視覚障害者にとっての自立支援法 パート6
藤原 義朗
5月に入り、新制度によるサービス利用の請求書が届いた方もおられます。「ありゃ、こんなはずじゃなかった」と驚かれた方もおいでるでしょう。特に施設入所の人ほど、この影響は強く出ています。
今回は、入所リハビリの問題と医師意見書作成に向けての情報提供書(案)を作成いたしましたのでご覧いただきたいと思います。
A 岐路に立つ視覚障害リハビリ
1.5年以内はリハビリOK
今、青年学生部の吉岡君が、日本ライトハウスに生活訓練で入所しておられます。日本ライトハウスの生活訓練や、所沢や神戸のあはき訓練課程のように、入所して生活や就労移行支援を受ける場合は、自立支援法では日中は訓練等給付、夜間は介護等給付にあたります。
その場合は、障害程度区分の認定が判定材料になります。この訓練は、「地域の社会資源の状況により通所が困難な場合」は、入所可能と規定されています。この法の経過措置期間は5年ですので、その間は、県外の施設へ入所することが可能です。
尚、日本ライトハウスでの生活訓練の内容は、体験された方に書いていただく方がよいので、吉岡君、レポートよろしく願います。
2.5年間、もつのでしょうか
私が心配しているのは、「障害程度区分によって施設への支援費額が決まる」「低い区分だと収入が下がる」という仕組みです。今回の障害程度区分では、視覚障害者は否該当になるケースもあり得る、また、区分が取れてもきわめて低い区分にしかならないことは前回も述べましたが、それが直接施設収入にこたえてくるのです。
経過措置中の91名以上の更生施設への3段階の支援額は、重度570単位、中度が395単位、軽度が296単位です。それに、視覚障害加算の13単位をはじめ、いくつかの加算が付くしくみになっています。尚、高知県ではその単位に10円をかけたのが支援費額に相当するしくみになっています。
それが新体系に移行すると、日中の81名定員以上の機能訓練サービス費が、障害程度区分にかかわらず547単位。夜間サービスの単価は、施設の規模や当直職員人数、重度障害程度区分割合によって、88単位から400単位まで差が出てきます。400単位というのは40名以下の施設で、障害程度区分6が60パーセント以上という施設です。視覚障害専門施設ではあり得ないことです。
また、この計算方式は今まで「月額計算方式」であったのが、「日割り計算方式」に変わっています。ですから、日・祝日や外泊時の休みを考えると収入単価はグンと低いものになるわけです。
このように、数字を見ても視覚障害専門施設では運営が厳しいことがうかがえます。
「シリーズ3」で、京都ライトハウスのデイサービスの単価を紹介しましたが、ここでも視覚障害専門はやめて、肢体障害の方を多く迎え入れているのです。
視覚障害リハビリで輝かしい実績を築いてきた日本ライトハウスも、このような岐路に立たされているのです。
B 医師意見書に情報を
1.特記事項に書いてもらいましょう
私は、4月の新制度による障害程度区分判定を受けました。
まず、聞き取り調査の調査員はPTの後輩だったので、ちょっとやりにくかったのですが、聞き取りが行われました。「買い物はできますか?掃除はできますか?」など、聴かれました。「シリーズ4」で述べましたように、視覚障害者側が「行けるけど何が安いか分からない」「汚れ落ちが分からない」などと、言わないと特記事項に書かれません。
その後、「かかりつけ医はどこですか?」と聴かれました。前回も述べましたように、一般の医師では視覚障害の障害を把握した医師意見書は期待できません。眼科医をお勧めします。
次に、井上奈美子さんと一緒に、医師への情報提供書案を作成いたしましたので、ご紹介します。
2.エピソードでつづる情報提供書
《情報提供書》
日頃は、障害者の自立と社会参加のため、ご尽力いただきまして、誠に有難うございます。
今回、自立支援給付申請の 様について、以下のように、日頃の障害状況について情報提供させていただきますので、医師意見書作成および自立生活や社会参加へのアドバイスとしてご利用いただければ幸いです。 また、相談員におきましても、相談援助の際、必要に応じて先生に、ご教示を仰ぐことがあるかもしれませんが、その節はよろしくお願いいたします。
患者氏名 男・女 生年月日
@見え方の状態
例えば夜盲、しゅう明、眼振など。天候や身体状態によっての差、眼圧や義眼の合い具合など。
A読み書きの状況
例)墨字視力は無いが、点字の触読が遅い。音声パソコン苦手、ワープロ書けても漢字変換が間違いだらけ。など
拡大読書器で10倍の拡大でやっと見えるが遅い。また、外出には持って行けない。など
(藤原義朗という漢字は、52画もありサインしにくい。)
B外出歩行状況
例)あとの環境状況にもよりますが、視覚障害の場合外出は、環境因子抜きでは語れませんので、環境も含め書き込みます。 バス移動が多いが、路線数が多く、車外放送を流さない。近くは、どぶ川が多く危険。音響信号機はあるが、ピックス方式なので聞き取れず使用できないなど、因子を含めてなるべく具体的なエピソードを添えて書いて下さい。
C生活状況
例)買い物、掃除、特に料理など、失敗例の具体的な話を書き込みます。
利用している補装具や日常生活用具、生活便利用具
Dその他、利用しているサービス
E自立や社会参加についての環境要素
・PTAや町内会の役が廻ってきても援助が得られにくい。ゴミ出しの分別や係りが廻ってきた時やりにくい。 ・子どもが入学して書き物や名前付けが急に多くなった。 ・ベビーカーが押しにくくオンブした方が歩きやすいが、妊娠しているのでオンブしにくい。など
平成 年 月 日
高知市身体障害者相談員
藤原義朗 印
3.おわりに
ある地域の医師会には厚生労働省の役人から、「先生方お忙しいでしょうから、診察時でない時に、意見書を書き上げていただいてかまいませんよ」と、言われたそうです。皆さん、普段診察された先生がここまで、視覚障害者の生活を把握されているでしょうか。どうぞ、井上奈美子さんと藤原までご連絡ください。
守る会 トップ
↑http://mamoru-k.net/