「みちしるべ」2008年5月号より

長寿医療制度と障害者 パートU
藤原 義朗
 長寿医療制度が始まり1ヶ月が経ちました。「名前だけ変えたっていかん。中身を変えんと」など、聞こえてきます。
 前回は「65歳でどっちを選ぶ」と題して書きましたが、「長寿医療制度と障害者・
パートU」として続けさせていただきます。

1.高知市の独自減免続くか?!
 「高知市は国保料が高い」と、いわれることがあります。しかし、高齢者、障害者、寡婦の人には独自減免制度がありました。私は、保険料が国保か長寿かどちらが得かシミュレーションしてきましたが、意外と高知市の障害のある人に長寿を選ぶと保険料が高くなる人が多いことに気付きました。
 具体的には、1年間の年金収入が153万円以下の高齢障害、寡婦の人で年間国保料
9750円の人が、長寿医療制度を選ぶと年間保険料14570円に上がるのです。
なぜなら、今まで高知市が全国に誇れる独自減免制度を行なっていたからです。それにしても、これはあまりにも高い値上げです。
(保険料の計算式は前号に示しましたので、そちらをご参照下さい。)
そこで、高知市は、「65歳から69歳までの障害のある人で、長寿医療制度を選択した際、保険料が上がる人2百数十人については、その値上がり分を補助させていただきます。」ということにしたのです。その代わり、高知市の思惑は、重度障害者福祉医療の人について、国保を選んだ際、70歳までは、3割分補助しなければならないので、いっそのこと長寿に移行させて、1割分の補助で済ませようというものです。
 3月に、「国保を選ぶか長寿を選ぶか、お申し出がなければ自動的に長寿になります」という通知が対象の方に送られてきたのです。届いた人の中には「どういうことなのかさっぱり分からん」と、私やケースワーカーの所に通知を持って来られました。
☆今後の闘いのポイントは、
・国保を選んだ人でも、重度障害者福祉医療制度の適応をさせること。
・今までの国保の独自減免を守ること。
・長寿を選んだ障害の人の保険料の減免制度を守ると共に、75歳以上の人の独自減免
を勝ち取ること。
そのためには被保険者を中心とした連帯行動が大切になってきます。

2.保険証も通知も障害の人に
分かるのか?
 まだ新しい保険証を病院に持って来られていないお年寄りがおられます。高知市からは3月末にピンク色の封筒でご自宅に郵送されたはずです。お年寄りの中には何のカードなのか分からない方もおいでます。それが視覚障害者にもそのまま保険証カードが送られてきたのです。
 皆さん、カードの見分けはつきますか?私は20枚くらいカードを持っていますが、覚えきれず、いつも人に見分けて貰っています。「みんなの為の郵便局をよくする会」で、正岡先生が、郵貯銀行のキャッシュカードには、「テ」という〒マークを浮き出しで付けてほしいと言っておられました。そのように長寿保険証の場合には、国土地理院の病院を示す十字マークなど触って分かるカードにして貰う必要があります。
 なお、この保険証は磁気カードではありません。墨字が隠れないなら点字を振ってもかまいません。
 それと共に必要なことは、7月中旬に納付書が送られてきます。年10回に分けて送られてきます。75歳以上の人は年金からの天引きですが、65歳から74歳までの障害の人は納付書通知です。これでしっかり納めなければ、1年後には短期保険証が送られてきて、保険証が取り上げられる危険性があります。
 今まで、高齢者や障害のある人は、人道的な理由で保険料を納めることができなくても、保険証の取り上げはありませんでした。しかし、この保険制度になると取り上げも可能になるのです。このように、納付書なども、視覚障害者にしっかりと分かるように点字通知や説明をして貰うことが必要です。

3.現時点でどっちが得か?
 これは、住んでいる地域の制度、年齢、保険、重度障害者福祉医療制度(マル福)を受けているか、医療ニーズなどがポイントになります。
金額のみでいうと、
@高知市以外の人でマル福の人は、保険料の安い方を選んだ方が得です。マル福以外の障害の人は、受ける医療サービスの量によって異なります。
A高知市の人でマル福の人は、国保か長寿かというと、保険料の補助がある分、長寿の方が得です。健康保険家族のように、被扶養者の人は保険料支払いのない分、健康保険の方が得な人が多くなります。
 ここで、気をつけないといけないことは、今回の医療制度改悪が、医療費の伸びを押さえつけることを最大の目的に作られた制度だということです。外来のマルメ医療、6千円業務は、それこそ、1ヶ月6千円分位のサービスしかしませんよ、という危険なものです。
 5年前、重度障害者福祉医療制度の県単事業の切り崩し問題の時に、大運動が起きました。障害があって、普通の人よりもっと医療機関にかかることが多いからです。しかも、いろんな科にかかることがあるのです。それを制限する恐れのあるのが6千円のマルメ医療です。
 現在、多くの県医師会や保険医協会、全日本民主医療機関連合会などが反対の狼煙をあげています。障害者だからこそ、この医療給付の制限に反対していこうではありませんか。


4.差別反対
 同じ人間なのに、75歳になったら受ける医療が減らされる。65歳の障害で長寿制度になったら減らされる。この典型が、高知市国保老人のあはき補助券打ち切りです。今まで国保制度として出していたのだから、別の保険の人は適応になりませんよ、という高知市側の理屈です。もう一つ、高知市の人で葬祭料が減らされたことです。5万円だったのが長寿で3万円に減らされたのです。ある高齢の方が「75歳の誕生日までに死んだ方が得なのね」と、悲しいジョークを言っておられました。このように、年齢による差別、障害による差別は大きな矛盾を生んでいるのです。
 現在13の道県で高知市のように国保から長寿への誘導策が行なわれています。4月下旬に行なわれた参議院厚生労働委員会でもこのことが採り上げられ、厚生労働省が緊急に調査活動に入っています。近く、何らかの制裁措置が行われます。
 県内では、高知県長寿医療広域連合の下に、長寿医療制度懇話会が作られる予定です。学識経験者や被保険者などで構成されます。障害者の立場で発言できる代表を送り込むと共に、そこに意見を集中しようではありませんか。
 10月には、今年度第1回目の広域連合議会が開催されます。そこにも意見を集中し、みんなで傍聴に行きましょう。

5.おわりに
 現在8の都道府県に保険料の独自減免が実現しました。この「みちしるべ」が発行される頃は、高知市のあはき補助券になんらかの動きが出ているかもしれません。
 元朝日訴訟対策委員会・長ひろし事務局長の「権利は闘ってこそのみ勝ち取られる」という言葉を思い出します。



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