「みちしるべ」2005年9月号より

視覚障害者にとっての自立支援法 パート2(9月20日付け現在)
               藤原義朗

 「利用するんだから払うのは当たり前」という小泉流の考えを前面に出さず、郵政ばかり言って自民党が勝ちました。みなさん、ショックから立ち直れましたか?
 さて、1年前グランドデザインが出されて以来「応益負担反対」のスローガンのもと闘い、一時は廃案まで追い込みました。また、今臨時国会で第2ラウンドのゴングが鳴ったところです。
 今回は、視覚障害の場合、応益になったらどのくらいの負担になるかを考えていきます。

1. 視覚障害は単価が安い
 「応益負担の問題を語る時、どんな人がいくらの負担になるのかを知ることが大切です。しかし、国会では審議中でもあり、まだホームヘルパーなどの介護サービス単価は発表されておりません。
 現在の介護保険での応益負担率は1割、予定される自立支援法での負担率も1割です。介護保険と、特に、支援費の単価を元に単価設定されることには間違いありませんから、まず現状の単価をおさらいしてみましょう。

  a ホームヘルパー
 分かりやすくするために、1時間未満
(30分から59分まで)の単価を示します。
 介護保険  身体介護 4020円
生活援助 2080円
 支援費  身体介護 4020円
家事援助 1530円
 また、2時間未満(60分から119分まで)の単価は
 介護保険  身体介護 6670円
生活援助 3740円
 支援費  身体介護 6670円
家事援助 3050円
 介護保険の場合、6年前の制度発足当初は、支援費と同じ単価でした。高齢者の場合、家事援助といっても身体的接触が多く、それが身体介護で保険請求になると高い財源支出になるため、ある程度の家事援助は生活援助という名でちょっと単価が高くなりました。
 次に、支援費制度における視覚障害の身体介護と家事援助との区分けは何でしょう。2年前の社会保障審議会障害者部会に提出された厚生労働省の資料を示します。
 [居宅支援事業における便宜の内容と生活ニーズとの対応表より視覚障害について抜粋]
 身体介護――化粧、通院で症状を医師に伝えるといった行為の補助、服薬の補助
 家事援助――調理補助、洗濯、補修、日常的な週2、3回程度の部屋の掃除、季節の変わり目などの家の掃除、整理整頓、日常的な食材料や日常雑貨などの購入、普段着や下着などの購入、代筆代読、郵便の投函、見守り助言など、電話ファックスパソコン、電話来訪者との応対、育児
 これを、他の身体障害や、知的、精神障害と比べると、視覚障害と聴覚障害のニーズは、ほとんどが家事援助項目になっています。つまり、単価が安いのです。
 これをヘルパー事業所の経営から見ると、単価の65%が労働者の賃金、30%が事務経費、5%が利潤その他という計算をします。ヘルパーさんの利用者宅への交通時間など考えると安い単価であり、最低賃金制にも引っかかりかねないものです。よく、守る会の会員さんから
「あまりよくないヘルパーが廻される」と聴きますが、質の良いヘルパーは、単価の高い介護保険や支援費身体介護に廻すからです。
 応益制度になると、この傾向はもっと顕著になるでしょう。よく、ヘルパー懇談会で「点字も知ってもらいたい」「視覚障害者への説明のし方や介助法を知ってもらいたい」「これ、今日食べるお寿司と揚げ物ですよと言って触らせてもらいたい」「掃除の後、ゴミ箱はベッドの横
15cmに置いておきましたよ、と言ってほしい」「同じ所にもどしてほしい」「読み書きのしっかりした人に来てもらいたい」というような意見が出ますが、障害特性のある利用者の所こそそれに応じられる有能なヘルパーさんを廻す仕組みにすべきです。介護保険も自立支援法も利用契約方式です。遠慮せず、何をしてほしいかはっきり述べていきましょう。そして、気付いてもらうようにしなければなりません。なお、この単価については、夜間、早朝に25%、深夜は50%増しの加算制度があります。また、賃金レベルの高い都市部にも加算する制度があります。

  b.デイサービス
 支援費居宅3事業のうち、視覚障害者がうまく利用できていないのが、デイサービスです。視覚障害専門で行なっている所は全国でもごく一部です。一般の障害者デイサービスや介護保険デイサービスで視覚障害者の参加をみても、積極的な参加でなく、「お客さん」です。もっと情報コミュニケーション訓練があったり、楽しいものをつくっていかなければなりません。まず、単価からおさらいしてみましょう。

 障害者デイサービスの単価は
@ デイサービス専門施設か別の施設機能と併設施設なのか
A 身体・知的・障害児
B 内容によってスポーツや外出、訓練的なものか、創作活動か
C 障害の重症度に3段階
D 時間によって3段階に分けられますので、単価の数字は数十種類並ぶことになります。
 それに、食事420円(食材料費を含まない)、送迎550円(片道)、入浴410円と加算がつきます。
 支援費制度によるデイサービス事業の内容は、機能訓練、社会適応訓練、介護方法指導、スポーツレクリエーション、創作的活動、入浴、給食です。
 その内、視覚障害者のニーズとして認められているのは、生活訓練、利用者のニーズや特性に合わせたスポーツレクの実施、利用者のニーズに合わせた趣味や余暇活動紹介と実施利用時間中の食事の提供です。

