「みちしるべ」2003年8月号より

支援費制度でどうする(4)
               藤原義朗

 支援費制度が始まって、4ヶ月経ちました
特にガイドヘルパーが問題になっています。今回は、サービス申請/受給された人にレポートしていただきたかったのですが、編集部に届いていないそうですので、私の体験談をご紹介し課題を明らかにしていきたいと思います。
 私は、一人で県外に行く際、現地ではガイドヘルパーのネットワーク事業やJBOSなどのガイドボランティアの人にお世話になりながら旅行しています。今年の夏休みは家族で広島、島根、鳥取と廻ってきました。広島で妻と娘が動物園へ行っている間、広島点字図書館とカープギャラリーに行ってきましたその時、支援費制度でガイドヘルパーを遠隔地利用しましたので報告いたします。

1.手続きの流れ
(ア)まず受給者証をもらう
 私の場合は、市役所の元気いきがい課で5月に申請手続きをしました。「家の風呂は据え置き式ですか」「入れ歯はありますか」など約20分の聞き取り。そして、どんなサービスを使いたいか聞かれます。そこで、ガイドヘルプを月5時間申請しました。この手続きは市役所に申し込むと家まで来てくれます
(イ)墨字の受給者証が届く
 申請をして約一ヶ月後、居宅受給者証(墨字)、支給決定/利用者負担額決定通知書(墨字)、扶養義務者分利用者負担額決定通知書(墨字)、居宅サービス利用の手引き(墨字)、受給者注意事項(点字)が送られてきました。
支給決定の内容は
 受給者証番号 ○○○
 期間 平成15年5月6日から16年5月31日まで
 内容 移動介護中心(身体介護を伴う)
 時間 5時間/月 
 負担額(30分) 本人 250円  扶養義務者 0円
 負担額上限月額 本人 4600円  扶養義務者 0円

 というものでした。この大事な部分は点字にも録音にも、役所からの説明もありませんでした。個人の支給決定内容が、利用者に分からないようではこの制度は使えません。この原稿を書いている7月末、元気いきがい課から分厚い点字文書が届きました。「居宅介護利用の手引き」でした。いくらさすっても、個人の支給決定は出てきません。
(ウ)まずヘルパーステーションを探す
 広島市役所障害福祉課へ電話をし、旅行訪問先の広島県立点字図書館とカープギャラリーの近くにあるガイドヘルプを行なうヘルパーステーションの連絡先を教えてもらう。
(エ)電話で予約
 電話で、それぞれのヘルパーステーションに電話し、何時どこで待ち合わせるか、何時間のヘルプかについて打ち合わせをする。受給者証の個人の事項と支給決定事項をファックスする。
(オ)ステーションと元気いきがい課から当日必要なものを確認。受給者証、印鑑を持っていく。
(カ)8月1日、広島バスセンターで乗り換え「千足」という変な名前のバス停でおりるとNへルパーステーションの介護福祉士のIさんが待っていた。点字図書館へ行き見学。カープアスリートマガジンの音訳版のお礼を言う。1時間のガイドヘルプで500円の支払い。契約書に判を押す。次に、広島駅行きのバスに乗り合同庁舎前で降りるとHへルパーステーションの責任者のOさんが待っていた。カープギャラリーを見学。球団営業企画部長さんから、マリリンモンローが広島へ来た時の裏話などを教えてもらう。その後、宿泊先まで行き、事業所と1年間契約をする。1時間半で750円の支払い。
(キ)お金の流れは
 N事業所でみると、1時間の身体介護を伴う移動介護の単価は、4020円の事業所収入であるが、広島は乙地(高知市は丙地で1.000倍)といって、1.018倍の加算があり4093円の収入になる。私の場合、30分当たり250円の負担であるから、500円の支払い差額の3593円を、事業所から高知市へ請求することになる。
(ク)教訓
@身体介護を伴う移動介護という決定は、ファックスを送り、事業所から言われて初めて知ったことである。絶対に知るしくみがないと困る。
A今回は遠隔地での待ち合わせがあり、時刻表を調べるのに苦労した。地元の観光案内所など上手に使うことが大事。
B携帯電話が鍵

2.課題
(その1)単価が高ければ手が上がる
 居宅介護の単価を表にしてみました。

居宅介護支援費
基本単価  (単位:円)

居宅介護計画に基づく提供時間 身体介護 家事援助 日常生活支援     移動介護
身体介護を伴う  身体介護を伴わない
1時間 4020 1530 ――――――― 4020     1530
1時間30分 5840 2220 2410 5840     2220
2時間         8030 3050 3310 8030     3050
(30分あたりの加算額) 2190      830    900 2190      830

