「みちしるべ」2006年3月号より

視覚障害者にとっての自立支援法 パート5
藤原 義朗
 新制度のスタートまであとわずかとなりました。それぞれの団体で学習会が持たれています。組織によっていろいろな「味」が出ています。例えば、施設入所関係では世帯分離について、知的障害の組織では減免のための資産調整などが重点というようにです。
 さて、心配なのは視覚障害者のことです。この制度は、支援費制度と同じく申請しなければサービスは受けられません。しかし、知らなければ申請はできません。お知らせしたいことはたくさんありますが、「みちしるべ」の紙面では限りがあります。
 皆さんの市町村で、障害種別団体で説明会を行なわせ、利用しやすいものにしていこうではありませんか。また、厚生労働省では、自立支援法に対するパブリックコメントを募集していますので、利用者として視覚障害特性を「お上に直訴」していこうではありませんか。

1.1時間150円負担。
 3月1日に、申請殿介護給付単価(案)が発表されました。支援費制度の時と比べると若干点数が下がっています。
   30分未   1時間未 1時間半未
身体 2300   4000  5800
家事  800   1500  2250
です。(「未」は「未満」の略、「身体」は「身体介護」の略、「家事」は「家事援助」の略)
 
 以前にも書きましたように、視覚障害のヘルプで、身体介護になるのは、化粧、診察の時の説明、薬の説明の介助だけですので、ほとんどの場合「家事援助」です。単価の1割負担ですから、1時間の利用だと150円の負担ということになります。気になるのは、10月以降はヘルプ時間が1回当たり1時間半までを基本とするということです。つまり、国は長時間の介護を嫌がっているわけです。もし、長時間必要な場合には、例えば「盲導犬の毛が落ちて、掃除に時間がかかる」というように理由づけが必要になってきます。

2.低い国庫負担基準それで大丈夫?
 障害程度区分による国庫の負担基準が発表されました。これは、区分○○の人は○円までのサービスを使えますという基準です。介護保険の時もありましたね。介護保険と違うのは、サービス内容によってそれぞれ定められているということです。
 それによると、ホームヘルプの場合、区分1が2.2万円 区分2が2.9万円、区分3が4.3万円、区分4が8.1万円、区分5が12.9万円、区分6が18.6万円 です。
 視覚障害の場合は、区分1もしくは全盲の人で、うまくいって区分2程度だと思います。単純に、家事援助単価で割ると、区分1の人でひと月ヘルパーの利用時間は14時間まで、区分2の人でもひと月19時間までということになります。
 ある全盲の人は、「月50時間は要る」と言っておられました。また、子育て中の人からも、「ハイハイが始まった」「入学した」「ヘルパーの時間増やして」と、聞こえてきます。つまり、この基準額では足りない人が出てくるわけです。
 今まで、支援費でも「区分間流用」というのがありました。例えば、区分1のある人が、14時間の内、ヘルパー5時間でいい、基準額との差し引き9時間を、基準額超えて必要な人に流用してもかまいません、というしくみです。
 しかし、次のような問題があります。
@ 低い基準額では、他の人に廻せるほどの余りは出にくいこと。
A 小さい自治体では障害者人数が少なく、もしニーズの高い人がいる場合、回しきれないことです。
 もともと、この国庫負担基準額の低いことが問題です。環境によって、ニーズに応じてサービス支給決定がされる仕組みが必要です。

3.眼科へ行きましょう
 高知市では、4月以降の介護給付利用上限額が点字墨字併記で通知がありました。人によっては、「えっ、37200円払わないといけないの」と、誤解されている方もおられますが、先にも述べましたように、視覚障害者のヘルパー利用の場合、利用の多い人で、月2千から3千円程度までです。
 4月からは、障害程度区分認定が始まります。役所から、訪問調査の日のアポイントと、かかりつけ医を聞かれます。

【訪問調査で気をつけること】
・前号でも書きましたように、なるべく具体的な失敗エピソードを話す。
・判定に使われる情報開示は法的に可能ですので、特記事項に何と書かれたか問うことはかまいません。特に、視覚障害について、未理解な調査員の時にはやってみてください。
・「子どもの入学で資料記入が大変、名付けに時間がかかる」など、生活背景の変化でヘルパー支給時間が多く要ることを話してください。これを言わないと、国庫負担基準額以上の支給決定はなされません。

