「みちしるべ」2006年2月号より

視覚障害者と自立支援法  パート4
藤原 義朗
国会では、来年度の予算が審議されています。今の所、障害福祉予算は8.1パーセント増。しかし、障害の範囲を広げたということでの伸びで、そう威張れるものではありません。その実行に向けて、社会保障審議会障害者部会や全国障害福祉都道府県主管課長会議が毎月行われるとともに、課題別説明会も行われ、県も高知市も出張が相次いでいます。
 先日、正岡先生から12月に行われた都道府県課長会議の資料を頼まれ、印刷したところ1.5kgありました。プランを立て資料を作る方も大変ですね。過労死しないよう願いたいものです。

1.世帯分離しますか?
 利用上限額が一般37200円、低所得2が24600円、低所得1が15000円、生活保護世帯0円については、以前述べましたが、いわゆる世帯分離をして、利用上限額を下げてみようとする方も出てきています。特に、入所世帯の方です。
 さて、在宅の人の場合はどうでしょう。4月からの介護給付における単価は本日(2月8日)現在まだ発表されておりません。とりあえず旧単価で計算すると、障害基礎年金1級のみの収入の人が世帯分離した場合、負担上限額が24600円ですので、それをヘルパー単価で割ると、月約140時間以上の利用の人が分離した方が安くなる、という計算が成り立ちます。世帯分離した場合のリスクは、健康保険料や介護保険料の家族の減免や自動車税など本人名義にしている税の減免などが受けられなくなるという事です。どちらが有利かよく計算してみてください。よほどホームヘルパー利用の支給決定がなされ、利用しなければならない人でない限り視覚障害者の場合は世帯分離しない方がよいです。施設入所の時、お考え下さい。

2.350万円以上は出資金に
 前回入所とグループホーム・ケアホームの場合は、預貯金が350万円以下の場合
は減免と書きました。県外の地域によっては、役所で調べるよという所もありますが、高知市では通帳を持参してもらい確認を受けるという形になっています。

 預貯金に含まれないものとしては、某IT企業のように元本(がんぽん)割れするので、株などは含まれません。また、長期信託については預け期間中については含まれませんが、支払い年に預貯金認定される可能性があります。生活協同組合の出資金などは預貯金
認定されません。

3.サインガイドのご用意を
 さて、支援費制度利用の方の所へは、先日、「新年度から自立支援法に変わりますが、引き続き制度を利用されますか」「税金額を調べさせていただいて構いませんか」という同意書書式が届いたと思います。それに伴い、4月から9月にかけて介護保険の介護度のような障害程度区分といわれる調査が行われます。つまり、9月まではヘルパーの支給時間は現行制度どおりで、利用料金は新しい介護給付の利用単価、いわゆる1割の料金になるわけです。 さて、役場から障害程度区分の調査について連絡があります。次に、調査に応じるかどうかの同意書が来ますので、また、署名と印を押すことになります。この後も新しくシステムが変わるたびに事業所とも契約をやり直さなければなりません。署名する際に、枠に沿って書くことの出来る「サインガイド」をご用意されれば便利です。
日本点字図書館用具事業部で1枚200円で販売しています。

4.障害程度の調査は60分1本勝負
 障害程度の6段階の区分を決める為、医師の診断と調査員による訪問調査が行われます。それがサービスの支給決定の一資料になります。介護保険の認定審査会を見ても医師や調査員に細かく書いてもらってる場合や、逆に空欄の目立つものなど実にさまざまです。書かれていないと障害程度区分は上がりません。困っている事を良く話し、しっかり書きとめてもらって下さい。

@医師意見書
 これは、シリーズパート1で書きましたので、詳しくは述べませんが、障害となる診断名とともに拘縮や筋力、褥瘡(じょくそう)や失禁など身体・精神状態、医学的処置の必要性、サービスに対しての意見や感染症の注意など医学的所見を詳しく書いてもらわなくてはなりません。普段、風邪などでかかっているお医者さんには、かなり難しいものがあります。家庭医の先生の場合でなければ、眼科の先生に書いてもらう方が良いでしょう。もし、そのような先生がいなければ、役所の方で斡旋してもらわなくてはなりません。しかし、視覚障害の実情に即して有利に書いてもらえる医師を、私達が作り紹介する事が必要でしょう。なお、意見書料の本人負担はありません。診察受付時に、意見書の目的で来院した事をきちんと話すとともに、あなたの障害を示す手帳や資料を持参すると先生も書きやすいです。そして、どんなサービスが欲しいのかお話し下さい。