 日常生活介護とは、頸髄損傷や筋萎縮性側索硬化症の人などへの見守り介護です。視覚障害や知的障害者のいわゆる身体介護を伴わない移動介護と家事援助が一番安いですね。これと同額だったのが介護保険での家事援助(1時間1530円)でした。、これでは採算が合わないということで、介護保険では今春から2080円に引き上げられた所です。この低い単価で事業所が成り立つのでしょうか。ワムネットというインターネットで検索すると、どのヘルパー事業所が、上の4つの介護の内どれを行なっているかが分かりますが、高知市以外の高知県下ほとんどの事業所が4つとも行なうと認可を受けています。ところが、実際は大半が行なっていません。やはり、安い仕事には目が向かないのでしょう。今後は、身体介護を伴わない介護の単価を引き上げる運動が必要になってきます。
 尚、高知市や土佐市では支給決定の際、視覚障害の場合にも身体介護を伴う介護として決定してくれています。このような対処は事業所を守る上でも大切なことです。高知市は厚生労働省から「そんな余計な事するな」というペナルティを心配しています。厚生労働省に向けても闘いが必要でしょう。
 私は、このシリーズ第一回で、「国は障害者制度を介護保険に組み入れる事を諦めました」と書きました。しかし、小泉さんは諦めませんでした。もし、組み入れられる事になった時は介護保険が応益負担なので、その時は低収入の人ほど負担が大きくなるでしょう

(その2)外出の社会資源から選ぶ
 移動の社会資源は地域によってさまざまです。用語の統一化もなされていません。ですから、その目的や料金によって使い分けてみてください。
@支援費制度によるガイドヘルパー
 これまでにも述べましたが、料金は応能負担ですので市町村民税非課税世帯の方なら無料で利用できます。
 都会では比較的多くの自治体にあるヘルパーステーションが行なっていますが、四国など田舎の県では、一県に数自治体にあるヘルパーステーションしか行なっていません。特に、県庁所在地以外では、行なっている所でも社会福祉協議会のヘルパーステーションに委ねられています。
Aガイドボランティアの利用
 いろいろなガイドサークルが生まれてきています。点訳サークルでガイドもやってみようという所、ボランティアビューロー、学生サークルなど様々です。目的地の社会福祉協議会やボランティア協議会などに相談するとコーディネートしてくれる場合があります。これをインターネットで結んだのが、ルーモも加盟しているJBOS(全国視覚障害者外出支援連絡会)です。現在34都道府県、37団体が加盟しています。負担金はサークルによって違いますが、ボラの人と利用者が待ち合わせまで、また、終わってから帰宅するまでの交通費の負担という所、千円に決めている所などあります。さらに、食事代など利用者が負担する所も多くあります。
 余談ですが、JBOSのホームページを見ていたら、コーディネート実績が載っていました。高知60才代男性の会合出席と、高知40才代男性野球観戦のお二人が、全国でも大変多いです。一体だれでしょうね。
 なお、地域によっては社会福祉協議会がボランティアの人を組織して「ガイドヘルパー」という名称で派遣している所もあります。
Bガイドヘルパーのネットワーク事業
 県身連や県社協が窓口となって連絡を取り合い、県外のガイドヘルパーを応益負担で利用するものです。1時間当たりの単価が800〜千円程度と高く、また、ネットしていない自治体が多く余り利用されていません。支援費でよほど利用単価の高い人なら利用価値はあるでしょう。
Cそのほか大学にある学生情報コーナーを利用して短期アルバイトとしてガイドをお願いする方法。広島球場に行ったら髪を真っ赤に染めた若者が「カープのためなら何でもお申しつけ下さい」と、電停まで送ってくれるなど民間パワーを借りる方法など、その目的や財布と相談しながらどんな資源が使えるか挑戦してみてください。

 尚、支援費制度導入後の危険な流れとして、社会福祉協議会がボランティアサークルなどの社会資源をあまり紹介しにくくなってきた所もあります。つまり、あまり紹介すると「ヘルパー事業所の営業妨害になるから」という事です。
 しかし、福祉の方向はボラなど民間のいろいろな人的資源なども利用して地域生活を営んでいこうというものです。
 堅い事を言わずに、「支援費ではこんな資源、インフォーマルではこんな資源があります」と紹介し、利用者がその中から選択していくというのが本筋ではないでしょうか。
(その3)役所と一緒に考えていきましょう
 ガイドヘルパーを行なっていなかったある自治体に対して、「どうしても介助を受けて病院に行かなければならない事例がある」と訴えた所、ある町のヘルパーステーションにガイドヘルプ事業を始めてもらえる事になりました。
 また、高知県は高知市以外で実際にガイドヘルパーの事業所が少ない事から、8月には講習会を行なうので各事業所から必ず1名以上は出るようにと県から指示も出されました。このように実態は利用者である私たちが見つけ訴えていくことが大事です。

3.終わりに
 以下は、知人からのメールを紹介します。

 これまでの日本の福祉は、措置という名目で、「与えられた福祉」でした。これからは、「自分で得る福祉」に変わってしまいました。従来の生活全体が、アクティブなものであったなら、さほど抵抗もなかったのでしょうが、政策自体からして、受身的な手法を押し付けてきていた中で、急に180度転換してしまったのが現在だと考えています。そして、何も情報がないために、得られるサービスが得られない状況だとしても、それは本人の責任になってしまうことになります。
 この中で一番心配な方々は、新米の障害者の方々です。中途で障害を持ち、閉じこもりがちとなった障害者の方が、果たして、自己に必要なサービスを選択するのでしょうか。求めようとするのでしょうか。障害者のケアマネジメント体制について、これからも推進していく必要がおおいにあると考えています

 というものです。皆さん、上手に使い、また、上手に使うための手立てをつくっていこうではありませんか!



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