級下肢障害もしくは音声言語障害の方。しかし、視野障害で2級または3級を取得しておられる方は除外です。これらの方は今までも老人医療の先取りという形で65歳から老人医療制度に加入されています。この方々に役所からあのサッパリ分からん手紙が送られてきたのです。これから、選択のポイントの5つを解説していきます。

〔ポイント1〕まず福祉医療かどうか
 高知県の重度障害者福祉医療助成制度受給の方、又は、「私は絶対に病気になっても医療機関にはかからない。」という方がおいでましたら金額的には保険料の安い方を選ぶ方が得です。
おさらいA…高知県重度障害者福祉医療助成制度は、身障手帳1・2級および療育手帳A1・A2、身障手帳3・4級で療育手帳B1の方、65歳を超えての発症の方は住民税非課税世帯。
 しかし、3月3日の通知で明らかになったことは65歳から69歳までの方で国民健康保険を選ばれた方は福祉医療が効かない旨の記載があったことです。つまり、福祉医療の負担分は1割、国保負担は3割ですから、差額の2割分は国保の人は負担して下さいということです。11月の後期高齢者広域連合議会でも、12月の県議会でも障害者福祉医療を守る請願書を採択されたにもかかわらず2割の負担です。請願人の代表でもある正岡先生の「絶対にひっくり返す」という声が電話から聴こえてきました。対象の方はもうちょっと待って下さいね。

〔ポイント2〕保険料で選ぶ
 今、納めている保険料と後期高齢者医療の保険料とを比べて安い方を選ぶのが、選択肢の一つです。後期高齢者医療の保険料計算は応能負担である所得割と応益である均等割の二つの計算式で決まります。障害のある人で年金が主な収入の人を比べても、障害年金のように非課税所得の人は保険料が安くなりますが、正岡先生のように厚生年金の方は保険料が高くなります。
 後期高齢の保険料は高知県全体の制度ですので、現在の所得と家族収入を教えていただければ藤原の方で計算ができます。
 なお、国保料は市町村によって計算方法は違います。国保の方で国保から抜けた場合、家族でどれだけ安くなるかは、役場で計算してもらって下さい。
 なお、国保料の計算は、所得割、固定資産割、平等割、均等割という4つの計算式で行いますが、高知市と四万十市は、資産割計算がありませんので、その地域の方は資産のある方は比較的安い保険料になっています。
 なお、私が相談を受けた人で試算してみましたが、元サラリーマンなど一定所得のあった方は、後期の方が安くなります。2人世帯で2人の所得差のある人が保険料が高くなる傾向にあります。
 しかし、油断は許されません。2年ごとに保険料の見直しがされます。高齢者人口が増える傾向にありますので、確実に後期保険料は上がります。介護保険料もその理屈で6年間の2回の見直しでは、比較的引き上げ率の低い高知市でも3190円から4631円へと上がってきました。
 なお、高知市では後期の方が高くなる人が2〜300人、国保へ移行の意志を示さないと自動的に後期へ移り保険料が高くなってしまうことから、その高くなった差額分を後で返却する条例を3月市議会にかける予定です。

〔ポイント3〕医療機関によくかかっておられる方は、負担割合と高額療養費が目安。
@負担割合
 後期高齢者医療の対象である75歳以上の方とおさらい@の方は、かかった医療費の1割が自己負担分です。
国民健康保険や被用者保険の方
・70歳までの方は、3割負担
・70歳から74歳までの方…現役並み所得のある人は、3割負担。現役並み負担というのは、夫婦世帯で年約620万円以上の方です。それ以下の人は、1割負担。08年4月から2割負担になる予定でしたが、1年間国の補填措置がとられ、09年4月から2割負担になります。
・75歳以上…現役並み所得のある人は、3割負担。それ以下の人は、1割負担。

A高額医療費
 医療費負担の多い人は、高額療養費の上限額が、選択の目安になります。
おさらいB…一般保険のひと月当たりの医療費の上限額は、80100+医療費の1%。住民税非課税世帯が、35400円です。
 これが、後期高齢になると、外来で、
12000円、入院が44400円です。
更に、住民税非課税の方は、外来で
8000円、入院で2段階に分かれ、
24600円と15000円。
 15000円と24600円は、年間所得が80万円以上か以下かで決まります。

〔ポイント4〕40歳以上の人は健診の義務化、しかし。
 今年度まで、基本健診が40歳以上の人に行われてきました。市町村が主体となって任意の制度でした。それが、今年から義務健診になるわけです。高知市では7月から始まります。
【問題点】
その@ 国保の人は基本健診の時と同じく、任意の医療機関で健診できますが、65
歳以上の障害のある人で後期高齢を選んだ人は、この健診の義務付けから外れます。ただでさえ健診率の低い障害のある人を外すのでなく、健診に行きやすくすることが大切なのではないでしょうか。
そのA 政府管掌健康保険の人は健診センターに。いわゆる政管健保の人は、健診の場所が定められた高知県内でのいくつかのセンター(病院)に振り分けられます。今のところ、高知県内で10数箇所手が挙がっています。実際、障害のある人が普段行ったことのないセンターに行くことができるでしょうか。
そのB この特定健診でメタボリックシンドローム予備軍とされた人は、特定保健指
導という指導がなされます。その@で述べたように、特定健診から外された障害のある人に対して保健指導は健康増進法による指導になるため、ちゃんとした指導や障害に配慮した指導が行われるかは、はなはだ疑問です。


〔ポイント5〕医療給付の削減
 3年前、元小泉政権は、「医療費の適正化」という名の下に、つまり医療費の削減を目的にこの法案を強行可決したのです。現在
1300万人いる75歳以上の人が
2025年には2500万人になる、しかし、かける医療費は今も2025年も同じ10兆円。つまり、半分近い医療給付の削減になるわけです。
 紙面の都合で簡単にしか書けませんが、
・医療給付は、特に外来で診察や検査関係がまるめられます。1ヶ月の医療機関に支払われる報酬が限られるため検査などが制約されます。
・医療機関が絞られ、他の医療機関に行く場合は紹介状を持っていかねばなりません。受診の抑制につながります。
・退院の際、「私は延命治療はしません」と、念書をついた場合は病院に報酬が支払われる、というように、入院しにくい仕組みが強要されようとしています。
●以上の点を参考にして、65歳以上の人は、後期にするか一般保険にするか考えてみて下さい。一番問題なのは医療給付の削減です。3月末にはもっと明らかになってきます。守る会でもまた学習会を行ってみてはいかがでしょうか。



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