 それでは、全国でも数少ない視覚障害者の参加が主なデイサービスを見てみましょう。
○ 京都ライトハウス「らくらく」
 日常生活訓練を中心とした身体障害者デイサービスです。法的な区分と対象者を想定してみると併設型、全盲で他に障害のない場合は、重度区分第2段階、6時間以上の参加として、基本単価5720円+食事加算420円+送迎加算550×2=7240円
○ ITサポートセンター「あかね」
 船橋市にある施設で、デイサービスとして視覚障害者に対するパソコン指導やパソコンによる創作活動をしています。
 4時間以内の中途視覚障害者の人を対象とした場合、1350円という1人当たりの単価になります。
 このように視覚障害者デイサービスは、収入単価が安いのです。視覚障害者へのサービス内容の理解と単価の安さもあり、専門デイサービスはごく一部です。
 誰かが立ち上げていかなくてはなりません。視覚障害者のことをいちばんよく知っている私たちこそ、その担い手になろうではありませんか。また、点字図書館など視覚障害関連施設に行なわせるようにしていく施策が必要です。

2. 無料の人も最高24600円
 応能負担制度である現在の支援費制度は、収入の低い人は負担は少なくまたは無料、収入の多い人は負担が高いという制度でした。介護サービスを受けている人の9割の人が無料で介護サービスを受けることができました。介護の要らない人に肩の高さを近づけるステップですから無料が当たり前です。
 それでは、もう少し現行の制度を復習してみましょう。
 A 生活保護
 B 住民税非課税
 C 所得税非課税で住民税非課税世帯
 C1 住民税おおむね年4500円以下
 C2 住民税おおむね年4500円以上
 D 所得税課税(14段階)

階層   上限額    ヘル    デイ
A      0     0     0
B      0     0     0
C1  1100    50   100
C2  1600   100   200
D1(所得税額0円〜3万円)
    2200   150   300
D7(所得税額80万1円〜116万円)
   17100   600  1700
D13(所得税額503万1円〜627万円)
   47800  1900  4600
[凡例 「ヘル」は「ヘルパー」、「デイ」は
「デイサービス」の略。「上限額」の単位は円、
「ヘル」と「デイ」の単位は円/30分である。]

 このように支援費制度ではAとBは、利用料は0円、CとDは収入が高くなるにつれて利用料金も、月当たり上限額も増えていくシステムでした。それが自立支援法になると、応益負担または定率負担といわれる制度になるのです。これは、収入の低い人も高い人も、サービスを受ければ同じだけ負担していただきますよ、というものです。このような応益負担は世界どこの国の福祉制度を見てもありません。小泉さんが厚生大臣の時、介護保険で初めて導入した制度です。現在、介護保険の定率負担は1割負担、自民党の方針は将来2割負担。現在、審議中の自立支援法案でも1割が予定されています。先程のホームヘルパー、デイサービスの単価でその1割を計算してみて下さい。なお、この制度には収入により負担上限額が設定されています。

生活保護世帯  0円
低所得者1  世帯全員の収入が80万円
未満世帯 15000円
 低所得者2  住民税非課税で、収入が
80万円以上 246000円
 住民税課税世帯  40200円

 これを、支援費制度の上限区分と比べてみると、この低所得1と2は支援費のBランクになり、CとDはすべて上限額40200円になるということです。つまり、現在負担額のある人は上限が40200円になるということです。いかに自立支援法は利用制限を目的としている法案であるかを示しています。

3.ガイドセンターがダウン
 支援費制度における移動介護の単価は、身体介護を伴う移動介護は4020円、身体介護を伴わない移動介護は1530円です。ホームヘルパー単価と同様にしています。
 厚生労働省の指導は視覚障害者の場合、利用者側から手を差し出しているので、「それは身体介護にあてはまらない」ということで、これまた安い方の単価です。しかし、高知市の場合、視覚障害も身体介護を伴う移動介護で支給決定しています。つまり、事業所の経営を守ることになります。私は、県外6つのガイドヘルパー事業所と契約していますが、高知では「高い方の単価」といったら一変に機嫌がよくなります。これは応能制度の中、事業所も利用者の権利も守ろうとする高知市の姿勢が表れています。
 しかし、応益になったら1時間歩く毎(ごと)に400円以上払わなければなりません。
 今の自立支援法案では、ガイドヘルパーは地域生活支援事業の中に入り、どのような負担制度にするかは自治体でお決め下さいとなっています。私たちは、せめて応益にはならないように団結していかねばなりません。

  4.おわりに
 6月に発表された政府税制調査会の「個人所得課税に関する論点整理」を見ると、金持ち減税には手をつけず、サラリーマン大増税庶民大増税計画という内容でした。仮に行われたとしたら、支援費制度を維持したとしても、BからCへ、CからD、Dのなかでもランクが上がる人もあり、負担額の高さゆえ利用できない人も出てきます。自立支援法案でも低所得2から一般へ上限額が上がる人も出てきます。私たちは税制問題ともかみ合わせながら運動していかねばなりません。
 さあ、第2ラウンドは参議院から始まります。私たちの叫びをファクスでメールで点字で国会へ届けようではありませんか。



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