A訪問調査
・概況調査
 これは生活や家庭環境の調査です。ヘルパーの支給量の決定は障害程度区分だけでなく障害者の場合は、環境を勘案して決定されます。例えば、子どもが進学で手続きなどが多い、親の面倒を見なければならない、引っ越してきたばかりで付近がさっぱりわからない、持病があり医療機関に頻回に通わなければならない、家族は体が弱くなかなか読んでもらえないなど、具体的に書いてもらって下さい。また、現在受けているサービスは、「たびびと」グループのリーディングなど民間の物も含め忘れず行なって下さい。そして、受けたいサービスをもれなく書いてもらうことが肝心です。
・基本調査と特記事項
 106項目にも及ぶ聞き取り調査が行われます。厚生労働省は概況調査と併せて60分で出来ると言っています。
 内容は、見え方や寝返り、徘徊などの身体状態移動機能、精神状態、手段的日常生活動作といわれる具体的な生活能力などを見ます。
 視覚障害者の場合、見え方確認表以外は、主に生活能力の所がポイントゲットになります。なお、調査の時に出来る、出来ないだけでなくその時の条件なども具体的に述べて下さい。それが「特記事項」に書き込まれ最終的に障害程度区分が決定されます。
・見え方確認表 
 1枚のカードに何の絵が書いてあるか尋ねられます。もし、暗い所が苦手な方は「今は分かりますが、暗い所では見えません」と応えてください。また、文字の読み書きについてもたずねられます。「指で指図してもらえないとわからない」、もし拡大読書器を使用した場合は、「二階や銀行など外出へは持って行きにくい。」と、いうように具体的に話してください。場合によっては、週何回というように頻度をいう事も必要です。以下、アンサー事例を紹介します。
・お金の管理 「2千円札が出て、見分けがつきにくくなった」「通帳の記載が分からない」
・買い物 「コンビニなど陳列がさっぱりわからない」「何が安いか分からない」
・外出 「ハイブリッドカー(音が静か)が出て、怖い」
・交通機関 「行き先表示が見えない。車外放送をあまり流さない」「料金表見えない」
・薬の服用 「一日に何回飲むのか薬袋が分からない」
・掃除、洗濯 
 「シミが見えない、汚れ落ちが分からない」「洗濯物の取り入れ残しをする」
・電話 「プッシュは押せるが、メモや電話帳を見ながらかけられない」
・コミュニケーション 「点字の触読が遅い」「パソコンは苦手」
・調理、配膳 「やかんから急須、コップなどに注ぐ時どこまで入ったか分からない」
「皮むき残しをする」「冷凍食品を確認しにくい(ピラフとひき肉間違えチンした)」
「缶詰わからない」「チャーハンを盛り付ける時にこぼす。配分難しい」「レンジから沸騰したものを置く時、目で確認できず、やけど」「透明コップをよく倒す」
・違飲、違食 「歯磨がき粉とまちがえてヘアクリームをつけた」
・その他 ゴミだしの分別収集には、持って行きにくいなど、困っていることをお話し下さい。


5.3年有効
 この障害程度区分認定の有効期間は3ヶ月から最高3年までです。普通視覚障害の場合は3年間有効です。その間に見えにくくなった。他にも障害が出てきたという場合には再申請して下さい。
 次に、もし、介護等給付によるホームヘルパーが支給決定されなかったとしても、今度は市町村事業で受けられる仕組みがありますのでご安心ください。

6.おわりに
 介護保険や支援費制度でも、その評価や支援のあり方は肢体障害中心のものでした。今回、一定精神障害に関する評価は入ってきましたが、視覚と聴覚に関するものはまだまだ不十分です。読者の皆さん、最後の生活能力評価のアンサー事例のアドバイスを藤原(電話088−840−0834)まで集中していただければ幸いです。肉付けしていきたいと思います。よろしくお願いします。



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