【医師意見書で気をつけたいこと】
 昨年のモデル調査で、認定審査会の場で医師の意見書により区分変更のあった割合は身体障害15.6%でした。この内、聴覚障害、視覚障害についてはほとんどの場合、変更ありませんでした。 知的障害20.6% 精神障害
53.7%というものでした。なぜ私達は上がらなかったのでしょう。まず、この意見書書式には障害の原因となった診断を書く以外は、ほとんど視覚障害を書く欄がないからです。例えば、網膜色素変性症の場合、一次調査ではほとんど百点満点です。色変を知っている先生でないと「夜盲があり暗い所では不便」「視野が狭くゴミ箱を蹴飛ばす。人に当たる」など、書けないからです。よほど視覚障害を理解された先生の意見書でないと、二次判定で障害程度区分を上げる事が出来ないわけです。
 もう一つは、視覚障害者は普段、専門医にかかっていないからです。役所は普段、風邪などでかかっている医師に意見書書式を廻そうとしますが、やはり、眼科へ行って視覚障害の事を書いていただきましょう。

5.新受給者証が届いたら
 今まで、ホームヘルパー利用されていた方の所へは、新制度による受給者証が届きます。高知市にお住まいの方の所へはもう届いたところでしょう。そこには、今までの支援費と同じく身体介護か家事援助かの内容と支給時間が書いてありますので、まずご確認ください。
 もし、今までより少なくなって不自由をきたしそうな場合には、不服を申し立ててください。その時、「従前額保障」という言葉をお使いください。これは、国が「今までよりサービスを落とさない」という言い方をしてきました。ですから、既得権として守ることになります。

6.ガイドヘルパーはいくら?
 ガイドヘルパー制度は、10月から地域生活支援事業に移行します。4月から9月までは、ホームヘルパーと同じく応益負担になります。
 高知市では今まで、視覚障害者の場合、身体介護を伴う移動介護という形で支給してきました。そのため単価は、1時間未満4000円です。つまり、利用者負担額は、その1割の
400円になるわけです。高知市以外は、たいてい身体介護を伴わない移動支援の形で支給していましたので、1時間あたりの利用者負担額は150円になります。
 10月以降は各市町村で負担のあり方が検討されますので、皆さんのご意見をどしどし市町村にお伝えください。

7.白杖にも医師の意見書
 国の事業である自立支援給付は、4月からスタートと書いてきましたが、その内、補装具が自立支援法でスタートするのは10月からです。ですから、3月中に慌てて申請する必要はありません。
 なぜ、10月になったのかというと、品目の中で補装具から日常生活用具に移行するものがあるからです。視覚障害関係では点字器です。また、色メガネは制度から廃止になりました。その他、移ったものは、頭部保護帽やT字杖、松葉杖、収尿器やストーマ用装具などです。心配なのは、補装具制度のうち、医師の意見書の要らない品目のうち、白杖を除いては、みな日常生活用具に移ったということです。新法における補装具の定義として、指定医療機関の判定書もしくは意見書が要るというのがあります。義足や遮光メガネを申請する際には医師の診断が居ることは理解できますが、白杖に診断書が要るのでしょうか? 道路交通法で「持て」と言われているのですから給付されるのが当然です。
 次に、地域生活支援事業に移った日常生活用具ですが、今までも地域によってあまりにも差がありすぎることが指摘されていました。市町村事業になることで抜けが出ないよう今までにもまして目を光らせていくことが必要でしょう。特に、点字本の価格差保障制度がしっかり行なわれるかご確認ください。

8.おわりに
 3月中旬、仕事で介護保険事業者説明会に行ってきました。4時間の詰め込み教育でした。「自立できるようマネジメントを立て、介護サービスから卒業しましょう」だの「ターミナルケア加算で、在宅で死ぬと給付があります」だの、介護や医療を切り捨てようとする内容でした。
 介護保険を追っていく、兄弟ランナーの「弟」自立支援法。支援費からタスキを受けて加速していますが、兄に追いついてもらったら大変困ることになりますね。



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